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影なき狙撃者 (ハヤカワ文庫NV)

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: リチャード コンドン
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    「影なき狙撃者 (ハヤカワ文庫NV)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0


      私の大好きな映画監督のひとりであるジョン・フランケンハイマー監督の「影なき狙撃者」を観たら、そのあまりの面白さに魅了され、無性に原作の小説も読みたくなり、これまた一気呵成に読了しました。

      このリチャード・コンドンの「影なき狙撃者」は、洗脳の影響を扱った作品としては、実に異色作でポリティカル・サスペンスとして、かなり先駆的な作品だと思います。

      戦争で捕虜となった兵士が、複雑なメカニズムの洗脳を施されてアメリカに戻ってくる。スパイ小説ではお馴染みのスリーパー・エージェントに近い存在なんですね。

      彼の脳にセットされた謀略を軸にストーリーは展開していきます。脳に施されたのは、正確には、後催眠だ。組み込まれた暗号が、ある配列を取ると、一定の指令として伝わるのです。しかし、敢えて著者は、洗脳も催眠術も意識的に混同させて使っているように思えるのです。

      それだけなら、単なる怪しげな謀略小説として終わったところですが、この作品の凄いところは、戦後のアメリカでの赤狩りとして有名なマッカーシズムについて、大胆な解釈を試みたところにあるのだと思います。

      この赤狩りは、しばしばジョゼフ・マッカーシー上院議員の個性に引き付けて語られ過ぎているように思います。この小説では、彼をモデルにした人物を登場させて、そこに二点のフィクションを加えているんですね。

      一点目は、彼を大統領候補に仕立てたこと。二点目は、この大統領候補の妻に隠れたコントローラーの役割を振ったことです。彼女は、いわばアメリカの"ビッグ・ママ"なんですね。つまり、彼は妻の意のままに操られていた存在だというわけです。

      このマッカーシー的人物の方が、"操られた人形"だったとする解釈は、実にスリリングだ。マッカーシー上院議員が赤狩りの際に用いたデマゴギーの低俗さや、彼の個人的な性向の破廉恥さは歴史的に証明済みです。

      現実のマッカーシー上院議員は、悪名を残した道化役だが、小説中の大統領候補も道化そのものなのです。

      そして、大統領候補が暗殺のターゲットだと明らかになることによって、この小説は別の深みを与えられたと思うのです。つまり、兵士も大統領候補も、ともにビッグ・ママの支配下にあることは間違いないのです。

      もしかすると、兵士が敵の洗脳にあっさりとやられたのは、マザコンという決定的な弱みを抱えていたからではないのか? いや、本当にそうだと思えるんですね。

      ところが、標的になった大統領候補は、もともと妻に操られるだけの実体のない人物だったのです。兵士は、もし仮に洗脳から自由になったとしても、信心深いアメリカン・マザーからは自由になれないのかも知れません。


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      2018/02/05 by

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