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アンダーカバー 秘密調査

3.5 3.5 (レビュー2件)
著者: 真保 裕一
定価: 1,944 円
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    「アンダーカバー 秘密調査」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      罠には世界を震撼させる陰謀が潜んでいた。
      戸鹿野智貴は若干28歳の若きカリスマ経営者。
      設立したネット企業を成長させ、一躍注目の的となる。
      ところが、女性と旅行に行った異国の地で、謂われなき麻薬密輸容疑をかけられ、一気に転落。
      会社は清算に追い込まれ全財産を失った末、刑務所へと収監される。

      二年後──。
      取材を進めるテレビ局記者の伊刈美香子は、フィリピンの刑務所を訪ね、戸鹿野のインタビューに成功する。
      だが、戸鹿野の容貌は別人のように変わり、刑務所での苛酷な日々を知らされる。
      一方、イギリスで麻薬捜査を手がけるジャッド・ウォーカーは、ユーロポールへの派遣が決定する。
      イタリアへ赴任すると、地元マフィア幹部の惨殺死体が発見され、しかも同じ拷問を受けた死体がトルコ、スペインと、別の国からも報告される。
      ユーロ・マフィアの内部抗争勃発か。
      五年の時を経て、戸鹿野の無罪が判明、釈放されたというニュースが駆け巡る。
      そして、彼は姿を消した。
      真犯人を探し求める元カリスマ経営者、その事件を追う女性記者、そして連続マフィア殺人を調べるイギリス人捜査官。
      それぞれに進められる三つの調査がいつしかひとつにつながり、予想もしない犯罪計画が姿を見せ始める。


      480ページ越えの結構なボリュームの、国際サスペンスです。
      週間ポスト誌に2012年~2013年にわたって連載されていたものを纏めたもの。
      新保裕一さんらしく丹念な取材の跡がそこかしこに見られ、そのことが物語全体に強い真実味を持たせている力作です。
      ただ、出来事に重きを置いた分、登場人物たちの掘り下げが足りない感が残りました。
      それを楽しむ小説ではない、と言われれば頷くしかないのですが。

      あらすじは上記のアマゾンから引いてきた通りです。
      ホリエモンさんを彷彿とさせる転落する若手実業家・戸鹿野智貴と、彼を追い続けその執念から局アナからフリーランスのジャーナリストへと職業まで変えてしまった「イカリ」こと伊刈美香子、ヨーロッパ警察捜査官ジャッド・ウォーカーの3人の視点で物語は綴られます。

      発端は、ヨーロッパ各地で発見されるマフィアボスたちの、激しい拷問の末に殺されたと思しき凄惨な死体でした。
      有能なユーロポール捜査員ジャッドは、上司からの指示のままにイタリア、トルコ、スペインと点在した殺害現場に臨場します。
      いずれの現場からも殺害方法や、拷問の跡など共通点が見られ、背後に蠢く“何か”と“誰か”を突き止めるため奔走します。

      物語そのもののスタートは、麻薬所持容疑でフィリピン出国の際、拘束される戸鹿野の描写から。
      全く身に覚えのない大量のヘロインが彼の荷物から見つかり、地獄のような刑務所に拘留されることに。
      一貫して無実を訴え続ける戸鹿野でしたが、彼をサポートしてくれるはずの部下たちは離散し、同行していた女性の裏切りも知ります。
      冷静になった彼は、自分を陥れて利を得る者がいったい誰なのか、思考を巡らします。
      5年後、無罪を勝ち取った戸鹿野は、地位も名誉も失っていました。
      しかし元来、聡明な頭脳と行動力、決断力、全てに秀でていた彼は、たったひとりの復讐を決意します。

      戸鹿野への執着のあまり、勤めていたテレビ局を辞めるに至ったイカリ美香子。
      彼女は当然、戸鹿野周辺を洗いざらい調べていました。
      戸鹿野の経営していた会社はイメージダウンからあっという間に倒産、後を引き継いだのは戸鹿野の顧問弁護士だった古雅という男でした。
      また、フィリピンで戸鹿野とともに拘束された女性の謎の死。
      戸鹿野が、直前まで推進していたある技術メーカーとの提携プロジェクトと、そのメーカーの技術者の自殺。
      一見するとバラバラに見えたピースが、戸鹿野釈放という報とともにひとつの仮説のもとに集約されていきます。
      事件の背後関係を調べる美香子の前にちらつく、戸鹿野の影。
      美香子は、戸鹿野の後を追うように、事件の真相に少しずつ近づいていきます。

      新保裕一さんの作品は、いつも尻切れトンボの印象です。
      広げた風呂敷が大きすぎて、収拾がつかなくなるうち大団円…みたいな。
      読み手を惹きつけるキーワードや出来事には事欠かないので、終盤まで一気に読ませるのですが、最後の最後で詰めが粗い印象です。
      事件を追う3つの視点がいつ交差するのか、緊迫した描写が続くのに、犯行を重ねる側の描写が皆無(読者の想像にすべて委ねるという手法なのかもしれませんが)というところが引っかかりました。

