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平将門

5.0 5.0 (レビュー1件)
著者: 海音寺 潮五郎
カテゴリー: 小説、物語
定価: 860 円
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    「平将門」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      歴史小説が大好きで、折にふれて海音寺潮五郎の作品をよく読んでいますが、今回は久し振りに本棚で眠っていた「平将門」を再読しました。

      海音寺潮五郎はこの小説の執筆の動機として、戦後の歴史小説が題材的な制約を受けていた時期、知り合いの編集者から吉川英治が「平の将門」を書き始めた事を聞かされ、自分ならこう書くといった事が作品執筆の端緒となったと語っています。

      そして、その時、海音寺が意図したのは、まず作品化の大前提として「将門記」に記述されている事を枠に、その中で時代錯誤にならない形のフィクションの創造を第一とし、将門の乱の発生原因を"土地問題"、すなわち、地方の地主間の土地争いと中央貴族と地方豪族との争いの双方、及び、京都貴族の観念的な政治意識と地方豪族の現実的な政治意識の食い違い、更には、藤原氏の専権壟断に対する不平不満、そして、最後に神託なるものに対する日本古代の強い信仰の四点に絞って作品を構築する事であったとも語っています。

      そして、海音寺が語っていた事柄の結果として、日本の古代国家が律令制から荘園制へと移り変わっていく中で、様々な矛盾に対する"怒りの具現者"としての平将門が、中央と地方という問題を絡めた政治的・経済的な側面を担い、極めて立体的に浮かび上がってくる事になるのだと思います。

      平将門と言えば、日本史の授業で、平安中期、東国にあって叛乱を起こし、関東の独立を図った人物として習いましたが、とにかく様々な伝説と共に英雄視されている人物でもあるんですね。

      現在も東京の大手町には将門の首塚があり、神田明神は将門の"怨霊を鎮める"ために建てられたものであるとも言われていますからね。

      しかし、戦前・戦中の"皇国史観"が盛んであった頃、この坂東八か国を席巻した東国の新皇は、足利尊氏と並ぶ"逆賊"の典型とされていました。この作品は、そうした偏った味方を覆しつつ、作者が"時代錯誤にならない形"でと言ったように、安易な現代的解釈に陥る事なく、あくまでも当時の歴史の中の人物として将門を位置づけているところが素晴らしいと思います。

      この小説「平将門」は、常々、"歴史は解釈である"と語っている海音寺潮五郎という、確固とした、歴史的視点を持った作家が、従来の偏った史観にとらわれる事なく、自由闊達に"叙事詩的な歴史小説"という形で、合理主義と心理主義で行き詰った現代の小説に、鮮やかな"アンチテーゼ"を示した作品であると思います。



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      2016/09/10 by

      平将門」のレビュー


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