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悪童日記

4.1 4.1 (レビュー14件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 693 円
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2017年01月の課題図書
いいね! karamomo Fragment asuka2819 Shizu

    「悪童日記」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      「ぼくらは、どんなことも絶対に忘れないよ」「ぼくたちは理解したいんです」

      戦火を逃れるために母の実家の町に疎開した双子の少年達
      彼らがそこで見、体験し、味わったことは、まるで悪徳と罪悪のオンパレード。
      不潔、飢え、ネグレクト、盗み、恐喝、暴力、殺人だけではない。
      色欲、男色、サディズム、マゾヒズム、小児性愛、障害者差別、人種差別とホロコースト
      それでもまだ悪徳が足りないとみえ、信仰、両親への愛をも顧みない双子たちが描かれる。

      しかし誰が双子を断罪できるだろうか?
      戦争こそが最悪の罪であるというのに

      人の尊厳どころか命さえ、まるで紙屑同然の扱いをされ、人心は乱れ、社会は崩壊し、愛は意味を失う。
      そんな中で幼少期を育った子供にとって、世界はどういう存在になってしまうのか?
      戦争に心を傷つけられた子供たちは、いわゆる道徳を、純粋に信じることができるだろうか?

      道徳や常識や主観や意味づけを排除した時、残るのは何だ?
      汝人を殺すなかれ と聖書は説く。
      では戦争で殺し合っている人間たちはいったい何者だ?
      収容所で焼かれた骨の山がなぜできた?
      こんな日常の中では、子どもらは宗教や道徳には救いを見いだせない。

      双子は言う。
      「別に親切にしたかったわけじゃないよ。」
      「あなたがこういうものを絶対に必要としていたからなんだ。それだけのことさ」

      「絶対に必要」か否か。彼ら双子の少年達にとっての価値判断はその一点に集約される。
      生き延びるためにぎりぎりな状況において、人はどうやって人間らしくあることができるだろう?
      この小説を理解するためには「戦争」を想像しなければならない。

      生きのびるために絶対に必要な物とは何だろう?
      双子の澄んだ目はそれを教えてくれはしないか?

      愛だ恋だお祈りだプライドだ権力だ?
      彼らが突きつけるのは冷たいNOだ。

      死ぬことが絶対に必要な人には死を
      しかし死ぬことを全くのぞまない人を死に追いやる力には報復を

      司祭はそんな双子を、罰するのは神さまのお役目だと悟すが、その言葉は彼らの心には届かない。

      双子たちにももちろん感情はある

      靴屋に対しては言いたくないはずのお礼を自然に口にしていた
      「ありがとう、ほんとうにありがとう」
      それは靴をプレゼントしてくれたからだけではない。
      双子が欲していた「必要なものを」彼がくれたからだ。

      だから“牽かれて行く”人間たちに心を動かされ、あれだけの怒りを爆発させたのだと思う。

      全く描かれない感情が奔流のように流れてくるのが不思議だ
      この小説のもっともすぐれているのはこの点ではないだろうか。

      彼らの「大きなノート」に書きつけられた作文には「真実でなければならない」というルールがある。
      主観を排し感情を消去し客観的に起こったことだけを描くのがルールであると。

      そして私達はそれをそのまま信じようとする。
      翻訳者のあてたタイトルの「日記」という言葉にも影響を受けてしまうだろう。
      (日本人は日記文学が好きだから)

      しかし勘違いしてはいけない。この小説は日記などではない。「作文」なのだ。
      書かれた内容のありえなさにつきまとう違和感に、双子の実在を疑問に思い、母親のセリフ、司祭のセリフで確認しつつ読んでいた。
      しかし、疑ってかかっても双子が双子で無い証拠は出てこなかった。
      最後の一文で決定的になるまでは…。

      この「なぜ?」の衝撃って言ったらない。
      文句なく、面白い!


      そしてまた、まったく救いの無い出来事が続く中でも、なぜかこの小説から受ける印象はユーモラスである。
      外国人の従卒、ユダヤ人の靴屋など、いい人だっている。
      罵詈雑言と児童虐待の権化のようなおばあちゃんには、口汚さにも慣れてきて、かわいささえ感じてしまうではないか。
      イケメンのナチスの将校が魅力的な弱い人物に見えてしまうではないか。
      罪深い人間たちこそ実はとてもあけすけで正直で好ましいといわんばかりに。


      この小説中で最も生き生きとした台詞はなぜかこれだ
      「あたしたち女が戦争をまるっきり知らないっだって?冗談もたいがいにしてよ!」
      「――それにひきかえ、あんたたちは得だよ。
      いったん戦争が終わりゃ、みんな英雄なんだからね。
      戦死して英雄、生き残って英雄、負傷して英雄。
      それだから戦争を発明したんでしょうが、あんたたち男は」

      意図的ではないかもしれないが、著者のメッセージのほとばしりがここにある気がする。

      戦争が引き起こした悲劇ははかりしれない。
      攻撃による死や負傷や町の破壊なんかで終わらない。

      国を引き裂き、歴史を踏みにじり、心を傷つけ、
      戦争が終わっても、政治的混乱は続く。
      ハンガリーにおいてドイツのナチズムの後に訪れたのはソ連のスターニリズムであった。
      戦争よりももっともっと長く悲惨な生活を意味することさえあるのだ。

      著者自身、亡命し祖国と引き離され自分自身が二つに引き裂かれたと感じつづけていたように。
      何年たっても戦争の傷が癒えることはないのかもしれない。
      >> 続きを読む