      大沢在昌さんのハードボイルドアクションなどで、タイ・ミャンマー・ラオス国境の麻薬密造地帯、通称「ゴールデン・トライアングル」の存在は知らされていましたが、本作では近年の麻薬密造事情が様変わりしたとして、トルコの東からアフガニスタン・イランにわたる長大な三日月の形状をした地帯「ゴールデン・クレセント」を紹介してくれます。
      ここで密造される麻薬の量は、ゴールデン・トライアングルはおろか、中南米最大の密造国コロンビアをさえ凌ぎ、欧米を中心とする麻薬市場を支える一大密造工場となっているとのこと。
      この地帯はクルド、チェチェンといった民族紛争を抱え、地下に相当量の埋蔵を誇る石油利権もあり、そこへヨーロッパマフィアやイスラム過激派勢力などのダーティな勢力が複雑に絡み合い、血で血を洗う抗争が続いているといいます。
      結局、世界の警察を気取る大国の意向と利益が、個人の生命などお構いなしに暴走し、挙句の果てテロリズムを産む構図が本作でも改めて描かれるわけですが、翻って、現在の自国の、お追従外交の末に平和憲法を放棄し、再度、あの戦争の惨禍を国民に味あわせようとする政府の姿勢に怖気が走るのを禁じ得ない現実社会の状況ではあります。
      >> 続きを読む

      2015/05/18 by

      アンダーカバー 秘密調査」のレビュー

    • >素頓卿さん
      いつも、コメントありがとうございます。
      ウィキで調べました。アニメ業界出身なんて、これっぽっちも知らなかった。
      相変わらず素頓卿さん、博識ですね。お見それします。
      異色ですが、筋の通った経歴です。
      僕は、乱歩賞出身作家さんとしか認識していませんでした。
      これだけの人ですから、素地は既にあるのですね。
      『ホワイトアウト』良かった。
      映画はもうひとつだった印象ですが、原作は非常に佳作でしたね。
      映像を意識した、ハリウッドテイストの濃いエンタテインメントでした。
      >> 続きを読む

      2015/05/18 by 課長代理

    • >arinkoさん
      いつも、コメントありがとうございます。
      確かに『奪取』を発表されたあたり旬でしたね~。絶頂期。
      講談社から出版された、漢字二文字タイトルはハズレがなかった印象です。
      『アマルフィ』とかからじゃないですか?尻切れトンボ、空気抜けた観があるのは。
      僕も、読書メモ遡ると、新保作品は実に5年ぶり。
      平成20年8月に『追伸』を読んでます。また、同年4月には『最愛』。
      その2作以来、遠ざかったていたというのは、やっぱりその2作にあまり面白味を感じなかったからでしょうかね~。
      >> 続きを読む

      2015/05/18 by 課長代理

    • 評価: 4.0

      大学在学中に設立したネット企業を成長させ28歳で若きカリスマ経営者としてマスコミにももてはやされた戸鹿野智貴は、ガールフレンドと行ったフィリピンの空港で薬物密輸の疑いで逮捕される。
      おみやげしか入っていない荷物の中に麻薬が入っていたのだ。
      心当たりもなく無実を訴えたものの、やがて会社は破綻し、資産は没収された。
      5年後、牢獄の中から自力で無実を証明し釈放されると、自分を罠に陥れた真犯人を暴こうとする…。

      ◆罠にかけられ全てを失い、その真犯人を探そうとする戸鹿野。
      その戸鹿野を取材しようとする女性記者・伊刈美香子。
      イギリスで麻薬捜査を手がけ、ユーロポールへの出向となったジャッド・ウォーカー。
      戸鹿野をメインにこの3者の視点から物語は描かれます。
      牢屋の中から自分の無罪を証明するなどいうことで、登場時は小生意気というか、あまりいい感じを持ってなかった彼ですが、一気に物語に興味がわきます。
      そして戸鹿野を追いかける女性記者の視点が入ってくるのは、分かりやすいのだけれど、ユーロポールはいったいどこでつながってくるのかがなかなか見えてきません。
      このあたりが結構物語を複雑なものにしていきます。
      個人的には戸鹿野の視点だけでも良かったのではないかとも思うのだけど、事件の真相を、そしてその先のためにも、国際的な部分は必要だったのでしょう。
      もちろんその分事件の方もグローバル化しているということでもあって、スケール大きいです。
      読み応え十分の作品でした。
      >> 続きを読む

      2014/08/08 by

      アンダーカバー 秘密調査」のレビュー

    • chaoさん>
      おみやげしか入っていないトランクの中に…と空港で言われたら、怖いですよね。

      なかなかスケールの大きなミステリで、「アマルフィ」など映像化も多い作者の作品なので、映画化などを希望しちゃいます。
      >> 続きを読む

      2014/08/10 by むつぞー

    • makaroniさん>
      「モンテ・クリスト伯」とかの復讐譚も好きなので、このあたりがどうなっていくかが、とても興味を持って読みました。
      最終的には思いも寄らぬ所に連れて行かれましたよ。
      >> 続きを読む

      2014/08/10 by むつぞー


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