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岳飛伝 九 曉角の章

3.0 3.0 (レビュー1件)
著者: 北方 謙三
定価: 1,728 円
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    「岳飛伝 九 曉角の章」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      南宋水軍は梁山泊の交易路を潰す為、沙門島を急襲した。
      呼応して、金国軍も動き始めるが、梁山泊と本格的な交戦には至らない。
      一方、南の小梁山を奇妙な武器を使う刺客が襲う。
      各地で戦の機運が高まっていた。

      いよいよ各地で戦火が上がり始めます。
      宣凱の心配は敵中し、海と南方では対南宋、中原では対金と、梁山泊としてはいちばん避けたかった両面作戦を余儀なくされます。
      ここで、数年前からじわじわと続けていた麦、米など兵糧となる交易品の実質的掌握が効果を出し始めます。
      そういった意味では、早くからこの展開を想定していた宣凱・梁山泊の緒戦の勝利とも言えます。
       
      九巻の出来事は以下のとおり。※以下、ネタバレです!要注!

      ● 秦容の集落に生活する人口はついに万を超え、さらに活気溢れる街として変貌・発展を続けていました。
      南下をみせていた南宋軍・辛晃四万は、大理国景曨に駐屯したまま。
      膠着状態に思えた状況に、突然の刺客団が、秦容を襲います。
      数にして三十人ほどの歩兵。
      森の中から突如として現われ、ブーメランのような飛刀を操りつつ、物凄いスピードで駆け抜けてゆきます。
      彼らの通ったあとには累々と死体の山が。
      秦容が駆けつけたときには、甘蔗園で働いていた者三百ほどが殺戮されていました。
      怒りに任せて狼爪棍を振るって応戦する秦容は、瞬く間に十三人を斃し、二人を捕虜として捕えます。
      彼らは何者なのか。
      捕虜に問いただしたところ、彼らは長年、数代に亘って大理や蒲甘に雇われている傭兵“山の民”でした。
      平地で過ごす人間は呼吸もうまくできない程の高地に生活する彼らは、およそ人間離れした俊敏性と体力の持続力を持っていました。
      秦容と岳飛は、山岳戦には彼らの協力が必要であるという認識で一致します。
      秦容は、岳飛にふたりの捕虜を預けます。
      願ったりかなったりの岳飛。
      ふたりに調練を指揮させ、部下を高地戦でも通用する様な隊を作ることを企画します。
      この頃から、秦容と岳飛は軍事的連携を深めてゆきます。

      ● 勢いそのままに韓成忠は軍船を梁山泊の東方の交易の要・沙門島へ向けます。
      既に戦いは幕を開けた、後は先手必勝、防御する暇を与えることなく襲撃し、蹂躙するのみ。
      しかし対するは百戦錬磨の梁山泊軍。
      韓成忠が伊豆大島近海で王貴の船団を襲ったという報を得てから、すぐさま沙門島に貯蓄されていた膨大な物品をすべて本土に運び終えていました。
      残っていたのは、沙門島の実質的司令官・孫二娘。
      残らず味方の兵たちの引き上げを確認したところで、ひとり島に残り、陥落する島とその命をともに散らします。
      掲げた「替天行道」の旗は、夢の跡の末路を見届けてなお、風にはためいています。

      ● 沙門島陥落の報復は、疾風の如く、完膚なきまで。
      梁山泊軍総帥・呼延凌は、遊撃隊司令・史進に、決死の作戦を託します。
      それは、遠く南宋の首都・臨安府を赤騎兵二千のみで奇襲をかけるという、味方でも成功を疑うような驚異の秘策。
      とうに命を捨てている九紋竜・史進は、この作戦に奮い立ちます。
      これで、俺も死んでいったあいつらのもとへ行ける…。
      しかし、困難と思われていた行軍はあっけなく成功、難無く臨安府へたどり着いた史進隊は、無警戒な城門を突破、さんざんに城郭内を暴れまわります。
      梁山泊へ戦を挑むということがどのようなことか、体に覚えさせてやる!
      事実、南宋皇帝は恐れ、すくみ上り、すべての戦をやめさせるよう命令を出す寸前まで追い込まれました。
      それほど衝撃的だった奇襲作戦、壊滅的打撃を受けた南宋各兵の心。
      とどめることのできぬ史進の前に立ちふさがったのは、かつての南宋軍総帥・劉光世将軍。
      しかし往年の膂力は微塵も見られず、酒に肥え太った体を一刀両断にするのに、史進は何の困難も感じませんでした。