      2017/02/22 by

      悪童日記」のレビュー

    • 人間の世界というのはまったく、、、生きる価値のあるすてきな世界ではありませんね。実際。でも、人間は何が何でも生き続けたいと(実は)思っている。生存欲という本能があるのですね。生きるのは苦だ、じゃあ死にましょ、にならない。価値はないんだから、絶望することもない。そんなものに執着することなく平和に気楽に生きればいい。でも、それがなかなかできない人間。矛盾に満ちているのが人間という存在なのですね。
      おばあちゃんもかわいく思える・・・確かに。書評には無慈悲?て書いたけど、厳しいけど無慈悲とはいえないかも、って思いました(なので?つけた)。みんな弱い人間なんだなあ、て思うと愛おしいですよね。
      まあ、弱くて無知だから人間は争うのでしょう。戦争も人間だから、ねえ、ほんと人間ってしょうがないなあ・・・^^;
      >> 続きを読む

      2017/02/23 by バカボン

    • バカボンさん
      この小説は「なぜ人を殺してはいけないのですか?」という問いへの答えが書き込まれているように私には思えました。
      兎っ子の母親は生きる事を拒否し、おばあちゃんは尊厳死を望みましたね。
      命の問題は最も大きいはずなのに戦争は死を単なる量的問題にしてしまいます。
      ただ、ここで気づくのは、双子たちが不幸になるのは戦争が終わった後なんですよ。
      人間って複雑怪奇ですね。
      >> 続きを読む

      2017/02/23 by 月うさぎ

    • 評価: 5.0

      今まで読んだことないような作品だった。軽い衝撃を受けた。
      戦時中のハンガリー(と思われる)を生きる双子の男の子の話で、もう混沌とした酷い状況の中で、ひとつとっても衝撃的なことが次から次へと描かれているのに、
      感情の描写がない。
      戦時中の話で、人物の感情を細かに描写していく作品はいくつか読んだことがあるけれど、それを一切しないでこんなにも迫るものがあるんだと驚いた。
      つい引き込まれて夢中で読んだ。

      2017/02/22 by

      悪童日記」のレビュー

    • 評価: 5.0

      悪「童」日記とありますが、私はこれを主人公二人の「大人」の物語だと思いました。

      主人公は双子の男の子。けれど、この少年ら、キレ者過ぎて、やんちゃな子どもの域を超えているどころか、
      戦争でドンパチし、侵略をしに来る残忍なオトナや、
      常識的な正しさを述べる司祭なども飛び越えて、
      自分の正義をたしかに胸に持って生きる、自律した「大人」なのです。

      この少年たちは、普通だったら虐げられている立場にあります。
      戦争で、貧しい祖母の家に置かれ、労働を強いられる日々。
      しかし彼らは、「弱い子ども」でいようとはしませんでした。学習し、人の動向を観察し、自ら考え、鍛錬をするなかで、無残な戦争下でも生きていく術を得ていくのです。

      そのなかで、「利用できるものは利用する」という描写があるため、少年たちが非道な人物に思われることもあるでしょう。
      ですが、私はこれをあくまでも「物語」とした上で、少年たちの強かさに自分も学ぶところがあるように思いました。

      正直、課題図書じゃなかったら、手に取らなかったかも知れない一冊でした。。読めてよかった。糧になりました。
      >> 続きを読む

      2017/01/25 by

      悪童日記」のレビュー

    • 評価: 4.0

      再読。本作単独では辛めの寓話風。解説によると続編は最初から予定されていたわけではないそうだが、続編がつくことでこの一作目は意味合いが随分変わったのであった。読み出したら結局三部作一気。面白い、などと言うのは軽薄かつ月並みで申し訳ないが、でもやっぱり面白かった。

      2017/01/21 by

      悪童日記」のレビュー

    • 評価: 1.0

      何これ?っていう衝撃的な小説。みなさんの評価は高いようですが、わたしはこういうのは嫌い。気持ち悪い。読むんじゃなかった。

      2017/01/18 by

      悪童日記」のレビュー

    • 感情的なつながりの欠如、非道、悪徳、暴力、戦争…。
      まったくいいこと書かれていませんよね。
      koko_cieloさんのご感想はしごくまっとうだと思います。
      もしもこれがノンフィクションならば。

      ラストは大きな謎かけでおわっていますよね。
      この小説、実は作文なのです。(原作のタイトルは日記ではありません)
      真実のみを記載するというルールがフィクションなのでは?
      など、いろいろな読み方できる小説なんだと思います。

      でも、こういう感想の方がいるということは情報として貴重です。
      未読の方の参考になることと思います。
      >> 続きを読む

      2017/02/13 by 月うさぎ

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      • 評価: 0.0

        読友さんが映画を見て面白かったと言っていたので
        映画見たら思いのほか面白く原作を手にとってみた。
        独特の書き方で面白く一気読み!
        このくらいの文量が映画にはいいですね〜
        映画では大柄なお婆さん、原作だと痩せているんですね。
        続きの2作読みますよ〜
        これから二人はどうなっていくのか!? >> 続きを読む

        2016/05/05 by

        悪童日記」のレビュー

      • 私も一気読みでした~!!!
        このペースでいくと、1週間で3部作読めちゃいそうです。
        映画のトレーラーを観ましたが、おばあちゃんが恰幅良くてびっくり。 >> 続きを読む

        2016/11/09 by あすか

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