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岳飛伝 八 龍蟠の章

3.0 3.0 (レビュー1件)
著者: 北方 謙三
定価: 1,728 円
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    「岳飛伝 八 龍蟠の章」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      中華の外の地域で変化が起きていた。
      西遼では耶律大石が死に、南方では秦容が街を拡大した。
      同じく南方に来て、基盤作りを始めた岳飛を南宋の軍が狙う。
      また梁山泊水軍を韓世忠軍が襲った。

      南方に向った秦容と、岳飛の「国づくり」「軍づくり」が目覚ましい発展を遂げています。
      南宋と金が危うい均衡のもと和を結んだのち、両国の目は自然と目の上のたんこぶともいうべき梁山泊へ向かいます。
      戦の気配をはらんだ風が中原を吹き抜けます。
      その気配を感じたていたのは、梁山泊本営の統括・宣凱と、軍総統・呼延灼でした。
      それぞれの国と戦って敗ける気はしない、だが両国といっぺんに戦うとなると話は別。
      宣凱は、致死軍司令・侯真とともに、できるだけ開戦の時期を遅らせる工作を始めるとともに、兵站確保のための兵糧の買い占めを秘密裏に行い始めるのですが…。
       
      八巻の出来事は以下のとおり。※以下、ネタバレです!要注!

      ● 最近の市場でひときわ存在感を示す交易品・甘蔗糖。
      その生産元を調べるよう、金国政商・蕭炫材は、影の者たちに命じます。
      しかし、彼は既におおよその見当はつけていました。
      単身、軍を離れ、南へ向かった梁山泊の秦容が元締めであろう、と。
      日に日に甘蔗糖の流通量は増え続け、また大きくその流通網を広げていました。
      このままでは、交易品のひとつにすぎない甘蔗糖で、国が覆るかもしれぬ。
      蕭炫材の危機感は、現在の秦容の状況をつぶさに調べることで、益々大きく膨張してゆきます。

      ● 韓成も、首都・虎思斡耳朶(フスオルド)に緊急に呼び出されました。
      砂漠地帯に「西遼」という、厭戦の理想国家を打ち立てた耶律大石というひとりの豪傑の死が、すぐそこに迫っていました。
      后の顧大嫂の腕のなかで、静かに息を引き取る耶律大石。
      建国の祖を失った西遼でしたが、その後の政権は盤石。
      五年のうちは新帝を補佐し、現在の状態を維持するのは顧大嫂。
      韓成と郤妁夫妻もまた、それぞれの任地へ。
      しばらくの間、西は、平穏な時代を迎えることになりそうです。

      ● やはり岳飛を放ったのは失策であった。
      南宋宰相・秦檜は、大理国を事実上の属国として征圧、さらに南方、岳飛の本拠地へ数千の軍勢を向けます。
      岳飛本拠地へたどり着く前に、各地の集落での略奪・破壊行為を繰り返しながら、現地人たちを敵に回し、横暴を極める南宋兵たち。
      ついに、岳飛最寄りの集落が襲われ、岳飛軍へ救援を乞う報せが届いたとき、静かに岳飛は動き出します。
      この日の為に、山地や森林での戦闘を念頭に入れた調練を繰り返していた直属の兵たち。
      油断していた南宋軍を、得意のフィールドへ誘い込み、完膚なきまでに叩きのめします。
      逃げ帰えることができた南宋兵は数えるほど、比して岳飛軍の犠牲はゼロでした。
      このことをきっかけに、岳飛軍と周囲の集落との距離感が一気に縮まり、人事や、交易など、盛んに親交を深めてゆくことになります。

      ● 岳飛軍から手痛い反撃をくった南宋。
      やはり、軍の要となる軍総帥を決めきれていない現状が、軍の怠慢を招き、畢竟、弱体化へと繋がったか。
      宰相・秦檜の憂慮は募るばかりですが、岳飛なきあとの南宋軍を統べる人材がいない現状。
      しかし岳飛に対する抑えは万全にしておかねばならないと考えた秦檜は、大理のうち、景曨の砦に四万の軍勢を入れ、南進の構えをみせます。
      砦を護る将軍は辛晃、南宋において考え得る最良の人材でした。

