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ラギッド・ガール

廃園の天使 2
4.7 4.7 (レビュー2件)
著者:
カテゴリー: 小説、物語
定価: 882 円
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    「ラギッド・ガール」 の読書レビュー (最新順)

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    すべてのレビューとコメントを開く
    • 評価: 5.0

      【稠密な世界が描き出される】
       『廃園の天使』シリーズの第2巻です。
       第1巻の『グラン・ヴァカンス』はお読み頂けましたでしょうか?(読んで絶対に損はありませんので読んでみて下さい!)
       『グラン・ヴァカンス』では、仮想空間にあるリゾート地、『数値海岸』の一つ、『夏の区界』がランゴーニというAIの猛烈な攻撃を受け、それを防御しようとする『夏の区界』の住人AIとの12時間にわたる熾烈な戦いが描かれました。

       まずは、『グラン・ヴァカンス』をお読み頂きたいのですが、読んで頂くと……
      「そもそもこの『数値海岸』というのはどういう仕組みになっているんだろう?」
      「誰がどうやって作ったのだろう?」
      「ゲストを迎えるリゾートとして作られたというのに、『大途絶』により誰もゲストが訪れなくなったというけれど、それは何故?」
       「ゲストが誰も訪れなくなった仮想空間ならばとっくに放棄されていてしかるべきなのに、何故未だに維持パワーがシャットダウンされないのだろう?」
       「そもそも、『夏の区界』を攻撃したランゴーニって誰?」
      などなどの多くの疑問が残ったと思います。
       本書は、それらの疑問や謎を解き明かす中編集になっているのです。

      ○ 夏の硝視体
       『硝視体』というのは、『大途絶』後に、『夏の区界』に現れた不思議な力を持つ石のようなものです。
       それは、個々に違う能力を秘めており、本来区界内で生活しているAIは、区界自体に干渉することはできないのですが、それを可能にする能力を秘めています。
       『夏の区界』のAI達の中には、この『硝視体』の力を駆使できる技を持った者が現れるようになりました。
       17歳の少女、ジュリーもその一人。
       本作では、ジュリーがその能力を発揮するようになったいきさつと、ジュリーと『永遠の約束』をすることになったジョゼとのことが描かれます。

      ○ ラギッド・ガール
       そもそも、『数値海岸』というリゾートが誰によってどのようにして作られたのかが明かされる一作。
       もう、すっごいんですよ、その発想が。
       確かに、言いたいことは分からなくはない。
       なるほど、と、思ってしまった一作。
       『数値海岸』が生まれるに当たり大きな役割を果たした阿形渓(アガタ・ケイ)という『とても醜い』女性が登場します。

      ○ クローゼット
       『大途絶』が起こった後の、人間界(実存する我々の世界)を描いた一作。
       そう、『数値海岸』は、我々人間が、仮装のリゾートとして作り上げたわけです。
       それが『大途絶』によって休止されてしまうのですが(だから、『数値海岸』側からすると、誰もゲストが訪れなくなったのですね)、その後の私たち人間はどうなっていったのかというお話。

      ○ 魔述師
       『数値海岸』側の区界の一つである『ズムーナカ』と、人間界の両方から交互に語られる物語。
       『数値海岸』には数多くの区界が設定されており、基本的にはそれぞれの区界は独立しています。
       ですが、区界間を往還できる存在がありました。
       それが『鯨』です。
       ですが、『鯨』を維持するためにはもの凄い演算資源を必要とします。
       『鯨』を保有できる区界は、それだけで一つのステータスなんですね。
       ですが、そんな『鯨』を製造したり、保守管理するためにはさらに莫大な演算資源が必要であり、そんな資源を有している区界は、『ズムーナカ』ただ一つだけでした。
       ここでは、『鯨』を保守管理しているAI達と、それを見学に来ている少年ゲスト達が描かれます。
       他方の人間界の方では、何故『大途絶』が起きたのか、その根本が語られます。
       『数値海岸』に住むAI達が虐げられているとして、その解放を叫ぶ女性。
       AIの人権って何だ?
       気が遠くなるような話だ~。

      ○ 蜘蛛(ちちゆう)の王
       『グラン・ヴァカンス』で『夏の区界』を攻撃したランゴーニの正体が明かされる一編。
       ランゴーニも一つの区界に住む一人のAIだったのです。
       その区界とは、『汎用樹』と呼ばれる大木が世界中をくまなく覆っているような、樹木の世界でした。
       しかし、その区界も『非の鳥』の攻撃を受け、また、変容されたAI(それは子供を孕むのです!)により荒廃の危機に瀕していたのです。

