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アルファベット・ハウス (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: ユッシ・エーズラ・オールスン
定価: 2,160 円
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    「アルファベット・ハウス (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      ユッシ・エーズラ・オールスンのデビュー作。
      「特捜部Q」を読み続けて、やはりデビュー作を読むのは大事かな、きっと面白いだろうと予約していた。手にしてビックリ。レンガ本には負けるが参考文献まで入れて572ページ。面白くなければ読了できない厚さだった。

      第一部

      舞台は1944年、第三帝国を目指して世界を無残な戦争に巻き込んだドイツにも少し翳りが見えはじめている。アメリカ軍の要請でイギリス軍パイロットの二人が複座のマスタングで出撃した。前座にジェイムス、後ろにブライアン。二人は子供時代からの親友だった
      ドイツ上空で撃墜され、二人は傷を負いながら国境線に逃げ込もうとする。
      ここからが第一部のメインストーリーになる。
      かれらがチャンスとばかりに逃げ込んだのは、ナチ親衛隊の精神的な負傷者を満載した列車だった。二人は服を取り替え患者になりすます。収容されたのは、フライブルグ近くの、軍務に復帰できない高官のみを集めて治療する精神病院だった。
      疾患の程度によってアルファベットで区別されていた。彼らが成りすましたのは上級軍人だったが、治療は薬物と電撃で、荒療治のために心身ともに病んでしまっていた。
      中に戦場を避けて仮病を使う成りすましがいた。だが余りの演技に発覚することもなく、病室での二人も同じように心身障害者に成りすます。
      中に特に悪質な三人がいた、彼らはひそかに隠匿した高価な金品を廃線に引き込んだ貨車に隠していた。夜のひそひそ話で、ドイツ語の出来ない二人も感づいてきた。仮病ではないかと疑った三人に拷問に近い暴行を加えられる。前線が近いことを知りブライアンは脱走する。だがジェイムスは過酷な治療と暴行を受けてやんだ精神と肉体は逃げることに耐えられなかった。

      ここまでで、精神病院の過酷で粗雑な治療や、見込みのない患者や、疑わしいと思われた患者が無残に処刑されることを述べる。労働可能と見なせば前線に送り返され、ごみのように処分される。この第一部は心理描写が多く病院の生活、治療法なども事細かに書いている。主人公たちのストーリーを辿るだけなら少し冗長に過ぎるように思えたが、第二部の前段階として読み込んで置いてよかったと感じた。

      第二部

      28年後、イギリスに帰ったブライアンは医師になり薬剤の研究をして製薬会社を興し家庭を持っていた。彼は手を尽くしてジェイムスを探したが、ヨウとして足跡は見出せなかった。
      帰国してブライアンは本名に戻ったが、ジェイムスは入院当時のままになっていた。
      戦後病院を移り、治療と環境のためにますます精神を狂わせ、自己を殆ど無くした日々だった。ただベッドから起きて筋肉を動かす日課で、かろうじて心体の機能を維持をしていた。
      悪徳軍人の三人は豊富な資金で成功し、中の参謀的一人は目立たない資金運用でコレも富を増やし、新しい名前を得て平然と市民生活を送っていた。秘密を聞かれたという理由で三人はジェイムスを手放さず、彼は入院時からのゲルハルト・ポイカートをユダヤ系のエーリッヒに改名させられた。ドイツ名前のままだと戦犯だと見なされるかもしれない。

      ブライアンはミュンヘンオリンピックの医師団として、ドイツに行く決心をする。改名した三人にたどり着くまで。
      入院中にジェイソンに惹かれどこまでも付き添っている当時の看護師のぺトラがいた。夫ブライアンの言動に不審を抱いた妻も訪独。
      縺れに縺れた糸が次第にほぐれてくる。
      生死をかけた戦いにジェイムスの病んだ心が何かを感じ取る。彼は緩慢な体を使って、動き始める


      第二部は人探しの謎解きに似た展開で、罪の重さをいかに暴いていくか、一部より展開が速い。


      そして、巡りあった二人は、その幸運を喜んだだろうか。
      ジェイムスは、助けに来なかったブライアンを待ち続け、ついに独り逃げた彼に憎むべきではないと思いながら憎悪が深まっていたことに気づく。
      ブライアンは、探し続けたことに心残りは無い。幼い頃の思い出の岬にたってドーヴァー海峡を見ながら、もう取り返せない月日と、二人の心のすれ違いを目の当たりにして悲しむ。
      ジェイムスはただ憎むのではない、過酷な月日に蝕まれ、心身ともに廃人に化しそうな毎日を耐え抜いた、ブライアンにであっても素直に喜べただろうか。

      将来がいい萌しをもたらすかもしれない、人為的に陥らされた境遇であれば人の心はすぐには癒えず、心は様々に形を変える、まず生きることがあってこそ、どこからか亀裂を埋めるときが次第に訪れるのかもしれない。
      戦争を書かず友情を書いたと言う作者の言葉が添えられていたが、深い絆で結ばれていると思っていても、人は心ならずも目先の感情に負け、捻じ曲げられ救われることの無い闇に迷うのかと、酷く哀しい思いがした。

      最初は「岩窟王」のような復讐譚かと思った、第一部は長すぎるように思い第2部は少し感傷的、だが書かなくてはならない目標に向かったというデビュー作は、最後まで読んで分かる作者の心の反映が理解できた。描写の長さを差し引けばとてもいい作品だと思う。

      「特捜部Q]の最新作を読もう。
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      2016/06/24 by

      アルファベット・ハウス (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)」のレビュー


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