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百鬼園随筆

5.0 5.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 評論、エッセイ、随筆
定価: 460 円
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    「百鬼園随筆」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      この本の中のひとつ。

      『南蛮鴃舌(ちいちいぱっぱ)』

      百鬼園先生が独逸語の教官をしていた時分の話。

      『独逸語の教官をしてゐる以上、独逸人の教師が来れば、独逸語で話しをしなければなるまい。私にはその自信がないのである。これは困つた事になつたものだと考へて、鬱鬱とした。いよいよやつて来たので、先生の同僚が私に紹介した。無論独逸語である。今考へて見れば、馬鹿な話で、先方はその当時でも、既に十何年日本で暮らしてゐるのである。日本語で挨拶して、通じないわけはなかつたのだけれど、何しろこちらに、独逸語教師と云ふ弱身があるものだから、日本語で挨拶なんかすれば、独逸語の会話がうまく出来ないからだと思はれやしないかと云ふ心配があり、その心配がまた本当の事実に根拠を有するものだから、気持が窮屈である。』

      『それよりも、もつと根本の問題は、私の独逸語が、あまり上手ではなかつた事に原因する様である。抑もどう云ふ縁故で、親類にも、近所にも、だれ一人知らない独逸語などと云ふものを、習ふつもりになつたのかと考へて見ても、その始まりがよく解らない…』

      『曖昧な理由で、独逸語をやり出した所為か、どうも独逸語が自由自在でない。学校を出て見ても、解らぬ事が多くなつただけである。しかし、月給を取らないと困るから、教官になりすましてゐると、そこへ新しい独逸人カルグセル氏が乗り込んで来たのである。(略)一ばんしまひに、私が挨拶した。どうも、うまく行かない。これから、しよつちゆう独逸人と顔を合はす。教室で教えるよりも、この方が気苦労である。困つた事になつたものだと、私は考へ込んだ。』

      『近来、私の語学力は、また頓に凋落した趣がある。いろんな事が段段億劫になり、本を読むのは、最も煩はしい。人間の目と云ふものは、本の字などを読むための物でないと云ふ様な事を、本気で考へ出した。』

      『すると、私の同僚に大変独逸語のよく出来る人がゐて、初めのうちは、おとなしかつたけれど、長い間に、いろいろの事を考へたらしいのである。先づ第一に、私の独逸語が大したものでない事を明察し、次に段段私の箍のゆるんでゐる事を看破して、追ひ出してしまへ、ときめたのである。(略)すると、私も丁度そんな気持になりかけてゐたところなので、何だか矢つ張りもとの通り独逸語と云ふものは、私に取つて、飛んでもない厄介なしろ物であつた様な気がし出した。字を見れば、目が痒くなるやうな刺が一ぱい生えて居り、話をすれば、無闇に唾が飛び出す。独逸語などと云ふろくでもない荷物を振ひ落として、せいせいしたら、いい気持だらうと思つても、永年やつて来た教師の職を、さう手軽に自分の我儘で投げ出すわけには行かない。(略)私を邪魔にした同僚は、後に残り、自分の鶏鳴狗盗を幾人も先生にして威張つてゐる。考へて見ると、面白くないけれど、その方のいきさつは、これまた天譴にまつとして、それよりも、私は二十年来の独逸語の先生を、漸く止める運り合はせになつた。月給がなくなつたのは困るけれど、それは当分売文を以て補ふ。そのうちに、又原稿用紙の枠の中に、小さな字を書き込むのが嫌になれば、独逸語の先生になつてもいい。しかしそれには、カルグセル氏の様な第四の独逸人が出現して、私は大変語学が上手であると云ふ事を暗示してくれなければ、やりにくい。』

      『…どうも私には、西洋人と云ふものは、あまり好きでない様な気がする』

      ここは論評、講評の場であるけれど、
      なんだか面白くて好きだなぁって…思いました。
      >> 続きを読む

      2013/01/22 by

      百鬼園随筆」のレビュー

    • iceさん。コメントありがとうございます。

      はははは・・・。先生の表情と言いっぷりが目に浮かぶ様ですな(笑) >> 続きを読む

      2013/01/23 by <しおつ>

    • makotoさん。コメント・・・・コメントだよな(笑)
      違う?
      あら?
      ま、それでもせっかくなので、ありがとう(笑) >> 続きを読む

      2013/01/23 by <しおつ>


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