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白昼の悪魔

3.3 3.3 (レビュー2件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 756 円

地中海の平和な避暑地スマグラーズ島の静寂は突如破られた。島に滞在中の美しき元女優が、何者かに殺害されたのだ。犯人が滞在客のなかにいることは間違いない。だが関係者には、いずれも鉄壁とも思えるアリバイが...難航する捜査がついに暗礁に乗り上げたとき、滞在客の中からエルキュール・ポアロが進みでた。

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    「白昼の悪魔」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      またまた騙されてしまった。

      被害者の夫のアリバイが綻びそうなストーリーを散りばめてくるから、ついそれを本線に読んでしまった。

      いつも思うが、アガサクリスティの作品はよく練られている。
      一部の有名な作品を除けば、事件自体はシンプル。

      たくさん殺害されるような派手さも、驚くようなトリックも無い。

      しかし、Who done itの点から読むと、無関係な謎めいた話や、犯人のように思えるサブストーリーを複数の人物に醸し出すことによって、読み手はついつい迷走させられる。

      うーん、悔しい!
      という充実した読後感がいつもしっかり得られるのは驚き。

      そして読み返すと、要所要所にうまーく伏線が散りばめられている。
      他作家のトリック重視の作品にありがちな、後から読み返して、「おいー、ここの言動が矛盾してるじゃないか・・・」とか「じゃあここの文脈の意味なんだったんだよ・・・」というがっかり感がない。

      これが嬉しい。
      >> 続きを読む

      2017/08/19 by

      白昼の悪魔」のレビュー

    • 評価: 4.0

      陽光あふれる海辺の平和な景色は殺人とは無縁?
      いいえ「白昼にも悪魔はいるのです」
      「ジョリー・ロジャー・ホテル」は夏のヴァカンスを楽しむ人々で賑わっていた。
      イギリス南部の小さな島スマグラーズ島にあるアイランドホテルは、高級リゾートホテルだ。
      名前の意味は『密輸船島の海賊旗ホテル』

      「たとえば、あなたに敵がいたとします。あなたはその人をねらっていた、アパートなり会社なり道ばたなりでつかまえたとする――よろしい(エ・ビアン)、あなたには“理由”がひつようだ――なぜそこにいたかを説明しなければなりません」
      なぜこのホテルに?という問いに「もちろん八月だから」で済むでしょう?
      なるほど。さすがはポアロ。じゃなくてクリスティ。

      この物語は要するに、いつもの王道のクリスティです。
      ハウダニット、フーダニット、ホワイダニット、アリバイ崩しの4弾攻撃です。
      でも今回、ちょっと違うのは、女優が殺されちゃうことです!
      どひゃ~いきなりネタバレかい?!と思うでしょうが、
       ↑ ほら、紹介文に書いてあるもんね。

      (*文庫の紹介文に「地中海の」とあるのは間違いです。
      映画の邦題は確かに「地中海殺人事件」でしたが、そこからして日本流アレンジですから。
      映画ではアドリア海、小説ではイギリス南部の西海岸デヴォン州の小島、スマグラーズ(密輸船)島が舞台です。
      こういう大間違いは即訂正してもらいたいものです)

      【ストーリー】
      ホテルの滞在客の中で30代のあでやかな美女がひときわ目立っていた。
      元舞台女優のアイリーンは存在感や男性の心を奪うことに長けた肉食系美女。
      2年前に再婚した40代の実業家の夫には16歳の娘が一人いる。
      3人でヴァカンスに来たが、大事なパパを奪われた娘・リンダの心中ではアリーナへの憎しみが増していき、ついに…

      夫パトリックの浮気に傷心のクリスチン。
      ケネスを想う気持から苛立ちを隠せないロザモンド。
      神父は脅迫症の症状、ホレスまでもトラブルを抱えていることが判明し、疑わしい人物は増す一方

      実はこの小説は短篇を長編に書き直したもので、犯人とトリックはほぼ一緒です。
      長篇ではリゾート感たっぷりで楽しくて、短篇のほうが事件性が強いですね。

      男女関係のもつれを中心に描いているように見えますが、
      私的にはこの話は娘のリンダの存在がキモだと思うんですね。
      リンダは自分を「子馬のようにぶざまで、ハリネズミのようにとげとげしている」と感じており、
      思春期特有の自己嫌悪と大人だか子供だかどっちつかずの立場に苦しんでいます。
      そんなリンダがどうなってしまうのか…。
      ポアロは彼女にどう対応するのか?

