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警官嫌い (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 13‐1))

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: エド・マクベイン
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    • 評価: 4.0

      久しぶりにエド・マクベインの"八十七分署シリーズ"のシリーズ第1作の「警官嫌い」をじっくりと読み返してみました。

      「この小説に現れる都会は架空のものである。登場人物もすべて虚構である。ただし警察活動はじっさいの捜査方法に基づいている」と、本の扉に必ず断り書きが記してある、このシリーズの舞台になっている都会、なかでも、特に八十七分署の管轄区である"アイソラ地区"の描写は、非常にリアリティに満ちあふれていると思います。エド・マクベインの鋭い作家的嗅覚と、ジャーナリスティックで的確なディテール描写が光ります。

      このシリーズに登場する刑事たちは、お馴染みのスティーヴ・キャレラ、マイヤー・マイヤーなどが主人公となって毎回、事件の捜査にあたりますが、視点を変えれば、このシリーズの真の主人公はアイソラの街ではないかと思っています。

      なぜ、そのように考えるのかというと、それまでのミステリーでの情景描写は、ほとんど室内描写に限られていたと思います。つまり、静的にものの描写に限られていたと思うのです。

      ところが、第二次世界大戦後の警察ミステリーは、探偵役の名刑事の一人舞台の活躍から、警察機構をフルに活用し、捜査方法もより現実に近づいたドキュメンタリー・タッチのミステリーへと移行していったと思います。

      そして、捜査官の私生活が事件の捜査と同じように重要視されることになり、遂に、刑事とはよれよれのレインコートを着て、街角でハンバーガーを食べるといったイメージの描写が見られるようになっていくのです。そして、その旗頭とも言えるのがエド・マクベインの八十七分署シリーズではないかと思います。

      七月二十三日午後十一時四十一分、汗にまみれて眠る妻や子供たちを置いて、夜間勤務につくため道を急いでいたマイク・リアダンは、後頭部を何者かに撃ち砕かれて殺害された。マイクは、八十七分署の刑事だった。享年三十八-------。

      七月二十四日午前一時、八十七分署の刑事スティーヴ・キャレラが恋人のテディと愛し合っていた時間に、母親の待つアパートへと帰る途中のデヴィッド・フォスターは、四発の銃弾に胸を焼かれて死んでいた。このフォスターも八十七分署の黒人刑事だった-------。

      事件のてがかりは、何もなかった。このアイソラという街を襲った熱波は、じっと上空にわだかまったまま、八十七分署の刑事たちに憎しみの眼を注いでいるようだった。

      そして、目撃者もいなかった。殺人現場に残されていた薬莢と弾丸は、同一犯のしわざであることを指していたが、石膏で足跡をとってみても、また殺された刑事二人がそれまでに扱った事件から共通点を割り出そうとして前科者記録カードをくってみても、犯人の目星はまるでつかなかった。

      警官嫌いの狂気のしわざか? -------。

      新聞は、警察の無法地帯と書き立て、腐敗した警察の汚職のうみが警官連続殺害事件の原因だと一大キャンペーンを張ります。同僚を殺され、やっきになって参考人を追い回す八十七分署の刑事たち。

      だが、この管轄区の事件はそれだけではないのです。暑さにうんざりしているチンピラたちは、ことあれかしと暴れる機会を狙っているし、酔っ払って街灯を打ち壊しながら歩いていた男も出てくる。気の変な女が「あたしのテレパシーで警官殺しの犯人がわかる」と言って飛び込んでくる。麻薬中毒者も挙げなければならない。そして、「暑かったので亭主を斧でぶってやった」とカミュの「異邦人」もどきの細君まで出現するといった具合だ。

      それを数十人の署員で片づけなければならないのが、この"八十七分署"の英雄たちなのです。愚痴をこぼしながらも"毛むくじゃらの怪物"である市、特に管轄区であるアイソラの街を愛している刑事たちは、この街の空の下から決して逃げ出そうとはしないのです。

      やがて、第三の警官殺しが発生します。瀕死のハンク・ブッシュは犯人に傷を負わせ、事件はいよいよ大詰めへとさしかかるのです-------。

      スピーディーな歯切れの良い文章と語り口、息づく街のリアルな雰囲気、生き生きと描かれる刑事たちの生活。まったくうまいものです。唸らされます。そして、面白いエンターテインメント小説を堪能できた悦びで、私の心は満たされるのです。



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      2017/08/21 by

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