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キャリー

4.5 4.5 (レビュー2件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 620 円
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    「キャリー」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0


      スティーヴン・キングの映画化もされた「キャリー」を読了。

      このスティーヴン・キングが登場して、"モダン・ホラー"の時代が到来したわけですが、私が思うに、キングを代表とするモダン・ホラーの特徴のひとつに、お城みたいな非日常的な場所を舞台にする"ゴシック・ホラー"と違って、家庭とか学校みたいな日常的な設定を使うことがあるんですね。

      キングが好んで読まれるのは、普通の町、普通の人々について語られるからなんですね。

      この「キャリー」も、母子家庭と学校という珍しくない場所を舞台に、これでもかというくらい救いのない話を作り上げている。

      母子家庭で、母親が正気を逸した人物だった場合に子供が覚える恐怖は、誰でも想像出来る。
      同じキングの「シャイニング」もそうでしたね。

      真冬のホテルに閉じ込められた三人家族のうち、父親の気が狂ってしまったら-----そういう誰にでも想像が出来る恐怖を描くのが、キングは本当に巧い。

      このように、ストーリーテラーとして讃えられるキングですけど、この人は類型も含めて、キャラクターの造型が天才的に巧みだという特徴もあると思うんですね。

      出て来る人物が生き生きとしていて、身近に感じられるからこそ、その人物が体験することになる恐怖もまた身近に感じられるようになる。
      そういう相乗効果を上手に使いこなす作家というイメージが、私にはあるんですね。

      この作品で言うと、キャリーに嫌悪感を抱きながらも、そういう自分が許せなくて、卒業記念パーティ(プロム)のパートナーとしてキャリーを誘ってやって欲しいと恋人に頼む同級生・スーの造型が、実に巧い。

      恐らく、読者の多くはこのキャラクターに感情移入しながら読むと思うんですね。
      いわば、読者とキャリーをつなぐ媒介の役目を担っている。
      彼女が存在するからこそ、このおぞましいエピソードが頻出する物語を読み続けられるのだと思う。
      ホラー小説には、こういうキャラが絶対に必要なのだと思いますね。

      加えて、巧いと思うのは、そんな脇役の人物たちを事件の方へ突き動かしているのが、コンプレックスやトラウマだということなんですね。

      彼らは、痛みを覚えつつも、だからこそ渦中へ踏み込まざるを得ない。
      欠点を抱えていない人間はいないので、つい引きずられて読むのがやめられない。

      それとキャリーだって、どこの学校にも一人くらいいそうな、いじめられっ子ですからね。
      根暗でなんとなく気味の悪い少女。

      いわば、ここに働いているからくりは、そういうイジイジした少女をいじめにいじめてやったら、どんなにスカッとするだろうと思うと同時に、そんな自分が後ろめたくなる人間の"暗い心理"を刺戟する、入ったら抜け出せない"泥沼的な快楽"で出来ているのだと思う。

      あと、物語の原型を換骨奪胎するテクニックも、実に見事なんですね。
      この「キャリー」も、「みにくいアヒルの子」と「シンデレラ」を巧く使っている。

      キャリーがシンデレラで、母親のマーガレットが性悪な継母で、キャリーをいじめるクリスはじめとするクラスメイトたちが意地悪な姉で、キャリーに同情的な同級生のスーが魔法使い、スーの恋人で公平なものの見方をするトミーが王子様、そして体育館でのプロムが宮殿の舞踏会。

      それから、この「キャリー」は、モダン・ホラーでありながら、一種の青春小説にもなっていると思うんですね。
      初刊行当時は、すごく新しかったと思う。
      アイラ・レヴィンの「ローズマリーの赤ちゃん」が我が子を授かるという慶事を忌まわしい物語と結びつけたのが新しかったみたいに。

      それと、情報の出し方と隠し方。この作品は驚くべきことに、始まってすぐにキャリーが念動能力の持ち主で、どうやら何かすごく大きな事件を起こしたらしいということを、明かしているんですね。

      凡庸な作家では絶対出来ないですね。ところが、これよりもっとスケールの大きな情報を隠し持っているキングは、その程度のネタは隠さず明かして、我々読者の気を惹くことに成功していると思う。

