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秘密機関

3.0 3.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 966 円

戦争も終わり平和が戻ったロンドンで再会した幼なじみのトミーとタペンス。ふたりはヤング・アドベンチャラーズなる会社を設立し探偵業を始めるが、怪しげな依頼をきっかけに英国を揺るがす極秘文書争奪戦に巻き込まれてしまう。冒険また冒険の展開にふたりの運命は?名コンビ誕生の記念碑的作品を最新訳で贈る。

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    「秘密機関」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      アガサ・クリスティの第2作目はキュートな冒険ラブコメ調ミステリー。
      正当派謎解きポワロとうって変わって、若い男女が大活躍のスパイもの。
      2011版 嵯峨静江氏の新訳で、和田誠さんの期間限定カバーが、かわいくもレトロ!

      クリスティといえば、「ミステリーの女王」
      でも、ほんの駆け出しの作家のころ。
      彼女はとても楽しい冒険スリラーをたくさん書いていたのです。
      非現実的で話が大きくて、エンタメ性(ドタバタ感ともいえる)が強い作風です。


      第一次大戦直後、失業中でお金につまった幼馴染のトミーとタペンスの二人は、
      金儲けもおもしろいこともしたいというイージーな発想から、
      「ヤング・アドベンチャラーズ」という会社を設立して素人探偵を始めることに。
      その直後、不思議な依頼が舞い込んできた。
      事件の背後には極秘文書をめぐる国際的陰謀と地下組織を仕切る影の大ボス「ブラウン」の暗躍があったのだ。


      クリスティといえば、ポアロでしょ?と思っている方がいらしたら、
      試しにこれ、読んでみるといいですよ。
      スパイものだと真面目に思うと、とんでもないことになりますが。

      クリスティの「キャラクター設定」は、非常に現代的です。
      タペンスの、元気で好奇心のかたまりで率直で無茶で勇敢でかわいいことったら!
      この時代(日本は大正11年)にこういう際立った主人公を描けたことを考えるといっそう驚くことでしょう。

      『けっして美人ではないが、小さな顔に意志の強そうな顎、
      黒いまっすぐな眉の下で潤んだように見える大きな灰色の目は、
      妖精のように愛らしくて個性的だった。』
      黒いショートヘアにミニスカート。格好よくなろうという意気込みが感じられる。

      タバコをふかし、車の運転もする。
      そんな20歳そこそこの女の子です。


      はしたなく「お金」「お金」としゃべりまくったあげく、
      「もしもわたしたちが有名になれば、きっと誰かがわたしたちを雇って犯罪の仲間にしてくれるんじゃないかしら」
      なんてすごいことを平気でいう子です。
      (これでなぜか牧師の娘)

      赤川次郎氏はクリスティ・ファンとして有名ですが、
      ミステリーのアイディアより、むしろキャラクター作りの部分に影響を受けたのだ。
      ということがおわかりになることでしょう。

      特にこのトミーとタペンス・シリーズは夫婦漫才のような掛け合いが楽しい。
      もちろん、タペンスが突っ込み役です。


      新訳はより軽いタッチで、読みやすく、これなら悪くないです。
      「青年冒険家商会」と「ヤング・アドベンチャラーズ」の違いです。
      ただし、新訳の例に洩れずひらがな多用には抵抗があります。
      ふりかえった、ならんだ、すわった、むずかしい、きらい、どのていど、全部ひらがなです。
      ちょっとバカにされた気分。

      またまた例によって、ですが、会話文が軽薄。
      億万長者の大富豪がその辺の若者のような気安い口をききます。
      物語のキーマンなので、それはいくらなんでも、やりすぎ。
      彼にはもっと奥行や含みを持たせてほしい。

      会話文のせいで、人間に陰影がないことは登場人物全員にいえることです。
      トミーが思慮深いとは思えませんし、タペンスが機転がきくようにも見えません。
      ヴァンデマイヤー夫人など、悪役で怖い人のはずなのに、滑稽にすら見えます。
      (ドロンジョみたい…)
      お話しがコメディタッチなので、これ以上マンガチックな効果は狙わないでほしいのですが。

      ストーリーは、単純で突進猛進型のヒロインにはらはらさせられながら、
      謎と危険がますます深まる事件を追うという飽きさせない展開。

      いったい影の大物とは誰?
        …というのは、実はわりとわかりやすいのですが…(^^;)


      1作目にポアロ、この第2作目にトミー&タペンスと、
      この時点で、人気シリーズもの2つのキャラクターが創作されているのには驚かされますね。

      この二人を主人公にしたシリーズは以下の通り
      1922年 『秘密機関』
      1941年 『NかMか』
      1968年 『親指のうずき』
      1973年 『運命の裏木戸』

      短編
      1929年 『おしどり探偵』

      作品数は少なくても、トミ&タペ・ファンは意外に多くて映像化もされています。
      クリスティの作品の中でかなりの存在感があるのですよ。
      >> 続きを読む

      2012/09/18 by

      秘密機関」のレビュー

    • 読書ログさま いつも大変お世話になっております。愛用させていただいております。
      速のご対応をいただき、感謝と共にオドロイています。
      これだと、他の方のレビューにもたどり着きやすくなりますね。素晴らしい。
      とても嬉しいアイディアです。

      レビュー当時は単行本しかなかったものが、知らないうちに文庫になることもありますよね。
      その場合、文庫にレビューなし。となってしまうので、
      それで、注文を付けてしまいました。
      どうもすみませんでした。

