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死の棘

5.0 5.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 882 円
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    「死の棘」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      ついこの間、ネットのニュースで51歳の男が妻をハンマーで殴り殺したという事件を読んだ。仲良さそうに登山をしている姿が写真で掲載されていた。パソコンを壊した云々と言うよくわからないことが殺人の原因らしい。
      その時ちょうど私は島尾敏雄の「死の棘」を読んでいる途中だったが、このニュースを知ってその残忍な殺し方よりも、当事者夫婦の絆の弱さのようなものを感じた。
      島尾夫妻の絆の強さと比較していたのかもしれない。

      作者である島尾敏雄は、外に女をつくっていた。それも10年ぐらいもの間。その事を知った妻が、徐々に精神をきたしていき、夫を責め尋問し、それを四六時中受けた夫も完全に鬱になっていく。たまに妻は正常に戻り夫は束の間の安息を得るが、すぐにまた妻の発作が起こる。その繰り返しで作品が進んでいく。読んでいるうちにその夫婦間の諍い(カテイノジジョウと作品の中でされている)は、夫婦の絆を確かめるために行われているのではないかという思いが、私の中に芽生え、そして固まっていった。
      最終的には妻は精神病院に夫付き添いのもと、入院となる。妻の病状がだんだん悪化していくのとは逆に、夫婦を繋ぐ糸は決して切れないような物質にまで硬化していったように確信した。(精神病院に二人でいる場面の)ラストの文章に、島尾の妻への思いが如実に現れている。

      "逃亡を防ぐために窓には縦横に格子を打ちつけた、がらんとして調度品のない病室のベッドに腰かけて、寂しさをおさえてすがるような目なざしを送ってよこした妻のすがたが焼きついてはなれないのだ。この世で頼りきった私にそむかれた果ての寂寥の奈落に落ちこんだ妻のおもかげが、私の魂をしっかりつかみ、飛び去ろうとする私のからだを引きつけてはなさない。妻が精神病棟のなかで私の帰りを待っているんだ。その妻と共にその病室のなかでくらすことのほかに、私の為すことかあるとも思えなかったのだ。"

      親と子、兄弟は生物学的に遺伝子の繋がりがある。
      でも夫婦は生物学的にみれば、全くの他人である(近親結婚なんかは除いて)。
      でもそこにはある意味親子とは毛色の違う目に見えない強固な絆が存在している。それがなぜ存在しうるのか、その意味は何なのか、さらに掘り下げて考えてみようかと思った。
      >> 続きを読む

      2017/09/08 by

      死の棘」のレビュー


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