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運命の日

5.0 5.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 966 円
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    「運命の日」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      「運命の日」(上)(下)

      これは並みのミステリではない。ミステリというジャンルから生まれた、歴史の一片を語る叙事詩のような作品だった。
      上下巻二段組みの長編を読み通したのは、面白く、ストーリーに破綻もなく読み手を楽しませる、手法、構成から目が離せずにいたこともある、しかし一方ではこの長さがちょっと苦しかった。特に上巻の家庭や警察内部の動き、兄弟、親子のいざこざなどが、まだ話の流れに乗り切らない時点で通り過ぎるのに時間がかかった。
      「チボー家の人々」や「収容所列島」などなど、世界の名作といわれる長編に夢中になり、話が長いほど嬉しかった時代は遠くなった。

      ボストンの警官が待遇改善を求めてストライキをする「その決行の時」に向かって進んでいく様子が息づまるように書かれる。史実を含め、ボストンの歴史であり当時のアメリカの政治を背景に、革命を叫ぶもの、テロをたくらむもの、世情不安の中に投げ込まれた主人公たちの生き様が、息もつかせず読ませる。

      まず上巻を開いて読み始めると、ベーブ・ルースがナショナルリーグに向かって列車の旅をしている。レッドソックスやカブスの選手もいる。オハイオまで来たとき列車の故障で、2.3時間停車する。気分転換に下りて、黒人たちの草野球に出会う。投打ともにプロに匹敵する巧さだ。ベーブは近づいていく、そして白人選手たちと黒人のチーム対戦になる。プロもたじたじの実力にベーブたちは押されて、9回二死満塁、6対3でプロが負け越している。打順が回ってきたベーブは、前の打者がダブルプレーで試合が終了するのを密かに願っていた。だが皮肉なことに打順は巡り、狙った球が来て外野の頭上高く打ち上げる。だが落下点に神業のような俊足ルーサーがいた。ベーブは快心の当たりでなかったことに気がついていた。ルーサーは球の真下にいたが。ボールをポトリと目の前の地面に落としたまま帰り支度をして振り向きもしないで行ってしまう。ファールをフェアだといい、判定の曖昧な進塁にセーフだと言い切る白人たち、当時の白人気質を当然のように持ち込んだ傲慢なプロの選手、黒人蔑視がスポーツのルールも曲げてしまう。白熱した試合の様子から書き出し、社会情勢を映し出す、その上、今後の登場人物を紹介もする、これだけでも優れた短編小説を読んだような気分になる。

      トマス・コグリンを父に三人の息子がいる、父はボストン署の警部、息子のダニーは巡査、次男のコナーは地区検事補、末弟のジョーは13歳だった。
      ボストンでは労働者、特に黒人移民の労働者階級は低賃金と過酷な労働を強いられ、警官は不安な世情の見張りで、慢性睡眠不足に加え、これも低賃金、超過勤務で疲れ果てていた。

      交渉は200ドルで決裂した。

      引用ーーー「年200ドルは戦前の数字だ。今貧困といわれるレベルは年収1500ドルで、ほとんどの警官はそれにはるかに及ばない。彼らは警察なのだ、それが黒人や女より低い賃金で働いている」市警の警官たちがストライキをすれば大企業が勝つ。ストライキを棍棒として労働組合員、アイルランド人、民主党員を殴り倒す、労働者階級は30年分後退することになるぞ」ーーー

      街は警官のストライキを引き金にして怒りや不満が爆発し暴動が起きると判ってはいた。だが先の暗さを感じながらストを回避できなかった。

      テロ、共産主義団体、アナーキスト、警官の労働組合の動きが気になる中で、警部の父はダニーの名づけ親(マッケンナ、ボストン市警部補)に言う。

      引用ーーー「フォン・クラヴゼヴイッツは、戦争はほかの手段をもってする政治だと思っていた」トマスは穏やかに微笑んで、ブランデーを口にした。「私は、政治こそほかの手段をもってする戦争だといつも思っていた。ーーー

      そういった中でダニーは警官の反政府思想に傾き、ついにストライキに入る。市民を巻き込んだ歴史に残る警官のストは、上層部の対抗措置のまえに犠牲者を出し、街を破壊する。
      市警察はスト関係者に解雇通知を出す。

      一方、ルーサーは手を出したギャングの世界でボスを撃つ。

      またしても関わったマッケンナはルーサーに言う。
      「わたしがタルサ市警に電話し、流血事件の唯一の生き残りに職務質問をしてくれと依頼し、その職務質問の途中で、タルサから来たルーサー・ローレンスという男がここボストンにいると相手に伝えてくれ、といわない限りな」眼が光った。「そうなると、あとどのくらい隠れる場所がある?」
      ルーサーは闘争心が湧くそばから死んでいくのを感じた。それはただ倒れ、枯れていった。

      ルーサーは保護者の持つ組織員のリストを渡す約束をさせられ、巻き込まれていく。

      次男コナーの事件は鉄鋼員に関するものだった。

      引用ーーーコナーはついに理解したーーーそして法律家でいる限りこの信条が自分の益になることを願ったーー最高の弁論とは感情や扇情的な修辞を拝したものなのだ。あくまで法に従い論争を避け前例に代弁させ、相手の弁護士に上訴でそうした法の健全さと闘うかどうかを選ばせる。これは一つの閃きだったーーー

      コナーは法の下、ダニーとは異なった道を歩き出した。


      当日、うちを出たジョーをさがしに街に来たコナーは暴徒に巻き込まれ、顔の横で割られた硝子で失明する。

      ストの日の後トマスの息子たちはそれぞれ傷をおった。ダニーは心身ともに疲れ、撃たれて人事不省に陥るが一命を取り留めた。
      コナーは未来を模索していた。
      父トマスは老けた。

      「運命の日」と名づけられた、ボストンの一つの歴史を初めてを読んだ。

      父の生き方と、三人の息子が夫々生き方を模索しながら、大きな時代の渦に巻き込まれ、心身ともに傷を負う。長い物語は、若い時代に進路の途中で大きな岐路に立っとき、どう選ぶか、どう生きるか、夫々の成長の記録でもあった。

      読みながら、デニス・ルヘインの映画で見た「ミスティック・リバー」の街がここでも鮮明な映像になった。


      『Dennis Lehane』の表記を「ルヘイン」に変えました。
      >> 続きを読む

      2015/03/25 by

      運命の日」のレビュー

    • あすかさん

      山田君、今年は200本を期待してますが、頼り過ぎない程度にチームが引き締まって欲しいです。

      家族はプロ野球は余り見ませんが、いつだったか、勉強はいいから「ニューシネマパラダイス」は見ておくのだ!!と部屋をノックして歩いて叱られました゚(*´□`*)゚
      >> 続きを読む

      2015/03/26 by 空耳よ

    • >勉強はいいから「ニューシネマパラダイス」は見ておくのだ!!
      素敵な教育方針ですね
      逆に勉強しちゃうかも。
      映画は、いずれ大きくなったら観る機会ありますしね。名作なら、なおさら(*^_^*)
      私なら喜んで「ニューシネマパラダイス」観てしまいます。笑

      なんかニュースでグリエルの契約とか退団とか不穏な空気が流れていたのでヤキモキしていましたが、こちらで野球語って落ちつきました。
      ありがとうございます。長々とお邪魔してすみません・・・
      明日ついに開幕だー、がんばろう(>_<)
      >> 続きを読む

      2015/03/26 by あすか


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