      ● 衝撃的な梁山泊軍の襲撃が臨安府を襲ったあと、宰相・秦檜の姿は、青蓮寺・李師師の前に。
      先ごろから不穏な動きありと、密偵から報せを受けていた秦檜は、李師師の本意を探り、政権の裏での動きを牽制するために赴いたのでした。
      想像以上に緊張感と禍々しさを孕んだ李師師に、思わず息を呑む秦檜。
      我が子である皇太子を皇帝にすべく、現帝の暗殺まで企てていると、直感した秦檜は、すぐさま現帝の警護を増強する指令をだします。
      現在の南宋内部のもっとも重要な問題は、この皇帝継嗣問題に尽きるといえました。

      ● 胡土児の大胆、わずか二千騎でもって梁山泊領内に静々と兵を進めてきました。
      見咎めたのは巡邏隊隊長・蘇端。
      いずれの兵か、何用か。
      答える胡土児、我が方は総統直轄の兵、梁山泊総帥・呼延凌殿に面会を願うものである。
      丘の向こうの胡土児の放つ気に、早速気づいた呼延凌。
      自らも乗馬し、配下の軍を緊急招集します。
      会って、話しをするほどの仲でもなかろう、交すのは刃のみでよい。
      呼延凌は槍でもって胡土児に応え、ここに梁山泊は金とも正式に戦端を開くことになります。

      ● 南宋の田舎の漁村にひっそり暮らしている王清。
      ついに彼の下に梁山泊がやって来ます。
      公孫勝が晩年、片腕にしていた僧侶・喬道清。
      怪しげな笑顔で王清をかき口説きます。
      こんなところで魚を獲って暮している場合ではなかろう、王貴なども一軍を率いて戦っているのだぞ。
      心をゆすぶられる王清の前に、子午山で師とも仰いだ燕青が現われる。
      まずは一帯の米を買い占める仕事から始めろ。
      王清に否という選択肢はあり得なかったのです。

      ● 金国宰相・撻懶が病の床につきます。
      寄る年波には勝てず、血を吐き続ける毎日に、早くも宰相の死後を想定して蠢きだす権力への妄執者たち。
      撻懶の側近だった魯逸は、急速に斡本(建国の祖・阿骨打の長庶子で、皇太子海陵王の父)に接近、斡本を宰相代理の席に座らせます。
      金は軍が要の国家でした。
      民から徴収する税も、蕭炫材が交易でもたらす利も、すべて軍馬を養うため。
      国家が腐っていくのは、そういった建国の志、国家としての本貫を忘れたあたりから進行してゆきます。
      梁山泊と対峙している兀朮は、地方の農村で苛烈な税の徴収の現実を目の当たりにし、中央の腐敗を感じ取り、激怒します。
      蕭炫材は、撻懶危篤の報を受け、燕京へ急ぎますが、陰謀を巡らせる
      魯逸一派に拉致、幽閉されてしまいます。
      南宋に継嗣問題があるように、金にも中央に文官と武官の対立があり、火種燻る皇帝の後継者問題が大きく影を落としていました。
      撻懶の死の為、兀朮は副将の阿剌を帰還させ政務を命じます。
      一時的に梁山泊軍との戦闘に間隙が生まれます。

      と、いったところです。

      物語のスケールはどんどん大きくなっていくのに、水滸伝の序盤、綺羅星の如くいた人物たちは少なくなっています。
      国家間同士の戦いに個人名は必要なくなってきているのかもしれませんが、寂しい限りです。
      >> 続きを読む

      2016/03/07 by

      岳飛伝 九 曉角の章」のレビュー


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