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人質の朗読会

3.7 3.7 (レビュー7件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 1,470 円
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第9回 本屋大賞 / 5位

遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた。紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは人質たちと見張り役の犯人、そして...しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。

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    「人質の朗読会」 の読書レビュー (最新順)

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    すべてのレビューとコメントを開く
    • 評価: 5.0


      地球の裏側のある村で日本人のツアーが、反政府ゲリラに襲われ、拉致される。

      3カ月後、8人の人質は全員死亡する。それから2年が過ぎて公開された盗聴テープには、人質たちの声が録音されていた。

      内容はそれぞれが語る自身の物語だ。「自分の中にしまわれている過去、未来がどうあろうと決して損なわれない過去」が語られる。

      この小川洋子の「人質の朗読会」は、もはやこの世にいない人質たちの物語という設定を通して、語った人が消えてもなお手渡されることが可能な物語の力と役割とを伝えるのだ。

      一編ごとに読み進めていく間は、語り手がすでに死んだということを、つい忘れてしまう。
      読み手である私が言葉を読んで受け取る瞬間、語り手はその存在を生き直すからだ。

      整理整頓が何より好きなアパートの大家さんと、製菓会社に勤めるビスケットの製造にたずさわる「私」との微妙な距離感を描く「やまびこビスケット」。
      アルファベットの形をした出来損ないのビスケットをもらって帰り、大家さんと食べる場面が、妙に心に残る。
      寂しさとユーモアのバランスに何度も胸を打たれる。

      次の一編「B談話室」では、公民館の受付の女性にうながされ、その部屋へ足を踏み入れた「僕」は、会員にならないまま、そこで開かれる会にふらりと参加することを繰り返す。

      危機言語を救う友の会や運針倶楽部定例会や、事故で子供を亡くした親たちの会合などだ。

      その経験によって「僕」は、やがて作家になる。つまり、作品を書くことは世界中の「B談話室」へ潜り込むことと同じなのだ。
      「その他大勢の人々にとってはさほど重要でもない事柄が、B談話室ではひととき、この上もなく大事に扱われる」。

      怪我をした鉄工所の工員のために枝を切って杖を作る「杖」。

      突然、台所を借りに来た隣人を描く「コンソメスープ名人」。

      語られる過去や記憶は、時空を超えて共有される。そこに願いと希望を託す方法は、確かに存在する。

      なぜ人は物語るのか。この作品は、その答えをそっと示してくれる。

      >> 続きを読む

      2018/10/20 by

      人質の朗読会」のレビュー

    • 評価: 3.0

      人質という死と隣り合わせの状況で繰り広げられるというのに、各々のお話はどこか安堵してしまう。言葉は生きているのだと強く思わせる小説だった。

      2017/11/19 by

      人質の朗読会」のレビュー

    • 評価: 4.0

      旅先でゲリラに拉致され人質のとなった8人の日本人が、それぞれ忘れられない人生の記憶を紙に物語として書き起こす。僕ら読者は監禁された山小屋の中で粛々と開かれた彼らの朗読会を一話ずつ活字で追体験する。

      物語は、脈略に沿った感動ドラマではなく、どれもありふれた日常で起きた不可解、理不尽な出来事や出会い。それなのにどの作品も深遠な詩情のように心を揺さぶる。生と死が表裏一体の人生を讃える祈りのように厳かで静かな読後感。

      全ての人生に書くべき物語があることを見つめた著者のたわやかな眼ざしに小説家の領域を超えた光明を感じた。本の装丁にもその厳かな光が射し込んでいるように見えてきた。 >> 続きを読む

      2017/05/13 by

      人質の朗読会」のレビュー

    • 評価: 4.0

      何と言っていいのだろう。
      人は、それぞれ物語りの中で生きている、と言うか人が生きていること自体が物語りを紡いでいる。
      そんなことを最近思っているが、その思いを更に強くした。
      何気ない暮らしの中のように見えても、実際は、とても多くのものを含んでいる。
      それを、このような組み立て方で表現されると、二重三重にもそんなことを考えてしまう。
      物事を数に置き換えてしまうことの危うさだと思う。
      それにしても、小川さんの文章には、それ自体に美しさや物語があるように思ってしまう。
      この本自体が朗読会の中の一つの物語のようだ。
      >> 続きを読む

      2015/02/28 by

      人質の朗読会」のレビュー

    • 著者の本は独特な雰囲気があって好きです。
      こちらも気になります♪

      2015/02/28 by coji

    • 評価: 4.0

      bakabonnさんのレビューをきっかけに読んでみました。

      実世界でも、人質事件が残念な結末を迎えてしまったタイミングでしたので、より迫って来るものが有ったように思います。

      遺跡観光で訪れた国で、ゲリラに拉致された挙句、全員が殺されてしまう。
      普通の小説ならネタバレになりそうな出来事ですが、この作品ではそうでは有りません。

      拉致され、隔離されている状態で、彼らは人生で印象に残った思い出を書き留めます。
      それは遺書ではなく、あくまでも日常の思い出。

      全員が書き終えた後、順番にその朗読が始まります。
      追いつめられた環境の中だからこそ、それぞれのストーリーがとても輝いて見えます。

      残酷な話であることは間違いないのですが、不思議と読後感は爽やかでした。
      >> 続きを読む

      2013/01/24 by

      人質の朗読会」のレビュー

    • そんな極限状態で思い出す、人生で印象に残ったできごと・・・

      やっぱりデートじゃないかなぁw >> 続きを読む

      2013/01/24 by makoto

    • そんな状況でも、大きな仕事をキメた時のことを書いちゃいそうな自分が哀れに思えました... >> 続きを読む

      2013/01/24 by ice

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