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猫のゆりかご (ハヤカワ文庫 SF 353)

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: カート・ヴォネガット・ジュニア
カテゴリー: 小説、物語
定価: 777 円
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    「猫のゆりかご (ハヤカワ文庫 SF 353)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      「あなたヴォネガットを読んだことないの?やれやれ、絶対気に入ると思うな。最初の一冊は『猫のゆりかご』をお薦めするわ」(「図書館の魔法」ジョー・ウォルトン より引用)

      ヴォネガットファンからはとても評価の高いSF。
      でも決してハードルは低くはない。少々難解な作風だ。

      なんとも人を食ったストーリーと語り口に、きっとあなたは面食らい、こんな本は読んだことがないと思われるに違いない。
      300ページにも満たない中篇の作品なのに小説の体裁が127の章からなっているのも特徴。

      【ストーリー】
      サン・ロレンゾ共和国という南海の島国にやってきたジョーナは、ボコノン教という宗教を知る。
      それは貧しさから脱出できない民に幸福感を与える方法は幻想しかないとして作られた宗教だった。
      ボコノン教は現大統領“パパ”・モンザーノにより厳しく禁止され弾圧されていたが、実はそれも意図あってのことであった。
      教祖ボコノンは絶対的善を大統領は対して悪を担うという役割分担がなされていたのだ。
      しかし絶対善と絶対悪を一人の人間の内で徹底することは精神的にあまりにも荷重な責務だった。
      絶対権力者の“パパ”の死をきっかけに人類滅亡へのカウント・ダウンが始まる。
      ハニカー博士の発明したアイス・ナインとは?
      3人の独特な子供たちが果たす役割とは?


      この小説の最大の魅力はボコノン教だと思われる。
      教祖ボコノンの教えを著した『ボコノンの書』には魅力的でシニカルな言葉が溢れている。
      例えばそれはこんな文章ではじまっているという。
      「わたしがこれから語ろうとするさまざま真実の事柄は、みんな真っ赤な嘘である」
      嘘を嘘と見抜ける人ならみんなボコノン教徒に改宗したくなるだろう。

      作者自身が本書の巻頭で「本書には真実はいっさいない。」と宣言している。
      それでもあなたはこの本の中に初めて出会う真実を見出すだろう。
      例えば〈カラース〉と〈グランファルーン〉という概念。
      〈カラース〉とは神の御心を行うチームであり、人類はそのようなチームの集合体である。
      自分の人生が誰かの人生とからみあったならその人物は〈カラース〉の一員である。
      しかし〈グランファルーン〉という偽の繋がりの集団のほうが一般に重要で大切だと勘違いしている人が多いものだ。
      それは国家や地方や学校といった括りを共有の価値を持った仲間と考えることをいう。

      つまり我々はいつもありもしないものを追い求め、ありもしないものを見ているつもりになってはいないか?
      『猫、いますか。ゆりかご、ありますか。』
      そうだ。あやとりの「猫のゆりかご」の中に猫はいないのだ。

      そして世界の終わりは突然に訪れる。
      それはなまじ虚構ではない。
      広島に落とされた原爆は世界の終わりを近い将来の現実にしてみせた。
      ヴォネガットは自らの従軍体験で戦争の罪を深く認識している作家だ。

      科学は人を幸せにしうるのか?真実の価値とは何か?
      SF作家である彼があえて科学者の罪を問うたのがこの書だったのではないか?

      様々な人類滅亡が想像されてきたと思うが、こんなアイディアはおそらく誰も思いつかないだろう。

      明るく乾いた笑いを含んだこの小説は、バカバカしくもとても哀しい。


      Cat's Cradle(猫のゆりかご)とはあやとりのこと。
      ですからこの本には猫は特に登場しません。
      猫本ではありませんので、ご注意くださいね。
      >> 続きを読む

      2014/12/22 by

      猫のゆりかご (ハヤカワ文庫 SF 353)」のレビュー

    • >でも、デビュー作で好きになっちゃった一般ピープルがすごく多かったところをみると、読書家の多くはわかっていたわけです。

       そうですね。遅くとも「1973年のピンボール」が出た段階では、既に人気作家でした。この頃、「クイズ・グランプリ」という番組で、「村上春樹の新作は『1973年のピンボール』、では大江健三郎の小説は、『万延元年』のナニ?」というクイズが出たことを印象深く憶えています。芥川賞候補になるような新人作家がそれほど知られていたというのは、他に例がないのではないでしょうか。玄人筋(作家たち)よりも、売る側(出版ジャーナリズム)と買う側(読者層)の評価が先行したということはあるかもしれませんが、いずれにせよ、同世代の作家の中では(中上健次以降の世代では、ということになりますか)村上龍と並んでダントツの人気であり、評価も高かったという印象です。

      >そしてわかる人はヴォネガットをほぼ絶賛しますよね。

       そうなのですが、Jr.がついている時代の作品の評価が圧倒的に高くて、外れた以降の作品がいまひとつ評価されていないように思うのですよね。それが残念で、自分のブログでは「ジェイルバード」を取り上げました。
       だから、月うさぎさんの「ガラパゴスの箱舟」のレビューはとても楽しみです。
      >> 続きを読む

      2014/12/30 by 弁護士K

    • 弁護士Kさんへ
      はい。ではがんばって「ガラパゴス」前倒しでレビュー頑張ってみます。
      私の中で大きすぎる作品なので、上手く表現できるか心配なんですが。
      「ジェイルバード」は後期代表作のひとつのようですね。
      未読なのでそちらもぜひ読んでみたいです。

      村上龍さんこそ衝撃の芥川作家でしたよね。映画化もされたし。
      村上さんといえば普通は龍さんのことで、だから私たち初期のファンは春樹さんと呼んで区別していたわけで。
      私は龍さんの初期の小説はどうも受け付けなかったんですよね…。
      確かに衝撃を受けましたし、書かれている対象はそれまでにないものだったのでしょうが、個人的にはどこがいいのかさっぱりわかりませんでした。
      あまりに違う作風なのにあの二人はおたがいの作品は認めているし、
      仲良しみたいでちょっと不思議だったものです。
      >> 続きを読む

      2014/12/31 by 月うさぎ


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