       本作により、第一作では明かされなかった数多くの秘密や謎が明らかになります。
       しかし! まだ謎は残されています。
       飛さん、この後も書いてくれるのでしょうか?(いや、既に書いているのか?)
       私が探した限りでは、まとまった形として刊行されている飛さんの著作は、『象られた力』と、この『廃園の天使』シリーズの2冊だけのようです(あまりにもすごかったので、全て購入ボタンを押してしまいましたよ)。
       どうか、是非、さらに書き続けていただきたいものです。
       飛さんが描き出す、圧倒的イメージと目眩がするような稠密な世界をさらに堪能したいと心から願いますし、『廃園の天使』シリーズもまだまだ書かなければならないことがあるはずです。
       お願いします!
      >> 続きを読む

      2019/05/23 by

      ラギッド・ガール」のレビュー

    • 評価: 5.0

       前作『グランヴァカンス』の謎を補完する物語。

       前作の舞台・夏の区画の穏やかな時間を描いた「夏のグラス・アイ」
       仮想世界・数値海岸の誕生秘話「ラギッド・ガール」
       数値海岸運営後の世界を描いた「クローゼット」
       数値海岸へ人間の訪問が途絶えた真相「魔術師」
       前作の敵・ランゴーニ誕生秘話「蜘蛛の王」

       以上5編。2006年の『SFが読みたい!』年間1位。

       現実に右クリックを利かせたい。
       作中で仮想現実を作り出した研究者はこう言います。発想がシャープです。

       物語は非常にハードで、予想を裏切ってくるドギツイ展開。「これこれ、これがこの作品の面白い所」と思った矢先、登場人物の一人が、昔読んだ本についてこんなことを言いました。

      「私が殺したんだ、と気づいたの。私が本を読んで……読み進めることでミランダは死んだんだ、って。〜」
      「私が本をひらくまでは、ミランダは紙に印刷されたただの活字。そのままにしておけば彼女は死ぬこともなかったわ。うかつにも私が読んだりしたばっかりに、彼女は”生きた”」
      「ばかみたい? でも私は気づいてしまったの。小説の酷い場面に眉をひそめている私たちこそが、本当の実行犯なのよ」(p,87)

       このタイミングでそんなこと言う? とね。この台詞を吐いた「彼女」の感覚は少し狂っていますが、同意せざるを得ません。こうして私の感覚は少しずつ狂わされていきます。

       数値海岸という仮想世界は、言ってしまえばソーシャルゲームの物凄い版です。思いつく限りのあんなことやこんなことができる、あらゆる設定の世界に、自分のコピーを送り込み、後で記憶をロードできる……そんな世界観が緻密に描かれています。

       読んでいると、無意識に現実の人間とそのコピーを比べ、そこに差がないという結論を勝手に出してしまいます。そして、主が死亡してしまったコピーと主がいるコピーにも差はない、主のいないコピーとAIにも差がない、と比べていき、いつのまにか、人間とAIに大きな差を感じなくなるのです。上手いなぁ、という感じです。

       どれほど禁欲的になっても、人は、数値海岸に欲望を映し出されてしまう。
       それを否定する必要はないだろう。
       数値海岸に限ったことではない。
       いつも、いつまでも、たえまなく欲望を発し、その鏡像を見ること。見つづけること。それが「生」の別の名なのだから。(p.331)

       この文句は、まさにシリーズの主題を含んでいると思います。私自身、すでに数値海岸の面白さに魅せられてしまっています。3部作の最終巻は長らく出ていないようですが、読みたい欲がもう抑えられません。
      >> 続きを読む

      2015/05/13 by

      ラギッド・ガール」のレビュー

    • >737さん
      コメントありがとうございます!
      私は読んだときに思わずギクリとなりました。今まさに”生かしてしまっている”よ、と言う具合に。
      作中では、少し狂気じみた登場人物の台詞なので、実際のところ「ばかみたい」な発想なのですが、読者をその気にさせる上手さが凄いです。
      >> 続きを読む

      2015/05/14 by あさ・くら

    • ヴァ、ヴァイオレンスなんですか・・!
      そうなんですね。だったら期待大ですね!

      そうなんですね。了解です!

      まじすか!?そ、それは観たい!!
      おお・・、ド深夜の18禁・・いや、あさ・くらさんがそこまで仰るなら大ヒットまちがいなしですよ!!アニメ部も着々と活動していますね♪
      >> 続きを読む

      2015/05/15 by 澄美空


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