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妻の超然

3.0 3.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 1,470 円
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    「妻の超然」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      <超然>…世俗的な物事にこだわらないさま。(大辞林)

      絲山秋子さんが2009年から2010年にかけて、『新潮』誌に掲載した中編3本が纏められたものです。
      表題作「妻の超然」、「下戸の超然」、「作家の超然」と、すべて<超然>という言葉を使われて書かれた小説です。

      表題作「妻の超然」は、小田原に住む主婦が主人公。
      40代後半の彼女と年下の夫との間は随分前から冷え切った状態で、寝室も別々、どうやら夫には若い愛人もいるようです。
      自分の年齢や、家族のこと、現実をとりまくあれやこれやで離婚せずにおりますが、半ば婚姻関係に投げやりな彼女の心情が淡々と語られます。
      夫のどういう裏切りに対しても、幻滅する様な素振りに対しても、決して心を動かさず、超然とした態度を貫く彼女の心の動きと、行動、友人や両親との交情などが、絲山さんらしい、ドライで切れ味の良い文章で綴られます。

      「下戸の超然」は打って変わって若い男性が主人公。
      郷里の福岡を出て、茨城県のつくばに就職の為に居を移した彼は、まったくの下戸です。
      そんな彼が下戸が故に不条理なこと、下戸が故に差別的な扱いを受けることに傷つき、いつしか慣れてしまった日常が描かれます。
      会社に入ると、学生時代とは違い、そこはやはり大人の集団。
      下戸だからといって不利益を被るようなことは少なくなります。
      今どきの若者らしく緩く繋がる職場の仲間たちとのなかから、彼はひとりの女性をみつけだします。
      彼女は下戸ではありませんでしたが、ふたりは惹かれあい、宝石のような一時期を送ります。
      ですが次第に彼女は、彼に、将来についての答えを求めてくるのでした。
      それも酒の力を利用して。
      そして、彼と彼女の将来を示す線は何となく離れてゆくのでした。

      極め付け「作家の超然」。
      これは絲山さん自身を「おまえ」という二人称で描く淡々とした、散文調の物語。
      作中で絲山さんは、「父性」であったり、「文学」であったり、「作家の実情」であったりに鋭く自説を展開します。
      この作品に関してはレビューでご紹介するのではなく、ぜひご一読していただきたいと思います。
      というか、僕の能力では、この作品は凄いな、と思えても、咀嚼してご紹介することができません。

      本作を読み終えたあと、絲山さんのインタビュー記事に、“100枚”というのがいちばん自分が出る枚数である、と仰られる記事があり、凄く興味深いな、と思いました。
      もっと長ければ自分を隠すこともできる、もっと短ければ自分のいいところだけを出すということもできる。
      100枚という原稿用紙の枚数は、絲山さんの小説のスタイルとしては絶妙の数と言い切っておられます。
      これからも絲山さんの100枚前後の中編には気をつけてチェックしてゆきたいと思いました。

      「作家の超然」で示されたように絲山さんの作品や文学全般へ傾けられる思いや考え方というのは、ひとつ頭が抜けた感があります。
      他の作家さんで、ここまで自分の作家という地位を危うげにされてまで、自説や心中を吐露されていらっしゃる方を、僕は知りません。

      ご自身で「この作品は苦しんだ」と述懐されているのは、ほぼ巻末作「作家の超然」のことでしょう。
      この作品は二度三度と読み返してみたくなる、絲山さんの私小説です。
      >> 続きを読む

      2016/01/11 by

      妻の超然」のレビュー

    • 「無関心」でもなく「悟り」「慣れ」でもない「超然」ということにとても魅力を感じます。

      自分ら発するのでなく、周りから認められる「超然」に憧れます。面白そうですね。
      これもメモです(^^)

      >> 続きを読む

      2016/01/12 by 空耳よ

    • >空耳よさん
      いつも、コメントありがとうございます。
      「孤高」と似ています「超然」。超然を意識して行うのは、すでに超然ではないのかもしれません。周りから、あの人は動じない、という評価を、何気なく受けている人を超然というのでしょうね。 >> 続きを読む

      2016/01/14 by 課長代理


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