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興奮

5.0 5.0 (レビュー3件)
著者: ディック・フランシス
カテゴリー: 小説、物語
定価: 903 円
いいね! Tsukiusagi Tukiwami

    「興奮」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      「いい男」を知りたければフランシスを読めばいい。
      私が知っている限り、最高にかっこいい男はこの小説の主人公。ダニエル・ロークです。
      彼に逢いたくて何度この小説を読んだことか。(笑)
      ディック・フランシスの小説のヒーローはどれも実に魅力的なのですが、こと「格好よさ」に限れば本作「興奮」が最高だと信じます。

      『オクトーバー伯爵が初めて私の前に現れたときは、うすいブルーの古びたホールデンに乗っていた。危険と死がひそかに便乗していた』

      主人公のダニエル・ロークは若干27歳にしてオーストラリアの生産牧場の牧場主。
      両親が事故で亡くなり、幼い弟妹を育てるために学業をあきらめ、仕事と子育てに身を捧げ牧場経営を成功させた彼の元に、ある日英国から紳士が訪ねてきます。
      英国の競馬界に起きている不可解なドーピング事件を解明するため、潜入捜査に協力してほしいと…。
      自分の関与する問題ではないし、仕事も家族もある。

      『常識の告げるところでは、アイディア自体が狂気の沙汰であり、オクトーバー伯爵は無責任な精神異常者で、自分が世界中を遊び歩いている間家族を放置することは許されず、唯一の途は現在の生活を守って満足を覚えるようになることだ、と言う。
       常識が負けた。』

      しびれます!第一章の終わりの一文がこれ。
      まさにこの文体がフランシスなんですね~。
      この文章で心を持っていかれない人がいたとしたら、ハードボイルド小説は読むだけ無駄。
      私小説でもエッセイでもラノベでも読んでいてください。

      彼がなぜ危険で心身ともに厳しく辛い仕事に手をだしたのか。
      それは「冒険」がしたかったから。
      努力して築いた安定した仕事と収入。名誉と家族との愛。
      でも彼はまだ20代なのです。
      親の役目から解放され本来の自分の性格に立ち戻って生きてみたい。
      そんな彼の「自己再生」がこの小説では描かれていくのです。

      任務に伴う苦しい状況に耐え、危機を乗り越え、ついには最悪のどん底に落ち込み、そこからまた自分を奮い立たせて立ち上がり自分を決して諦めない。
      決して鉄人ではない。格闘のプロでもない。
      素人スパイの物語なのがまた、一層ハラハラなんですよ。

      サディストの悪役の所業がまたひどいのなんの。
      美女も絡んできますが、彼の紳士ぶりがまた最高に男前

      ダン(ダニエル)は年齢よりも若く見える好男子なんですが、
      女性からはセクシーに、男性からはワイルドで危険な感じに見せることができる「役者」なんですよ~。

      「天使のような手綱さばき」と乗馬スタイルを評され、悪人として潜入するためには乗馬法を変えなければならないと指摘されると、誇りを傷つけるように思えるとか。甘いことをいうところがまたカワイイ♡のです。
      フランシスは文体は武骨ですし、物語もゴツイ、しかも暴力的で痛い話が多いのですが、主人公の心理描写が実に繊細で人間的なのです。
      直接、哀しいとか怒るとかの激情を表す言葉を用いるのではなく、遠回しで抑制のきいた表現を使うことがとても多いです。

      「競馬ミステリー」というシリーズになっていますが、むしろフランシスは「ヒーロー・シリーズ」だと思います。
      どの小説も実に素敵な男たちがでてきます。
      いずれも克己心に富むストイックで誠実な主人公。
      そんな共通点があるので、フランシスの小説はどれも一緒という悪口もありますが、そんなことはないですよ。
      冒険もの、競馬、ハードボイルドと、男性読者が圧倒的に多いジャンルではあるでしょうが、
      主人公のステキさを考えれば、女性ファンが夢中になってもおかしくない。
      私も20代から30代のころにド・ハマりしていました。
      翻訳が出るのが待ち遠しくて原書を読もうとしたくらいです。

      特に本書はフランシスの初期の大傑作
      最もキャッチーな小説です。入門の一冊に最適かと。

      1965年の作品 デビュー3作目にして 英国推理作家協会のシルヴァー・ダガー賞受賞作品
      日本では本作が最初に翻訳されフランシスのシリーズ第1弾として出版されました。

      名作は古びません!

