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キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)

5.0 5.0 (レビュー2件)
著者: マイク レズニック
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    「キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 評価なし

       このSF小説は「古きよき伝統を守るために、外部との接触は一切断つ」を選ぶ物語。
      それがはたしてユートピアだったのか、と何をどうすればよかったのか、読後、深いものを残しました。

       アフリカのケニアがすっかりヨーロッパ化されてしまった未来。
      キクユ族というかつてのアフリカの民の生活を守るため、小惑星に「キリンヤガ」という村を作り昔通りの生活を望む人々が移住して、外部との接触を断ち、守ろうとする。

       語り手は、キクユ族のムンドゥムグ(祈祷師)、コリバという老人です。
      地球で、アメリカとイギリスで博士号までとったコリバは、自分がキクユ族である誇りを守るべくもう、地球ではかなわない「キクユ族のユートピア」を宇宙に求めました。
      それは太古の時代と全く同じ生活をする、というもの。
      農耕だけによる自給自足、祈りやまじないで身を守る、一夫多妻制。

       ムンドゥムグは、知恵者であり、キクユ族のすべてを握る存在。誰もが敬意を払い、畏怖の念を持つ存在。
      そのためには、なんとしても「地球の二の舞」をさせないよう、外の文化を村の民に知られないよう・・・心砕き、苦悩し、時には、民に憎まれ、うとまれながらも、祈祷師であり、伝統の語り手であり、指導者である、ムンドゥムグの存在は必要でした。

       前半は、頑ななまでに、キクユ族の伝統を守るコリバ・・・ですが、後半は、だんだん、そのコリバが望む「ユートピア」の崩壊を描いています。
      移住当初、同じ志だった者たちと世代が変わると、結局、地球で起きたヨーロッパ化にならざるをえない。それを、どうしても止めることができなかったコリバの失望。

       お互いの文化の良いところだけ、取り入れよう・・・なんていうのは、甘い考え。
      コリバは、老人の知恵と経験で、それを知っていますが、若い世代は、「自分に都合のいいことだけに目がいってしまう」

       ムンドゥムグというのは、男性だけがなれるもので、後継者として賢い少年を選びますが、賢いだけに、コリバの持つ信念にいち早く、矛盾を見つけてしまう。
      確かに、学問をしたいという少女の願いは打ち砕かれ、最新の医学や機械で効率を求める人びとの気持、「守るためには、排他する」という選択の数々・・・は、コリバは確信していますが、たくさんの問題を抱えている・・・それが、「ユートピア」
      ムンドゥムグはやりすぎかもしれない。作者は、十分それをわかった上で、さらに読者に問いかけます。

      「ユートピアとは、何か」を。
      >> 続きを読む

      2018/05/30 by

      キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)」のレビュー

    • 評価: 5.0

       読者に問いかけ、深い余韻を残す”物語”。

       まずはあらすじ。

       小惑星キリンヤガ。そこは消えゆくアフリカ部族・キクユ族の伝統を守る楽園として作られた。大自然に身をおき、先祖代々の慣習にそった生活を営みたい者は、だれでも受け入れられる。逆に、そこから出て行きたい者は、だれでも自由に出て行くことができる。村の祈祷師であるコリバは、キクユ族のユートピアを守ろうと、今日も孤独な闘いを続けるのだった……。

       素晴らしい一冊でした! なにが素晴らしいって、だれが読んでも何か心に残るものがある、物語としての普遍性があるのです。本作はSFとして大変多くの賞を受賞していますが、SFではなく純粋な物語として多くの人におすすめできる一冊だと思います。

       本作の主人公は、都会化の波にさらされ、小惑星に移住して故郷の暮らしを取り戻そうとします。しかし、本作のテーマは単純な文明化批判にとどまりません。もちろん、「効率や便利さといった文明化が本当に『良い』ことだけをもたらすのか?」という問いかけもあります。しかし同時に、「古き良き生活が本当に『良き』ものなのか?」という問いかけもあるのです。

       本作で描かれる未開社会と文明社会は、まるでコインの表と裏のようで、どちらかを選択しなければならず、一度選択すると裏返ることは難しいように思えます。そして、二つを両立させることはコインを立てるよりも難しいのです。

       頑なに伝統を守ろうと奮闘するコリバというキャラクターが面白さを引き出しています。以下は文明化を喜ぶ息子・エドワードとコリバの会話です。

      エド「目が覚めたときにひと握りの動物が草をはんでいる姿を見たいからって、ケニアに背を向けてどこかのテラフォーム小惑星で暮らすなんて」
      コリバ「わしがケニアに背を向けたのではないぞ、エドワード。ケニアがわれわれに背を向けたのだ」
      エド「それはちがいます。大統領もほとんどの閣僚もキクユ族です。知っているでしょう」
      コリバ「彼らは自分たちがキクユ族だと称している。だが、それでキクユ族になれるわけではない」
      エド「彼らはキクユ族ですよ!」
      コリバ「キクユ族はヨーロッパ人のつくった都市に住むことはない。ヨーロッパ人の服を着ることもない。ヨーロッパ人の神を崇拝することもない。そして、ヨーロッパ人の機械を運転することもない」(p.15)

       しかし、これだけハッキリと言い切るコリバは、ヨーロッパの大学で博士号を取った文明社会のエリートなのです。文明から逃れるために文明の力で造り上げられた「キリンヤガ」は、その始まりから矛盾を抱えています。そしてコリバ自身、どこか矛盾を抱えた存在なのです。彼は様々なトラブルに挑み、敗れ続けます。その姿はまるで人類の進歩自体にあらがっているようで、一つのエピソード毎に心を動かされずにはいられません。

       あさはかなゾウの話、愚かなライオンの話、シマウマの王の話……。コリバは村人を諭すために様々な寓話を語りますが、本作自体が一つの壮大な寓話なのかもしれません。
      ”孤独な祈祷師の話をしてあげよう。あるところに村の伝統を守ろうとする祈祷師がいた……”
      >> 続きを読む

      2017/02/20 by

      キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)」のレビュー

    • >アテナイエさん
      実は、この著者の作品を読むのは初めてでして、あまり詳しくはお答えできません……。でも、本作が大変いい感じであることは保証します♫

      あとがき等を見ると、ご指摘の通り、著者は伝承や寓話に興味があり、アフリカについても知識があるようです。くくりはSF作家ということですが、本作はあげられているキーワード通りの作品です。

      >この著者のものをはじめて読むとすると
      他作は未読ですが、本作で間違いないかと思います! 
      数多くのSF賞を受賞していて、もともと有名だった著者がさらに一段階殻を破り、著者の地位を不動のものにした作品とのことです。
      オムニバス形式なので手に取りやすいこともオススメです。

      なにより、読んでみて本当に面白かったです♩
      >> 続きを読む

      2017/02/24 by あさ・くら

    • いろいろ教えていただき、ありがとうございました! 
      大変興味深くて面白そうです。ぜひ読んでみようと思います。
      >> 続きを読む

      2017/02/24 by アテナイエ


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