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一人だけの軍隊 ランボー (ハヤカワ文庫)

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: デイヴィッド・マレル
定価: 907 円
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    「一人だけの軍隊 ランボー (ハヤカワ文庫)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      デイヴィッド・マレルの「一人だけの軍隊」は、シルヴェスター・スタローン主演で大ヒットした映画「ランボー」の原作として有名な作品ですが、アメリカの田舎町を舞台に、放浪中の若者と、彼を追い出そうとする町の保安官が衝突し、凄絶な山狩りにエスカレートしていくさまを描いた小説なのです。

      映画化作品の「ランボー」は、原作をそのままなぞっただけで、もちろん、小説と映画とは全く別物だという事を承知の上で言えば、出来は小説の方が遥かに良かったと思います。

      いや、正直に言えば、抜群に面白かった映画「ランボー」より、小説「一人だけの軍隊」の方がもっと良かったという言い方が正しいのかも知れませんが。

      山に逃げ込んだ若者が途端に生き生きと甦り、様々なゲリラ戦のテクニックを駆使して闘うディテールが、圧倒的な迫力で描かれているのです。

      この小説が優れているのは、主人公のランボーの設定にあると思うのです。ランボーはナイフと知恵と体力のみで数十倍の敵を一人づつ倒していくのですが、彼はただの兵士ではないのです。

      ヴェトナムで特殊訓練を受けたグリーンベレーの最も優れた兵士だったのです。だから、山中でのゲリラ戦ならお手のもので、食糧も与えられず、ナイフ一つでジャングルの中に放り出され、数週間生き延びる----、そんな訓練を経て作り出された戦闘マシーンだったのです。

      この設定が「一人だけの軍隊」という小説のミソだと思うのです。つまり、見せかけだけの平和の中で、死んだようになって生きているランボーは、追われる事によって、その闘争本能を甦らせていきます。この血の噴出が我々を興奮させてくれるのです。

      しかし、戦闘マシーンといっても、そこにひとかけらの感情もないならば、単なる絵に描いたスーパーマン物語にすぎません。ランボーはゲリラ・テクニック、サバイバル・テクニックを駆使して闘い、生き延びながらも、実はこの点が非常に重要なのですが、"恐怖を常に引きずっている"という事なのです。

      この小説が冒険アクション的な衣装を身にまといながらも、人間というものの本質をシビアに描いた小説であると思うのは、ランボーの元上司のトラウトマン大尉のセリフに集約されていて、町の警察ではどうする事も出来ず、遂には軍隊まで山狩りに動員される程のランボーの闘いぶりに、保安官が、トラウトマン大尉に、一体どんな事をあなたは教えたのかと尋ねると、大尉はこう答えるのです。「ただ生き延びる方法を教えただけです」と----。

      ここから、この「一人だけの軍隊」が、一種のサバイバル小説である事も見えてくるのですが、つまりランボーが闘っているのは、表面上は警察であり、軍隊であっても、実は、"弱音を吐き、音をあげようとする、脆くて弱い自分自身"なのです。

      この"闘うべきは脆くて弱い自分自身"だというテーマが、この小説の底にしっかりと流れているからこそ、私はこの小説に魅せられてしまったのかも知れません。

      この小説の冒頭部が、ヴェトナムから還ったものの、アメリカ社会に容易に溶け込めず、更に精神を病んで入院していた病院から退院したばかりという設定である事を考えれば、ランボーの"苦悩も鬱屈"も理解出来るのです。

      この小説は、いわば、ヴェトナム戦争の後遺症ともいうべき、"アメリカの悲劇"を描いた小説でもあると思うのです。
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      2016/10/03 by

      一人だけの軍隊 ランボー (ハヤカワ文庫)」のレビュー


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