      ● ついに梁山泊内に「王」が誕生しつつありました。
      秦容は、甘蔗糖精製のために切り拓いてきた土地を、徐々に充実させ、ついに万を超す人数を迎え入れるほどの規模に育て上げました。
      中原からやってくる者たちに加え、現地の人間も加わり、集落が“街”とした様相を呈してきます。
      すると規律が必要になり、外敵の侵攻を防ぐ為に軍備が必要になり。
      すなわち、政治を行う必要性に迫られるのです。
      法を起草し、政治を計画し、実行に移す。
      秦容は、南のこの拠点を発展させ、そこに住む民がそこを祖国と呼べるほどのものを創り上げるべく努力することで、呼延灼とともに戦っていると感じることができたのです。

      ● 張朔が見つけたのは沈没寸前の難破船でした。
      伊豆大島近海、日本から大陸への帰路のことでした。
      難破船の主は、南宋海軍総帥・韓成忠の妻、深紅玉。
      海に生きる者の道徳として、難破船の乗組員は敵味方に関わらず、救助する、そして安全な地まで送り届ける。
      張朔は、難破船が南宋の舟であると確認した後、深紅玉を大島まで連れてゆき、島民に後事を託します。
      大戦のきっかけは、この些細な、命の救助でした。
      難破した自船から妻が救助されたのを端緒とし、韓成忠は煮え切らない中央政府・秦檜へ事後承諾で、梁山泊海軍へ攻撃をくわえます。
      その衝動的な攻撃には、張朔の男らしさへの嫉妬心が多分に付け加えられていました。

      ● 岳飛の本拠地の名は「岳都」。
      梁山泊~岳飛軍を股にかける商人・粱興が名付け親でした。
      続々と調練を受けるためにやってくる周辺の村落の若者たち。
      秦容の集落も、ここ岳都も、創造は疲労を超越してゆきます。
      新しいものを築き上げる過程を必死に働くものたち。
      その横顔は、疲労の極限で、今にも斃れそうな仕草。
      しかしそれに反して、希望に輝く瞳の色。
      岳飛のもとへ、しばらくぶりになる妻子が到着します。
      南から、漢民族を統一する。
      中原を、漢民族の手に取り戻す。
      尽忠報国の志が、ふたたび熱い闘志とともに甦ります。

      と、いったところです。

      戦いは来年の秋、と、宣凱も、呼延凌も口を揃えます。
      彼らに従う老将、史進や李俊。
      時は流れ、梁山湖塞に拠って立った、あの頃からは想像もできぬほど、彼らの活躍の場は広がりました。
      日本やベトナム、カンボジアまで巻き込んだ、大いなる歴史の渦です。
      >> 続きを読む

      2016/03/03 by

      岳飛伝 八 龍蟠の章」のレビュー

    • 異動ですか、御栄転ということで、、、しばらく落ち着きませんね。
      読み人は続けてくださいね。まずは健康で。
      私は暫く気が休まらない介護生活だったのですが、ホームに入ってもらいましたので、時間ができそうなのでこれから積読が少し解消するかもです。
      >> 続きを読む

      2016/03/08 by 空耳よ

    • >空耳よさん
      介護とは、さぞやご苦労されたでしょう。お疲れさまでした。
      自分の親でさえたいへんだと聞きますし、実際に伺います。
      僕は、仕事で、介護施設や、サービス付高齢者住宅を建築請負しています。
      建築を考えている施主をご案内するとき、施設をひととおり見せてさしあげるのですが、そのときに勤務しておられるスタッフさんたちの働きぶりに感心させられます。みなさん女性ですが、疲れていてもいつも笑顔、「お金をもらえるからやってるだけよ~」なんて大きな声で笑って話してくれます。
      きっとお年寄りの入居者の方々も、これなら住んでよかったと思ってもらえるな…と、安心できるときです。
      介護する方も、介護される方も、じょうずに第三者を間に挟むのが、気が休まるコツなのかもしれない、と思っています。
      積んで倒れそうなタワーを少しずつ低くして行ってください。
      >> 続きを読む

      2016/03/08 by 課長代理


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