      しかも、その情報を地の文ではなくて、ニュース記事とか事件の後に出版されたノンフィクションなどの引用を並べて明かす手法を用いているのも、さすがにキングならではの自信と冒険心に溢れていると思う。
      しかも、我々読者の想像力を信頼しているというのも、実に心憎いですね。

      とにかく、この作品は、抑圧的な母親から自尊心や自由を奪われていく娘との関係を中心テーマに持ってきているのが、単なるエンターテインメントの枠を超えて、深いと思いますね。

      >> 続きを読む

      2018/11/22 by

      キャリー」のレビュー

    • 評価: 4.0

      キングの名前を有名にした作品であり、何度も映像化された有名なこの本を、今まで読んだことがなかった。キングの他の作品はいくつか読んできたのに、こちらを読まなかった理由は、我が事ながらよくわからない。

      超能力を持つキャリーは、狂信的な母親に支配されるように育つ。
      学校で突然初潮を迎え、母親から何も聞かされていないキャリーはパニックを起こす。そんなキャリーを同級生がからかい、キャリーの秘められた力は大勢のひとの前で発現されてしまう。
      暗くいじめられてばかりのキャリーも卒業を控えプロムに人気者のトミーから誘いを受ける。

      こう始まり、キャリーに対して悪意を向ける同級生の酷いイタズラによって、町中が恐怖に包まれるという、パニックホラーというか何系のホラーだかよくわからないけれど、有名なホラー小説だ。
      小説を読んでいなくても映画を観たのなら、頭から豚の血を浴び血塗れのキャリーが力を発揮するところなど、衝撃的なシーンの多い作品と記憶されているだろう。わたしはそうだった。

      原作である本書は、物語を時系列に書くのではなく、事件後の記事や書籍などの間に当時の物語を挟む形であるため、物語自体を知らないで読むとわかりにくいかもしれない。
      作品をいくつかは書いていても、発表されていない若いキングなので、普通に書いては面白くないと趣向を凝らしたくなっても仕方ないところだろう。

      母親が娘に及ぼす影響というのは計り知れないものだと、今回読んで思う。わたしも気づかないうちに母親の影響はおおいに受けていることを日々実感している。

      この作品では、血を流すという場面が象徴的によく使われている。
      キャリーの心が傷つき、まさに血を流しているところを巧みに表現している。また、映像化を考えているはずもないキングであっても、その後多くの作品を映像化されることからしても、視覚に強く訴えかける手法を既に心得ていたのかもしれない。

      キャリーは痩せぎすな少女を勝手にイメージしていたが、読んでみると寧ろ太り気味な少女と描かれている。
      母親や学校でのストレスから過食に陥っているということらしい。ストレスだと食べられなくなるわたしなのでキャリーもそうだと決めつけていた。過食するタイプのひとも多いので問題ない。アメリカは手軽にカロリー摂取出来そうなものが多いようだから、過食で太る方が理にかなっているかもしれない。

      今回ようやく「キャリー」を読んだので、次は「シャイニング」を読んでみたい。
      キングは「シャイニング」の映画は嫌っていたらしいので、映画との違いにも興味がある。あのドアをぶち破って隙間から顔を出してニヤリと笑うシーンなんて、映画史に残るしわたしの記憶にも刻みついているけれど。

      キングも気に入りの映画「キャリー」が観たくなる読書だった。
      >> 続きを読む

      2016/09/06 by

      キャリー」のレビュー

    • 映画を見てから小説を読んだとき、何と深くて大きな物語だったのかと。映画は学校だけ、小説は町全体が舞台になりましたものね。思わず原書を求めて頑張って読んだほどです。母親になってから読み返すと、キャリーが私の娘たちにかぶって、涙無くては読めなくなったりしました。10代の子はみんな自分に自信がなく、衝動を抑えきれない時もありますしね。 >> 続きを読む

      2016/09/06 by 紫指導官

    • 紫指導官さん
      コメントありがとうございます。

      原書が読めるって素敵ですね。わたしももう少し英語をきちんと勉強しておけば良かったです。
      読む時期によって読み方や考え方が違うので、同じ本でも得るものが変わってきますね。そこが読書の面白いところですよね。
      >> 続きを読む

      2016/09/07 by jhm


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