      展開もエンディングも予想を超えた意外性充分。
      ああ、彼の物語の続きが読みたい…と思うはず。
      (続きはありません)
      これを読んで他の作品に手を伸ばさないなんてこと、できるわけがない。

      「興奮」は見どころてんこ盛り大サービスな作品です。
      これを読まずしてどうする?!という月うさぎイチオシの冒険小説です。
      ぜひぜひ手に取って読んでみてください!
      >> 続きを読む

      2019/03/30 by

      興奮」のレビュー

    • 評価: 5.0

      ディック・フランシスの"競馬シリーズ"は、どれをとっても素晴らしい作品ばかりだ。読後感の清々しさと共にえもいわれぬほどの至福感に包まれてしまいます。

      「ホームストレッチにさしかかったとき、その競走馬は気がくるったようにスピードをあげた。口から泡をふき、目の球は飛び出さんばかり。馬体には流れるような汗が浮かんでいる。レースはその穴馬の勝利に終わった。----全英障害競馬会の理事たちが薬物投与を疑ったのは当然だった。ところが、分析試験の結果はマイナスだった。ちかごろそんなレースがたび重なっている。「女王のスポーツ」である競馬に寄せる大衆の信頼は地に堕ちそうだった。厩舎の保安規則が引きしめられ、唾液と尿の定期検査が厳重に実行された。興奮剤を探知するために、レース後、先着四頭を検査し、ひどい負け方をした本命馬も検査した。それでも不正レースの証拠は何ひとつあがらず、不正レースはあとをたたなかった。」

      競馬騎手出身のディック・フランシスが、日本で最も早く紹介され、マニアの中でNo.1との評価が高い「興奮」で描かれた完全犯罪の様相がこれです。

      オーストラリアで種馬牧場を経営していた、我らがヒーロー、ダニエル・ロークは、イギリスからやって来たオクトーバー伯爵のたっての願いに根負けして、この件の捜査を引き受けます。先に事件を調査していた新聞記者が、みせかけの自動車事故で殺されていることも承知のうえでした。

      18歳の時、両親をヨット事故で失って以来、妹二人を育ててきたロークは、調査料二万ポンドと"刺激"のため(この作品の原題は"FOR KICS")、イギリスに飛び、馬丁に身を変えて捜査を開始することになります。

      目指す厩舎へ潜入するためにロークは、腕は確かだがヤクザな馬丁で、八百長レースの細工もしかねない男だという印象を馬丁仲間に与えて、敵の接近するのを待つのです。やがて----。

      騎手生活の間に、ディック・フランシスは、肋骨の骨折は別にして、21回も大きな骨折をしたそうです。そのうち、鎖骨は11回、鼻骨は5回を数えるといいます。

      そんなベテラン騎手だったフランシスが競馬界の生活を描く時、どれだけ生き生きとしてくるかは、競馬にあまり興味のない私でも、読まないうちから想像出来るというものです。

      馬丁たちのボスに対する敬語の使い方、馬に寄せる愛情、騎手と馬丁の乗馬法の差、調教師と馬主たちとの身分の差などが、ほんのわずかな描写によって、くっきりと鮮やかに浮かびあがってくるのです。

      そして、八百長レースの仕組み方、その発見方法なども、実に堂にいっています。薬物注射なら、注射した箇所の毛が立っているという指摘など、なるほどなと感心させられます。この作品で扱われているトリックの数々は、恐らく過去のレースで実際に使用されたトリックであっただろうという事が推察できます。

      とにかく、フランシスの"競馬シリーズ"には、イギリスの冒険小説の要素が色濃く表れていて、一種の"男の青春小説"といった趣があると思うのです。

      この作品でも、主人公のダニエル・ロークが馬丁として英国競馬界に姿を変えて潜り込み、大穴頻出の不正を暴くという、まさに男から見ても惚れ惚れするくらいのカッコいいヒーローなんです。

      この作品の中でロークを描いた描写で好きな箇所。

      「きみは腹がたつくらい自立心の強い男だが、馬丁に身を落とす気持ちによくなれたものだ。金のためにやったのではないと言うのなら、いったいなんのためにひきうけたのだ?」----私はかすかにほほえんだ。自分の返事がわれながらおかしかった。「スリルのためですよ」
      -----------------------------------------------------
      「(安定した生活の)どこが気にいらないのだ」「自分で満足すべき仕事をしているのに、結果は退屈なのです。」「丈夫な歯があるのに、牛乳や蜂蜜で暮らすようなものだな」----私は笑った。「塩がなめたいのかもしれませんね」

      自分のルールを守りぬいて、どんなに痛めつけられても、泣き言を言わず、他人に対するやさしさを失わず、自分の傷を他人に見せないというハードボイルドの精神を持ったカッコいいヒーロー、ダニエル・ローク。

      人間としての誇り、ストイシズム、誠実さを持つ男、ダニエル・ローク。彼はまさに私の中の永遠のヒーローなのだ。

      >> 続きを読む

      2016/11/25 by

      興奮」のレビュー


    • ディック・フランシスの「興奮」を2度読みされたのですね。
      このフランシスの競馬シリーズの魅力は、何と言っても、それぞれの主人公たちの、心の傷を内に秘めながらも、人生と真正面から真摯に向き合い、誠実に直視する、清潔で、ストイックな姿勢、生き方にあると常々思っています。

      フランシスが造形したそれぞれの主人公像は、心に弱さを抱えながらも、それをじっと押し殺して、表面上はタフで強い意志と正義感、禁欲的である意味、頑固、そして豊かな感受性、鋭い洞察力、死を賭して徹底的に戦うが、普段は物静かでジェントリー-----。