      「悲しみよこんにちは」(1954年)でもほぼ同年代の父娘の物語ですが(父40歳・娘17歳)
      あまりに異なることに驚くでしょう。

      海での長いヴァカンスも、その過ごし方にも違いがあります。
      英国人はホテルで一流のサービスを受けるのが快適なリゾートと考えますが
      フランスでは貸別荘を借りその近くの店などで遊ぶんですね。
      自然の中でのんびりまたはスポーツをして過ごし、時々気合を入れて観光へでかけるのが英国流
      フランス人にはカジノや社交のパーティーなどが手近に必要。
      最大の遊びは恋愛。といってはばからない。

      「悲しみよ…」を読まれた方にも読み比べてみてもおもしろいのでは?
      (発表されたのはこちらのほうが13年も古いですが)
      そしてミステリーではありますが、クリスティの感情移入のさせ方の巧さを体験してみてほしいです。
      人間に向ける優しい目線や罪と赦しという問題をいつも忘れないクリスティの作家として人としての質も。
      (この翻訳は軽くてイマイチなので惜しいのですが)

      1940年代の作品はどれも粒よりの小説揃いでお勧めできます。

      【登場人物】
      (ホテルの宿泊客)
      エルキュール・ポアロ : 私立探偵
      オーデル・C・ガードナー : アメリカ人旅行者
      ガードナー夫人 : オーデルの妻。とめどもないおしゃべり。
      バリー少佐 : インド帰りの退役軍人。自慢話が長い
      スチーブン・レーン : 元牧師。やせ形で熱血型
      エミリー・ブルースター : スポーツウーマン。高所恐怖症。
      ロザモンド・ダーンリー : 有名なドレスメーカー。エレガントでビジネスでも成功した黒髪の女。
        ケネスとは幼馴染で彼に愛情を感じている
      ケネス・マーシャル大尉 : 40歳の実業家。感情を内に秘めるタイプ。責任感の強いイギリス紳士。
      アリーナ・マーシャル : ケネスの後妻。美貌の元女優。赤毛。
      リンダ・マーシャル : ケネスの娘。16歳。
        継母であるアリーナを疎ましく思っている。
      パトリック・レッドファン : 妻帯者ながらアリーナに恋してしまった若い男。
        健康的で明るくハンサムな理想的なモテ男。
      クリスチン・レッドファン : パトリックの妻。元教師。
        夫の不倫を疑い悩む姿は、実にひ弱な印象で人々の同情をかう。
      ホレス・ブラット : 謎の成金?ヨットが趣味

      (その他の人物)
      ミセス・カースル : ホテルの所有者兼支配人。きどった女性。
      コルゲート : 州警察警部
      ウェストン警視正 : 州警察本部長


      白昼の悪魔 原題: Evil under the Sun 
      1941年

      当時のロンドンは第二次大戦の真っただ中、ナチスドイツがヨーロッパ諸国を攻撃している状況で
      クリスティも空爆を経験しつつの執筆だったそうです。
      そんな情勢でこの優雅なリゾートの物語を描けるものか。
      暗い現実だからこそ別世界を見せようと思ったのか。
      小説に退役軍人や経済の悪化の話は出てきますが、戦争の影も形もない。
      時代を越えて読み継がれることを彼女は知っていたのでしょうね。

      【翻訳】 鳴海四郎 
      ポアロ作品を読みなれている人には評判がよろしくないです。
      会話のトーンが、何か違う…と思わせてしまう。優雅さや奥ゆかしさが無い。

      「えらいこった、死んでいる……」とか。人をあんたとか呼ぶし。
      「さァ」とかカタカナ使いたがるし、結構軽薄)

      初めて読む人にはあまり気づかれない程度でしょう。
      もっとひどいのがあるから。


      【映画】
      1982年公開。邦題は『地中海殺人事件』。『ナイル殺人事件』に続き、ピーター・ユスチノフがポアロを演じた。
      舞台はアドリア海の隔絶したリゾート地に変更された(撮影はスペインのマジョルカ島で行われた)

      【元ネタ短篇】
      『砂にかかれた三角形』 Triangle at Rhodes 2 February 1936 (「死人の鏡」)
      どちらを先に読むべきですか?と聞かれれば断然長編が先のほうがいいです。
      >> 続きを読む

      2015/08/18 by

      白昼の悪魔」のレビュー

    • やはり翻訳によって全く違った物になってしまいますね。度胸無いと翻訳家にはなれないですね。おそろしい。

      >自然の中でのんびりまたはスポーツをして過ごし、時々気合を入れて観光へでかけるのが英国流、フランス人にはカジノや社交のパーティーなどが手近に必要。

      英国人みたいなバカンスを過ごしたいですね。仲良くなったら英国人の方が気が合いそうな気がします。あ、音楽面でも。
      >> 続きを読む

      2015/08/19 by ありんこ

    • ありんこさん
      フランスといえばシャンソンですものね。フランス語のあの発声でオペラもパンクロックも様にならないですよね。

      英仏のリゾート感覚の違いは植民地のリゾートを考えるとわかりやすいです。
      例えば、南アフリカ対モロッコ、あ、わかりにくいか。
      フィジーとタヒチではどう?オーストラリアとニューカレドニアでは?
      ええっと。フランス領のリゾートはよくいえば自然がなるべく手付かずで残る。
      長期休暇が基本だけれど、庶民はコテージで自炊するような貧乏旅行が多い。
      だから繁華な街はできないし、垢抜けない。
      イギリス領だと必ず一流のリゾートホテルを作ります。
      観光をするのは大好きで、快適なサービスも要求しますので観光業が成立します。
      でも彼らは自然に親しみ散歩をするのは大好きですが、自分の生活は変えません。
      この作品でポアロったら白のスエードの靴を履いて海を眺めていたりします。
      「白」ってところで微妙にリゾートしているつもりなんでしょう。
      映画の方では水着姿を披露していましたが原作ではそんなことしてませんよ~。
      >> 続きを読む

      2015/08/19 by 月うさぎ


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