こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)

岳飛伝

3.0 3.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 1,680 円
いいね!

    「岳飛伝」 の読書レビュー (最新順)

    最新のレビュー順 | 人気のレビュー順
    すべてのレビューとコメントを開く
    • 評価: 3.0

      独立軍閥を貫きたい岳飛と、彼を南宋の軍の柱にしたい秦檜。
      対立が決定的になり、監禁された岳飛の処断が近づく中、梁山泊が救出に向けて動き出していた。

      前半のクライマックスとコピーにあるように、岳飛伝の分岐点になりそうな巻です。
      しばらくは平原での金軍VS岳家軍という大会戦の様子を軸に、周囲を梁山泊第三世代たちが彩る…という構成が続いていましたが、ここにきて、ようやく長かった戦が講和に持ち込まれました。
      すべて南宋の宰相・秦檜の掌の上。
      金としてもギリギリのところで“敗けなかった”戦として、矛を収めることができました。
      こうなってくると、国家間の政事に興味を示さず、ただただ戦い抜いていた岳飛の存在が、俄然、南宋内部でクローズアップされます。
      呉用の遺言は、戦後の岳飛の危難までを予測したものであったのか。

      六巻の出来事は以下のとおり。※以下、ネタバレです!要注!

      ● 子午山に隠遁している燕青のもとへも、呉用の訃報は届きました。
      最後の言葉を伝えたのは、致死軍司令・侯真です。
      「岳飛を救え」最後の呉用の遺言を、燕青は感覚で受け止めます。
      どこへゆくのかはわからない、ただ、呉用の言葉は「替天行道」の志に必ず通じるものである…強い信念を胸に、燕青は子午山を下ります。
      傍らには侯真と、もうひとりの致死軍司令・羅辰の姿もあります。

      ● 南宋との講和が本格的になる頃、金国軍総帥・兀朮の姿は、遥か北の大地、女真の地にありました。
      ここでひとり金を脅かす蒙古と対峙してきた将軍・耶律越里。
      彼は、元・楊令の率いる黒騎兵隊を指揮していた歴戦の猛将です。
      その猛将も、齢五十を数え、退役を申し出ていたのでした。
      「許さん」
      言下に、耶律越里の引退を認めぬ兀朮。
      もとより、耶律越里には引退の意思などそう強くはありませんでした。
      自分を置いて、金の北の国境を守れる者がいるか、という自負。
      また、他の者に任せられないという、人材難の現実。
      兀朮は、耶律越里の苦悩を十分に察し、自らしばらくの滞陣を告げます。 
      兀朮にしても、引きたくても引けない情勢。
      長い大戦の間に弛緩してしまった、己の女真族たる誇りを、この凍土で回復せんが為、敢えて厳しい条件下に身を晒すのでした。

      ● ようやく、山が動いた。
      岳飛の参内を喜んだのは、秦檜ばかりではありませんでした。
      強く帝への拝謁を勧めた禁軍総帥・劉光世将軍、また水軍を統べる韓成忠将軍。
      彼らの粘り強い説得と、いたずらに敗け続けてきた自らの戦歴への悔恨が、岳飛の足を臨安府へと向けたのです。
      側近二百騎のみを率いて、都へと入る岳飛。
      これで南宋はまとまる…安堵の声が洩れる政権中枢に、ひとり秦檜の眼だけが妖しい光をたたえています。

      ● 秦檜にしてみれば、国内に軍閥の存在を許すわけにはいかぬのでした。
      岳飛将軍には、南宋将軍として正規軍を率いて欲しい。
      ついては、現在の私兵然としている岳家軍を、いちど解体して欲しい。
      これが、南宋宰相の偽らざる本音でした。
      かき口説くように言葉を募らせる秦檜、柳に風とばかりに受け流す岳飛。
      来たるべき金国との再戦に、軍人としての岳飛は絶対に必要でした。
      許礼も語ります。
      岳飛に向けて、南宋という国のかたち、その先の理想。
      言い尽くした言葉のあとに、男としての決断を求められる岳飛でしたが、やはり正直になってみると“南宋に属する”ということに納得ができない自分が居ました。
      もはや、説得無用。
      岳飛を頑迷と断じたのは許礼以下、秦檜の腹心たち。
      あくまで軍閥として立つ岳飛将軍は、現段階の南宋では腹中の毒でしかありません。
      秦檜は、岳飛幽閉を命じます。

