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金閣炎上

5.0 5.0 (レビュー1件)
著者: 水上 勉
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    「金閣炎上」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      水上さんは「ブンナよ、木からおりてこい」の作者。日本仏教と関わりが深い方のようです。

      三島由紀夫の「金閣寺」はあくまで三島由紀夫の物語だったのでしょう(途中までしか読んでないけど)。けれど、水上勉さんのこの作品は、炎上事件の真相を自らの足で何年もかけてくわしく取材したドキュメンタリー作品のようになっています。水上さんは「事実の八割どおりは書けたように思う」とあとがきに書いています。

      林青年の生い立ち、日本仏教やお寺のありかた、社会の、親子の人間関係などさまざまな視点から見れば、林青年がやったことはよくないけれども心情は理解できる気がします。放火しても(死のうとしていた)何もよくはならない。けれど、林青年がこの世に嫌気がさしてしまったとしてもそれは無智だった(「苦」を冷静に客観的に理性的に観ることができなかった)から、ただただ気の毒だったとしか言えない。

      この作品には水上さんから林青年へ「鎮魂の思いを捧げる」目的があったそうです。水上さんのやさしさですね。

      (ちなみに、日本仏教には魂とか霊魂とかの概念があるのかな?でも、「魂」に縛られると苦しいと思います。上座仏教で言われるように、魂というモノはなく、魂がさまよったり留まったりすることもなく、ただ、こころのエネルギーが「因果法則」によって変化生滅し続ける、大ざっぱに言えば、亡くなったらすぐに他の生命として生まれ変わると理解した方が理にかなってるかと思います。「鎮魂」と言うより、あなたのことをきちんと理解したいという「やさしさの回向(分かち合い)」のための作品と言った方がいいかもしれません)

      観光名所としての金閣寺。
      拝観料で多額の収入を得る会社のような組織になっているお寺。お寺にも上下がある。お釈迦様の教えや禅寺としての役割は、どこへ行ったのか(そもそも禅寺として建てられたわけではない)。お坊様も世間の煩悩を乗り越え悟りに至った人ではないし、もちろん使用人は普通の煩悩に満ちた人間。

      お寺なのに出世などという俗世間の仕組み。日本への伝来の仕方によって、さらに時代と共に変わっていった日本の仏教。政治に利用されてきた歴史があるので仕方がないのかもしれない。(世襲制だったり、檀家制度があったり日本独自のやりかた)

      林青年の生い立ちも。田舎の貧乏寺の住職である父親が結核で亡くなって、地元の寺に住むことができなくなる。村から疎まれた母は実家に帰る。林青年には故郷がなくなる。自身も、吃音の障害と父からもらった結核。出世の見込みもないだろう(出世という欲の概念に執着した時点で仏教ではないね)。

      仏教の勉強も途中でやる気をなくした林青年が、現実(苦)をありのまま受け入れ、そこから冷静に苦を乗り越えるべく精進しようという気になれなかったのは、どうしようもなかったか・・・。だって人間だもの・・・。

      仏教の基本である真理、「四聖諦(苦集滅道)」だけでも、きちんと学んでたら、、、悲観的になることはなかっただろうなあ。

      太平洋戦争の学ぶ余裕のない時代だったのも原因の一つだろう。若いお坊さんは戦争に取られたり学徒動員で作業させられたり、それどころじゃなかった…。



      仏教をきちんと学ぶには、今はいい時代だと思う。今のうちだね。
      ありのままの現実(苦)をきちんと受け止め、受け流し、乗り越え、小さな苦を楽に変えながら自分の人生を有意義に明るく生きたいと思います。

      人は苦の中で生きています。苦があるから、苦だから生きているという事実。苦を乗り越えるためには個々の智慧が必要です。人間を含めた生命同士が助け合うこと、慈悲の心が必要です。智慧と慈悲を身につける方法はあるのです。絶望せずに精進しようと思うだけでも、幸福への道を一歩前進したことになるのです。幸福への道を歩く(精進する)のは楽しいものです。

      仏教は明るいのですよ。
      林青年には、お釈迦様の教えを知ってもらいたかったなあ。
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      2018/05/02 by

      金閣炎上」のレビュー


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