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金魚鉢の夏

3.0 3.0 (レビュー2件)
著者: 樋口 有介
定価: 1,836 円
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    「金魚鉢の夏」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      所得格差が広がり、低賃金で働く人の給与が、生活保護の受給額を下回る逆転現象が起こるようになった。
      その結果、生活保護への風当たりが強まっている。
      こうした社会問題を取り入れたミステリが、樋口有介の「金魚鉢の夏」だ。

      生活保護が廃止された、近未来の日本では、生活費を稼げない人は「希望の家」という福祉施設に入る決まりになっていた。

      成績が優秀だったので、「希望の家」出身としては、珍しく高校に進学した由希也が、夏休みを利用して帰省するところからこの物語は始まる。
      由希也は、妹同然の蛍子と再会するが、そこに老婆の転落事故が起きる。

      これが普通のミステリなら、警察か探偵が事件解決に乗り出すのだが、この作品の舞台は、福祉を含むあらゆる予算が削られた社会。
      当然ながら、警察も経費削減を迫られていて、被害者が重要ではない人物の捜査は、民間に委託されている。

      そのため、老婆の転落事件は、元刑事の幸祐と女子大生の孫娘・愛芽のコンビが担当することになる。

      二人の捜査によって、近未来の日本の状況が、少しずつ明らかになっていくのだが、これがかなり凄まじい。

      生活保護の廃止で、低賃金で働く労働者が増え、アジアに進出していた工場が国内に回帰し、日本は空前の好景気にわいていた。

      だが、工場労働者の賃金は低く、持つ者と持たざる者との間で階層の固定化が進んでいた。
      厳罰化と犯罪者への権利縮小で、犯罪が減ったため、多くの国民は、一生低賃金で働き続けるか、衣食住は保証されるが自由に制限がある「希望の家」に入るかの選択を迫られているのだ。

      タイトルの「金魚鉢」は、バケツで金魚を飼っている蛍子のために、由希也が買い与えたものだ。
      狭い空間から出られないが、飢えることのない金魚は、将来に希望が持てず、閉塞感に苦しむ由希也たちに重ねられており、同じような状況にいる若い世代も共感できるのではないだろうか。

      景気も治安も良くなった日本だが、老婆の転落死を追う幸祐と愛芽は、誰も不満を持っていないように見える「希望の家」と、この施設を作り出した社会の矛盾を暴いてしまう。

      ここにあるのは、どれだけ社会が変化しても、人間の欲望と心の闇は、変わらないというドライな認識だ。
      生活保護の縮小、犯罪の厳罰化を求める声が高まっているが、それが実現した先に楽園はあるのか?

      この作品を読むと、日本はどんな未来を選択すべきなのかを考えさせられる。

      >> 続きを読む

      2021/04/05 by

      金魚鉢の夏」のレビュー

    • 評価: 3.0

      福祉施設「希望の家」で老婆が死亡する。それは事故死なのか事件なのか。
      事件の調査を委託され大学生の孫娘と訪れた幸祐。
      孫娘は街の高校から夏休みで規制した少年・由希也やワケありの少女・蛍子と仲良くなり…。

      ◆久しぶりの樋口さん、素敵な装丁もあって青春ミステリかと思ったらちょっと違うものでしたね。
      そもそも舞台は近未来。北朝鮮からのミサイル攻撃の後、大胆に福祉を切り捨て経済大国に返り咲いた日本です。
      生活保護は廃止され、変わりに廃校を利用した「希望の家」という施設になります。
      犯罪者を税金で養うのもおかしいと自給自足の流刑制度。
      警察も事件をランク付けし、重要度の低いものは元警察官などに委託されます。
      暴力団を排除するため認売春制度の復活などなど、この社会制度はなかなか面白いという言葉はちょっと違う気もしますが、もしかしたらありえるのかもしれないと興味と怖さを持つものでありました。
      ミステリとしてはややスッキリしないものの、そんな社会の闇と人の心の闇が描かれています。
      その分いろんな所に話のポイントが分散しているのも、スッキリしなかった理由かもしれません。
      個人的には由希也と蛍子の関係のところをもう少し描いて欲しいかなぁ。
      孫娘を連れてはいるけど幸祐は、なんか樋口さん作品のキャラクターだと実感するものあり。ホント美人に弱いんだから(笑)
      >> 続きを読む

      2014/07/23 by

      金魚鉢の夏」のレビュー

    • > 変わりに廃校を利用した「希望の家」という施設になります。

      母校の中学校は知らぬ間に図書館になっていました... >> 続きを読む

      2014/07/23 by ice

    • iceさん>
      図書館に転用は羨ましいくらいです。
      近くの図書館、もうちょっと広いと嬉しいので。 >> 続きを読む

      2014/07/24 by むつぞー


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