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所有せざる人々

4.0 4.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 1,050 円
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    「所有せざる人々」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      【非常に思想的な大作】
       ウラスという豊かな惑星がありました。
       科学も発達していますし、自然も美しく、人々は概ね裕福です。
       資本主義社会を形成しており、もちろん無産者階級もいますが、とはいえ隷属させられているというわけでもなく。

       このウラスには「月」のような衛星がありました。
       アナレスと呼ばれる、砂漠が多く存在する不毛な惑星です。
       今から170年前、オドーという指導者によって唱えられた「オドー主義」なる思想がウラスを席巻したことがありました。
       この思想は、アナーキズムであり、共産主義でした。
       個人所有は認めず、すべては共有されるべきであり、すべての人間は平等に公益的な労働に就くべきであるという思想です。

       この思想の広がりを持て余したウラス政府は、アナレスをオドー主義者にくれてやることにしたのです。
       オドー主義者は、アナレスに移民して好きに暮らせと。

       この物語の主人公は、アナレスに生まれたオドー主義者の物理学者、シュベックという男性です。
       彼は、アナレスでは抜群の頭脳を誇り、時間に関する全く新たな理論を生み出そうとしていました。
       しかし、アナレスには十分な科学は発達しておらず、この理論を完成させるためにはウラスに行く必要があったのです。

       ウラスには、オドー主義者の残存者がいました。
       彼らから、アナレスへの再度の移住が申請されるのですが、どうやらアナレスに最初に移住したオドー主義者達は年月を経て狭量に、あるいは懐疑的になってしまったようで、この移住申請を拒否します。
       やってくるのが真のオドー主義者だという保障は無いじゃないか、一度受け入れれば、次には軍隊がやってきてアナレスは占拠されてしまうぞ、と。
       しかし、受け入れるべきだ、それこそがオドー主義の精神だと主張する一派も存在しました。
       シュベックも受け入れ賛成派だったのですね。

       そもそも、アナレスはウラスと多少の交易をしているだけで、他に存在する異星人との接触も一切断っているのです。
       シュベックにはそれが正しいこととは思えませんでした。
       そこで、何とか風穴を開けるためにも、アナレスが移住を受け入れないのであれば、アナレスの側からウラスに行くべきではないかと考え始めます。
       ウラスにもシュベックの理論は伝えられており、その成果に驚き、シュベックを是非ともウラスに招きたいという動きもあったのです。
       シュベックは、この招きに応じてウラスに行くことを決意します。

       もし、シュベックの理論が完成したならば、それは瞬間移動を可能にする端緒になると考えられます。
       もし、それが現実の技術となれば、世界は大きく変わります。
       いや、アナレスは、その技術を軍事利用して覇権を確立したいと考えていたのです。

       というわけで、豊かな資本主義社会と、個人所有を否定するアナーキズム社会という二つの社会の間で揺れ動くシュベックらが描かれるのが本作です。
       物語は二つの世界を交互に描いていきます。
       その描き方は時系列に沿って交互に、ではなく、アナレスを描いているパートは、シュベックがウラスに赴くことを決意するまでの物語、ウラスを描いているパートは、シュベックがウラスに来て以降の物語を交互に書いていますので、注意しないとやや混乱するかもしれません。

       SFではありますが、何らかの大きな事件が起きるというわけでもなく、ただ二つの世界、その思想、社会体制が中心に語られていくというちょっと変わったタイプの作品になっています。
       しかし、アーシュラ・K・ル・グィンの最高傑作と評価する人もいますし、ヒューゴ賞、ネビュラ賞のダブル・クラウンに輝いた作品でもあります。
       非常に重厚な味わいがあります。
       時として、SFを読んでいるのではなく、哲学や社会思想の本を読んでいるのではないかという気持ちになることもありました。
       重たい本ですが、一読して損はないと思います。
      >> 続きを読む

      2019/07/15 by

      所有せざる人々」のレビュー


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