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重力の使命 (ハヤカワ文庫 SF (602))

5.0 5.0 (レビュー1件)
著者: ハル・クレメント
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    「重力の使命 (ハヤカワ文庫 SF (602))」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0


      SF小説の醍醐味のひとつは、架空の世界を創造することにある。
      夜だけの世界や、雨が降り続く奇妙な世界。
      SF作家たちは、さまざまな架空の世界を創造する。

      スリリングなのは、実はそのあとだ。
      その架空の世界では、人間社会はどうなるのか、文明はどう変貌するのか。
      そういう展開を示すのだ。

      例えば、昼間がなくなり夜だけの世界になったら、風俗、習慣、社会状況は、現在の世界と大いに異なるだろう。
      では、どう異なるのか。そのディテールが展開するのだ。もう、ぞくぞくしてきますね。

      それは架空の世界の絵空事では決してない。
      その奇妙な世界の出来事を通して、今まで見慣れていた私たちの日常の風景が、違った色彩を帯びてくる。

      私たちが、当然と思っていた現実の生活の事柄は、極めて珍しいものであることが浮かび上がってくるのだ。
      SFを読むことの愉しみのひとつは、間違いなくそこにあると思う。

      もちろん、これはSFの醍醐味のひとつにすぎないが、そういうSFの第一人者がハル・クレメントであり、その代表作が「重力の使命」だと思う。

      ハル・クレメントは、ハードSFの第一人者で、いつも緻密な科学的考証をもとに舞台を作ってみせるのだが、この長篇小説で創造した白鳥座61番星の惑星メスクリンは、想像を絶するほど凄い。
      重力が赤道付近で地球の三倍、極地では七百倍という惑星なのだ。

      もちろん、これだけでは舞台を作ったにすぎないが、ここから実に刺激的な物語が始まっていく。
      この星に知的生命体がいるとしたら、それはどんな形態をとるのか?

      大重力の世界であるから、平べったい生物になるのだ。
      メスクリン人の体長は一メートル半。形態は、ムカデそっくり。
      ハル・クレメントは、論理的にそういう宇宙人を創造するんですね。

      物語は、水素の大気にメタンの海を持つ、この惑星メスクリンに観測計器を送り込んだ地球人の依頼を受けて、データを回収するために数万マイルの旅に出るメスクリン人の冒険を描いていく。

      この長篇小説が、刺激に富んでいるのは、メスクリン人の生活、言語、習慣、風俗を克明に描くことで、私たち地球人の姿を逆に、鮮やかに浮かび上がらせることだ。

      例えば、メスクリン人に「投げる」とか「飛ぶ」という言葉はない。
      「投げる」ということが、「それが地面に落ちるまでにある距離を移動するように、体から激しく押し放す動作」を指すものならば、地球の七百倍の重力を持つメスクリンでは不可能だからだ。

      「飛ぶ」も同様で、彼らにはそういう概念すらない。
      言語や概念がこのように、その生物の生きる環境に大きく左右されるというのは、普段、私たちがつい見過ごしていることで、「重力の使命」は、そういう私たちの現実に鋭く迫ってくるんですね。

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      2019/02/15 by

      重力の使命 (ハヤカワ文庫 SF (602))」のレビュー


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