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明るい夜に出かけて (新潮文庫)

4.0 4.0 (レビュー2件)
著者: 佐藤 多佳子
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    「明るい夜に出かけて (新潮文庫)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      本や雑誌の売り上げが伸びず、冬の時代が続いていると言われる出版業界だが、厳しい状況は、他のメディアも同様らしい。

      佐藤多佳子の「明るい夜にでかけて」では、かつて一世を風靡した、深夜放送の世界が重要な背景となっている。
      しかし21世紀の今、ラジオの世界もまた、順風満帆とは言えない。

      この物語の主人公の富山は、あるトラブルで、心に傷を負い、大学生活から期間限定でドロップアウトしている青年だ。

      深夜のコンビニで働き、人目を忍ぶように細々と暮らす彼の前に、ある晩、風変わりな女子高生が現われた。
      彼女は、主人公が唯一の心の拠り所にしている、深夜番組への常連の投稿者だった-------。

      佐藤多佳子らしい、饒舌から浮き彫りになるのは、他者との距離感を摑むのが苦手な、現代の若者像だ。

      この小説は、その一人である主人公が、社会復帰のきっかけを摑むまでの再生の物語だが、少女や彼の友人、職場の同僚らを巻き込んで、温かな人間模様が織り成されていく。

      そして、ある番組の打ち切りをめぐる、終盤のスリリングな展開も、この群像劇のクライマックスを盛り上げていると思う。

      >> 続きを読む

      2020/12/08 by

      明るい夜に出かけて (新潮文庫)」のレビュー

    • 評価: 4.0

      内容紹介-------------------------------------------------------
      富山は、ある事件がもとで心を閉ざし、大学を休学して海の側の街でコンビニバイトをしながら一人暮らしを始めた。バイトリーダーでネットの「歌い手」の鹿沢、同じラジオ好きの風変りな少女佐古田、ワケありの旧友永川と交流するうちに、色を失った世界が蘇っていく。実在の深夜ラジオ番組を織り込み、夜の中で彷徨う若者たちの孤独と繋がりを暖かく描いた青春小説の傑作。山本周五郎賞受賞作。
      ---------------------------------------------------------------

      主なストーリーとしては、傷ついた若者が風変わりな人が集まるコミュニティの中で交流を重ねて再生していくというありがちなものだが、この作品独自の味付けが面白いところだ。
      特徴として目立つのは、実在したラジオ番組を物語の主軸にとりあげていることで、そのせいもありラジオはもちろんテレビなどのメディアでも本作が取り上げられた。

      しかし、私が注目したのは、ラジオとそれにとって代わりつつあるインターネット配信の文化に触れる若者の「つながり方」について描かれていたことだ。

      最近の若者はわがままであまのじゃくだ。
      作中でも「自意識過剰でひねくれてるし、臆病でほっといてほしいくせに、評価はされたいんだよな。目立ちたくない、目立ちたい、まったく相反する二つの気持ちがあるよ。弱っちいくせにプライド高かったりね。」などと書かれている。

      その態度は人とのつながり方にも表れていて、学校や職場でのリアルな人づきあいは苦手としているのに、SNSやインターネット上の交流には積極的な若者が多い。
      彼らは「繋がりたくないけど繋がりたい」という微妙なバランスを求めていて、主人公の富山とってはそれがラジオだった。
      ラジオにはリスナーがメッセージを投稿できるコーナーがあり、リスナー同士で積極的に交流するわけではないが、一緒に番組を聞いている感覚を味わえる。
      富山はそれを「夜の中で、ラジオでつながってる感覚」と評している。

      個人的に、この表現がとても共感するところだった。
      というのも、私はインターネットの生配信やゲーム配信を見ることが一つの趣味で、真夜中に街は寝静まっているのにネットには人があふれていて、リスナー同士交流するわけでもなく配信を見てたまにコメントをする、というのがとても心地いいのを知っているからだ。
      特定の人とのコミュニケーションは疲れてしまうが寂しいのは嫌、という私にちょうどいい。

      ラジオあるいは配信文化に慣れている人、そして夜型生活のひとには共感しやすい雰囲気に溢れていると思う。
      夜中の町の雰囲気、ちょっとしたもの寂しさみたいなものの表現が上手い。
      >> 続きを読む

      2020/05/26 by

      明るい夜に出かけて (新潮文庫)」のレビュー


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