      ● 岳飛軍の本拠地である黄陂から臨安府へ“それ”を持って先を急ぐのは、岳飛幕下の文官・干才。
      彼にピタリと張り付き、24時間の護衛を務めているのは梁山泊・褚律です。
      「岳飛捕縛」の報せは、まだどこにも洩れていませんでしたが、燕青は既に手をうっていたのです。
      南宋の皇統が確かざらんことを示す、本来、この世に無いはずの玉璽と短剣…。
      かつて梁山泊が李富のもとから奪ったものが、岳飛救援の切り札として、いま、干才の手にありました。
      宰相・秦檜は、これを無視することができませんでした。
      引き換えに岳飛を解放する。
      許礼たち腹心がこぞって異を唱える中、決断する秦檜。
      偽りの罪人の首を刎ね世間を欺き、岳飛の身柄と“それ”を市中で交換する許礼と干才。
      “それ”を本物と見定めた秦檜。
      許礼ら部下たちは秦檜の許しを得る前に兵を動かし、いちどは手渡した岳飛の身柄の拘束に動きます。
      しかし、立ちはだかる梁山泊致死軍。
      巧みに追撃をかわし、遂に岳飛は死中を脱します。
      秦檜の胸に、これでよかったのかと自問する声が聞こえたのは、初めてのことでした。

      ● 金国の最前線には、兀朮将軍に代わり宰相・撻懶の姿が。
      軍は、沙歇と訥吾という二将軍が、よく統べています。
      これから南宋との本格的な講和の条件交渉が始まります。
      撻懶は、その前に沙歇と訥吾の二将に会っておきたかったのです。
      講和のその先に、軍は何を見ているのか、何を望むのか。
      答えは、文・武ともに一致。
      対梁山泊との決戦により、淮水以北の大地に強大な金国を確立する。
      咽喉につかえた小骨のような、カメレオンのように色を変え物流のみをもって強大な勢力を誇る、国家とも呼べない国。
      意見の一致を見、疲労感に包まれる撻懶。
      意気軒昂な、沙歇と訥吾の二将軍。
      夕闇に包まれ始める開封府の風景です。

      ● 岳飛は姚平ただひとりを供に、南へ。
      続々と襲い掛かる南宋軍の追手と死闘を繰り広げつつの南下になりましたが、影に梁山泊の支援がありました。
      遂に、南宋国境を見る主従ふたり。
      岳飛は、大戦が終わったあたりから、自らの心境の変化に気づいていました。
      自分の命に淡泊になっていたのです。
      ですから、捕えられ、斬首されると聞いた時も、動揺もせず、深甚とわが身の移ろいを感じるばかり。
      むしろ、面白がってさえいました。
      南方への旅を通じて、岳飛は、更にどういう変化をみせるのか。
      軍が消滅し、この世に岳飛という男ただひとりになって、自分に何がなせるのか。

      と、いったところです。

      ようやく岳飛に飛翔のときが。
      イコール梁山泊の危機がすぐそばまでやってきていることを、既に梁山泊の面々は理解しています。
      物語が、ようやく大きく動き始めました。
      >> 続きを読む

      2016/01/23 by

      岳飛伝」のレビュー


    最近この本を本棚に追加した会員

    この本に関連したオススメの本

    取得中です。しばらくお待ちください。

    ガクヒデン
    がくひでん

    岳飛伝 | 読書ログ

    会員登録(無料)

    今月の課題図書
    読書ログってこんなサービス
    映画ログはこちら
    読書ログさんの本棚

    レビューのある本

    最近チェックした本