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ヴェネツィア・水の迷宮の夢

3.0 3.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 1,890 円
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    「ヴェネツィア・水の迷宮の夢」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      心が疲れた人はヴェネツィアに行くのがいい。

      それが叶わぬのなら、この本をゆっくり読むのがいい。毎晩少しずつ服用して、心が倦怠の波に揺れるのに任せろ。数日後には、疲れが心地よいものに思えてくるだろう。

      これは本書の帯(背表紙側)に記された、池澤夏樹の辞。うまいこと言うなあ。ぼくはうっかり一気に流し読みしてしまったけれど(だってうっとりするばかりであまりにも意味をつかみきれない表現が大波小波のように読み手をのみこんでしまうから)、ゆっくり読み直そうと思う。

      まるで詩のような小説?
      小説のような詩?

      いえいえ、一種の日記文学と言えるが、彫琢された文章の美しさで散文詩に近づいている。また語り手の主体が意図的に曖昧にされてあつて……目的地のあるかないかもわからぬ旅の、景色と心情の描写が絡まり合っていて、魅惑的このうえない。

      物語は、ヴェネツィアへ旅して、待ち合わせていた場所にいつまでも来ない「超美女」(かれはそう呼ぶのだ。息をのむほど美しい姿「サイト」)を待っているところから始まる。

      そんな超美女とは、じきに別れてしまうのだが。

      著者はロシアからアメリカへ亡命した詩人。亡命といっても、政治思想的な詩をかいていたわけじゃない。不遇としかいいようのないお方。

      英語でかかれた小説(無論、ぼくは邦訳をよんでる)ではあるが、ロシア語の発想なり隠喩を潜ませているらしい。(つまり技巧たっぷり、らしいけどわかりません。)それでもなんだかふしぎな言葉の感覚に「異界旅行」の気分が漂う。

      そもそも原題の「Watermark」は英語では舟の水位標という意味と、紙の透かし模様という二つの意味がある。英語の底流にロシア語が透けて見えるってことらしい。

      それと、たぶん有名な文学作品の名称や話題がふんだんに登場するので、ほとんど附いていけない。それでも愉しいのは、ことばの通じない国の旅行と同じ。

      ダンテの『神曲』のスタティウスがウェルギリウスに話しかけているように聞こえ……(なんて文章を味わいきれない自分がわんさか。)

      フランスの作家アンリ・ド・レニエの中編小説?
      しかも詩人ミハイル・クズミンによるロシア語訳?

      好きな作家芥川龍之介もかつて言ったように、ぼく(著者)には道徳原理などない、ぼくにあるのは神経だけだ。……(これってどの作品かなあと思うばかり。)

      だらだら講釈たれていないで、すてきな文章の一部だけでも披露しちゃおう。

      (1)(超美女との会話シーン)

      彼女のヌートリアのコートに身を押しつけられながらぼくが最初にたずねたのは、最近刊行されたばかりのモンターレの『モテット集』についての感想だった。すると彼女のなつかしの真珠、三十二個の白い歯がキラッと輝き、そのきらめきが薄茶色の瞳に映り、頭上の天の川の輝きにまでひろがっていった。それが彼女の返事だったのだ。

      (2)(ゴンドラ遊びのシーン)

      ゴンドラもまた、バチャッとの音もたてずに辷って行く。そう、そこには間ちがいようもなく何かエロチックなものがあった。水の上を、しなやかな身体が、音もなく跡もなく進んで行く--まるで愛する人のなだらかな肌の上に、手の平を辷らすよう。まことにエロチックだった。一つには結果というものが何もなかったからだ。そのやわ肌は永遠で、ほとんど動かなかったからだ。

       * * *

      もしも、文章引用のしかたが下手くそで、耽美な癒やし旅の装いを伝えきれていなかったら、ごめんなさい。実物を読んでちょうだいな。

      ああ、それから、それから、……。

      本書にかけられた魅惑的な「帯」をお見せできないのが残念。

      書棚にし舞い込まずに、さりげなく洋室のオブジェとして 飾っておきたい。説明によると、写真はマリアノ・フォルチュニイ「中世風のドレス」(部分)。光沢のある純白の表紙を縁取っている金色が絵画の額の役割を担っている。
      >> 続きを読む

      2016/01/30 by

      ヴェネツィア・水の迷宮の夢」のレビュー

    • 高揚感の伝わる素敵なレビューですね。池澤夏樹さんの言葉も魅力的ですし、詩のような小説、あるいは小説のような詩というのもいい感じです。

      >英語でかかれた小説(無論、ぼくは邦訳をよんでる)ではあるが、ロシア語の発想なり隠喩を潜ませているらしい。(つまり技巧たっぷり、らしいけどわかりません。)それでもなんだかふしぎな言葉の感覚に「異界旅行」の気分が漂う。

      詩にしても散文にしても、著者の精神が発露していれば、母語でなくても十分伝わるもので、それが芸術だと感じています。それゆえに著者の精神の有無とそれを汲み取る訳者の力量が問われるのでしょう。Junyoさんがこれだけ感激されたのですから、英語、ロシア語を踏まえながら、それを超えたよい訳なのかもしれませんね~。

      >そもそも原題の「Watermark」は英語では舟の水位標という意味と、紙の透かし模様という二つの意味がある。英語の底流にロシア語が透けて見えるってことらしい。

      これは興味深い。もともと本のタイトルにはとても興味があります。著者の精神を読む上で大切な指針となる星のようなものですし、それが書物の内容と美しくリンクしていると、さらに感激が増します。

      >ダンテの『神曲』のスタティウスがウェルギリウスに話しかけているように聞こえ……(なんて文章を味わいきれない自分がわんさか。)

      煉獄編にありますよ♪ 主人公ダンテを導く師匠ウェルギリウスの前で、古代ローマ詩人スタティウスは、まさにその人だと知らずウェルギリウスのことを延々と讃嘆します。少々気恥ずかしいのか? ウェルギリウスは自分の身分を明かさないようダンテにそれとなく言うのですが、スタティウスのあまりの尊崇に感激したダンテ(実は、詩人ダンテ&主人公ダンテもウェルギリウスを敬愛してやまない)。
      「この人が、まさにあなたの話すウェルギリウスですよ」
      と紹介すると、スタティウスは唖然として腰も抜かさんばかりに驚き感激する……というじつに可愛らしい、心和む場面があります。古代ローマ詩人やダンテにとって、先達ウェルギリウスの卓越した才気は、神のようでもあり垂涎の的だったのかもしれません(長々と講釈めいてすみませんが、参考になれば幸いです)。

      水の都ヴェネツィアも好きなので、読んでみようと思います(^^♪
      >> 続きを読む

      2016/01/31 by アテナイエ

    • アテナイエさん 期待してました♪

      >煉獄編にありますよ♪ 主人公ダンテを導く師匠ウェルギリウスの前で、古代ローマ詩人スタティウスは、まさにその人だと知らずウェルギリウスのことを延々と讃嘆します。

      そんなシーンを(読んだというより)観た憶えがありますが・・・オペラ? だったかなあ。

      とにもかくにも、欧州の人にとってスタティウスやウェルギリウスは馴染みのあるキャラクターなんでしょうね。

      >水の都ヴェネツィアも好きなので、読んでみようと思います(^^♪
      おお、それはそれは羨ましい。リアルなヴェネツィアを知る人のレビューを待ってます。


      >> 続きを読む

      2016/01/31 by junyo


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