      そして、一人称、一視点で語られる抑制された知的な文章、機知に富んだ会話などで、謎解きがあり、陰謀があり、主人公の心理と行動の両方を描き、極上のハードボイルド小説であり、冒険小説になっていると思います。

      実は私のこのシリーズの三大ヒーローは、一人目が「興奮」のダニエル・ローク。
      その魅力は私の「興奮」のレビューに書いている通りです。

      二人目が「大穴」「利腕」のシッド・ハレー。
      彼は、左手が不自由というハンデを持ちながら、驚異的な自制心と不屈の精神の持ち主だというところに魅かれ、作品の核に、"男の誇りと勇気とストイシズム"があるのが実にいいんですね。

      そして三人目が、これはちょっとびっくりしたんですが、実は私も月うさぎさんと同じく「血統」のジーン・ホーキンスなのです。

      38歳。独身。英国諜報部員。非常に沈着冷静で有能だが、憂鬱症に悩まされているという人間的な弱さを抱えている男です。
      感情をあらわにしないが、ユーモアのセンスがあって理知的。過去に苦い恋愛経験がある。

      そんな、ジーン・ホーキンスは、英国のプロの優秀な諜報部員で、いつも枕の下に拳銃のルーガーを忍ばせている。
      とても魅力的な男なのだが、長年の死と背中合わせの生活のため、一種の鬱病に取り憑かれているんですね。

      それは、かつて激しく愛した人妻のキャロラインとの別れのせいでもあり、厳しい仕事の合間に、ふとやり切れないほどの"虚無感と不安"が襲って来るんですね。

      こうした、ジーン・ホーキンスの生き方は、超ゴージャスなホテルで世界の美女と美食に囲まれる007ことジェームズ・ボンドの快楽主義的な生き方などとは全く正反対のリアルで等身大の人間であるという姿に共感を覚えます。

      そして、このジーン・ホーキンスは、楽しい時は、人は人生とは何かということを考えたりしない。
      苦しい時、孤独な時、不安な時、人生とは何かを問い掛けるという人間なんですね。

      哲学者のハイデガー流に言えば、そういう問い掛けをせずに日常性の中に埋没してしまうのが、ただの人ということかもしれません。
      そういう意味からも自分には到底できない、そんな思考の持ち主のジーン・ホーキンスに魅かれるのかもしれません。

      「血統」におけるジーン・ホーキンスは、その意味でただの人ではなく、常に人生の意味を問い掛け続ける男なんですね。

      >> 続きを読む

      2019/03/30 by dreamer

    • すごいすごいすごい、すごいですっ!!!
      dreamerさん、わかってらっしゃる。100%私も同意見ですよ。
      フランシスのよさ、主人公の魅力、小説としての価値、ハードボイルドの定義
      全部全部同感です。嬉しい~~♪
      ジーンで「血統」とわかるだけでもすごいのに、「この3人」に彼が入るとは
      正直男性にこのキャラクターのよさがわかるかな?って思っていました。
      私を叱ってください。
      シッドは一番人気でしょう。大人だし、もっとも痛い思いをしているのが彼。
      ジーンはちょっとウジウジしていると思いませんか?
      私ったらこんな男が好きだったのかしら?と、この歳になって堂々と言っていいものかと思ってしまうくらいな主人公ですよね。
      でも、この陰影の深さ人物への共感がとてもうまくいっている小説で。
      ああ、これも近いうち読み直します!
      dreamerさん、またお話ししましょうね!
      ジーンの話、お付き合いください。
      >> 続きを読む

      2019/03/30 by 月うさぎ

    • 評価: 5.0

      ディック・フランシスはおもしろい。どれも同じように話しは始まり、主人公が苦難にあって、さいごはそれを乗り越える。ほぼみなそのパターンなのだが、読むとどれもおもしろい。私の持っていたシリーズ1作目の「興奮」は、はるばるインドまでやってきたこともあり、表紙カバーも失われ、(古くて)字が小さかった。「読みにくそう」とは、パラパラめくった友人たちの言。だがみな必ず読了していた。

      2016/05/13 by

      興奮」のレビュー

    • ディック・フランシスはおもしろいですよね~。誰かレビューしてくれないかな~と思っていました。20代のころには出ている作品全部読み切ってしまって原書にまで手を出したものです。
      ヒーローがもう、かっこよすぎで。
      私にとってはフランシスの世界はハード・ボイルドです。
      >> 続きを読む

      2016/05/13 by 月うさぎ

    • 2000年ころ、路上市で(当時で)かなりそろったのが売ってまして、読みまくりました。著者が亡くなる前の何冊かは、息子さんと共著になってますよね。そのあたりはまだ読んでないのですが、同じようにおもしろいといいなぁ~と思っています。ほんとうに、どのヒーローもかっこいい。 >> 続きを読む

      2016/05/13 by まるち


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