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玉人 (新潮文庫)

5.0 5.0 (レビュー1件)
著者: 宮城谷 昌光
定価: 473 円
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    「玉人 (新潮文庫)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      「晏氏」や「孟嘗君」など気宇壮大な作品で、私をいつも魅了してくれる作家・宮城谷昌光。

      この「玉人」は、彼の巧緻を極めた、宝石のような煌めきを持つ短編小説集です。そして、その巧緻さと収録作品6編の持つ、幻想性の高さが程良く融け合い、一種独特の優雅さ、風韻を奏でている点が最大の魅力だと思います。

      まず、巻頭の「雨」は、いわば己れの見てしまった夢を現実として認めてしまったために、身を亡ぼす男の話です。主人公が、兄の討手を避けながら、雨の一夜、契りを結んだ美女の不思議に始まり、幻想に侵犯される奇怪至極な運命の物語が展開していくのです。

      だが、ここで作者は主人公が兄の悪評を聞くくだりで、「うわさをあえて事実としてきいた」と、この男の過剰な心性を伏線として用意しているのです。そして、これが正しく、幻想世界を支える核の部分となっているのだと思います。

      2編目の「指」は、一国の政争を「女の真の美しさをひきだし、みがきあげる」天与の指を持った男の閨房を通してのみ描き抜いた異色作で、まるで川端康成の後期の作品の本質を思わせるような、"陶然たるエロティシズム"が乱舞しているように感じました。

      3,4,5編目は、探偵趣味が横溢している「風と白猿」、主人公と従僕の苦平との心温まる心の交流を描く「桃中図」、凄絶極まりない仇討ちの物語「歳月」なども、かなりその物語の世界へ引き込まれます。

      そして、巻末にある6編目の表題作ともなっている「玉人」は、主人公と玉のような美しさを持った人妻との邂逅、そして死別までを、千年の時を経て、その輝きを失わぬ燭台と二重写しに捉えていて、この短編集の中で「雨」と並んで特に好きな作品です。

      読み終えてみて感じるのは、この宝石のような短編集のいずれの作品も、具体的かつ的確な描写が成されながら、その中に塗り込められた、"生のはかなさや男女の綾"といったものが、形而上的レベルで鮮やかに昇華していくさまは、私の心の琴線を震わせ、そのあまりの素晴らしさに、もう見事としか言いようがありません。

      これらの珠玉の作品を紡いだ作者の宮城谷昌光もまた、"玉人"と言うべきであろうと思います。
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      2016/11/30 by

      玉人 (新潮文庫)」のレビュー


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