      甘えついでにもう一つ言ってしまおう。
      現時点で廃刊でもamazonでは普通に手に入る本も多く、画像がある本も多いですね。
      可能な限りでよいのですが、amazonで表示されている表紙の画像がこちらでも表示できるとありがたいと思います。

      今後ともご発展をお祈りしています。
      どうもありがとうございました。
      >> 続きを読む

      2012/09/18 by 月うさぎ

    • Tsukiusagiさん

      > 可能な限りでよいのですが、amazonで表示されている表紙の画像がこちらでも表示できるとありがたいと思います。

      ご意見有難うございます。

      書影画像が表示されていない書籍では、NoImage画像を表示しております。
      この画像の上に「書籍画像を更新」というリンクがございますので、こちらを選択していただくとAmazonから取得できた場合に書影が設定されるように致しました。
      >> 続きを読む

      2012/09/19 by 読書ログ

    関連したレビュー

      早川書房 (2003/11)

      著者: 田村隆一 , アガサ・クリスティ

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      • 評価: 4.0

        アガサ・クリスティはミステリーの女王としてあまりにも有名な作家ですが、今回読了した「秘密機関」は、1920年に「スタイルズ荘の怪事件」でデビューしたクリスティの第二作目の作品ですが、このデビュー直後に書いた何作かの"冒険スリラー"は、彼女の華やかでゴージャスな"本格ミステリー"のせいで、ほとんど忘れ去られているような気がします。

        この「秘密機関」は、彼女の"冒険スリラー"の代表作だと確信していますが、第一次世界大戦中にイギリス政府がドイツと結ぼうとした秘密協定の草案文書をめぐる陰謀に、主人公の若き男女トミーとタペンスが巻き込まれるという、"巻き込まれ型のスリラー"なのです。

        秘密文書の鍵を握る女性ジェーンはどこにいるのか、陰謀団の黒幕ブラウン氏とは誰なのか----という二つの謎を中心に、刻限までに秘密文書を回収しなければならないというサスペンスが、最後の最後まで私を惹きつけて離さない、これはまさしく傑作だと思います。

        監禁あり追跡ありのめまぐるしい展開も、非常に快調なテンポでスリリングに描かれていて、やはりクリスティは初期の頃からストーリー・テラーだったんだなと嬉しくなってしまいます。

        クリスティはこのトミーとタペンスという、主人公のコンビをその後も「NかMか」「親指のうずき」「運命の裏木戸」といった作品に登場させ、最後の作品ではなんと75歳前後の老人コンビになっているというのも非常に興味深く、彼女がこのトミーとタペンスのコンビにいかに愛着を持っていたのかがわかるような気がします。

        アガサ・クリスティの"冒険スリラー"の特色について考えてみると、一番怪しくない人間が犯人だという、「アクロイド殺し」に代表される"本格ミステリー"の謎を、この作品でもその"核"にしている事だと思うのです。

        そのために、この作品が"冒険スリラー"や"スパイ小説"でありながら、"謎解きミステリー"の要素が非常に濃いような気がします。

        もう一つの特色は、女性を主人公にして恋物語にしている事だと思います。つまり、ロマンス小説的な味わいもあると思うのです。

        そして、最大の特色は、物語の背景に必ず共産主義者がいて、その黒幕に国際的な犯罪組織やギャング団の首領がいるとの構造を持っている事だと思います。

        シャーロック・ホームズ物で有名なコナン・ドイル同様に、頑迷な保守主義者だったクリスティには、執筆当時の第一次世界大戦後の新しい社会の風潮が、"古き良きイギリス"を破壊していくように思えたのかも知れません。そういう混沌とした時代に対する"苛立ちと不安"が、クリスティの"冒険スリラー"には色濃く漂っているように感じます。

        とにかく、この作品は主人公のトミーとタペンスが「二人の年をあわせたところで、四十五にはならなかった」という若き日の冒険だけに、物語の全編を通して、溢れるほどの活力が漲っていたと思います。

        強烈な謎へのこだわりと巧みなプロットの展開を持つ、この作品のような"冒険スリラー"が、1930年代以降、彼女が"本格ミステリー"の世界へ移行したために、作品としてほとんどなくなっていったのは、"冒険スリラー"の大ファンとしては、残念でなりません。
        >> 続きを読む

        2016/10/25 by

        秘密機関」のレビュー

      • クリスティの冒険小説ってはじけていて楽しいですよね。
        >クリスティは初期の頃からストーリー・テラーだったんだな
        本当にそうですね。読みやすいし楽しませようという気合がいっぱいです。
        今でいうならラノベに近いでしょう。
        特に本作は稚拙なくらいに元気いっぱいで、特に女の子が魅力的。
        赤川次郎さんなんか、本作品に影響を受けていそうですね。
        一般人には知名度は低いですが、クリスティ・ファンの中にはトミタペのファンも結構多いのですよ。
        書かれた年代にあわせて歳を取っていく彼らなので、このシリーズは絶対に発表年代順に読みたいですね!

        私は冒険スリラーの中では「チムニーズ館の秘密」が好きなんです~。
        この作品、悪く言う人もいるけれど私はすごく楽しみました。
        アガサにしてはとても珍しいことに若いハンサム君が主役。
        時代がかった大げさな設定も現代物にはない大舞台を用意していて、ドラマチックですし。
        ロマンス色も強く、それと男の友情が描かれているのも貴重。
        ドラマではなんとマープル物にアレンジされているらしい。
        なんてこった(`・ω・´)、ありえません!
        せっかくの、クリスティ作品でほぼ唯一のヒーローキャラなのに。
        >> 続きを読む

        2016/10/25 by 月うさぎ


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