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クロストーク (新・ハヤカワ・SF・シリーズ)

5.0 5.0 (レビュー1件)
著者: コニー・ウィリス
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    「クロストーク (新・ハヤカワ・SF・シリーズ)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      【こんせ~ん!何でコイツとつながっちゃうのよ!イライラ感満載のコニー・ウィリスらしいSFラブコメ】
       主人公のブリディは、携帯端末会社に勤務するOLなのですが、ただ今、社内ゴシップランキング赤丸急上昇中です。
       というのは、会社で一番人気のイケメン男性社員トレントとの交際が発覚し、二人は近々EED手術を受けることになっていることがバレてしまったからです。

       EED手術というのが本作でコニー・ウィリスが仕込んだSFネタなんですね。
       詳しい説明は一切省略されているのですが、この手術を恋人同士、親族同士など近しい人同士で受けると、お互いの気持ちがよりよく伝わるようになるという簡単な脳手術なんです。
       トレントは、二人でEEDを受けてお互いの気持ちがつながったのを確認したら婚約しようと言い、ブリディも喜んでこの申し出を受けたのです。

       トレントは、仕事でも評価され、金回りも良く、ファッションセンスも抜群で、折々に花束を贈ってくれたり、一流のレストランにエスコートしてくれたりする女性社員憧れの的の男性なので、EED手術に関してもぬかりはありません。
       セレブ御用達の医師を押さえています。
       ただ、人気の医師であるため、予約がいっぱいで、二人が手術を受けられるのは数か月先になってしまうのですが。
       社内にはゴシップ好きの女子社員がわんさかいますので、そんな二人の様子はNow Live on air絶賛生中継中!
       というわけで、光の速さで社内を駆け巡っております。

       さて、ブリディには頭の痛い問題がありました。
       それはしょっちゅう介入してくる濃ゆ~い親族たちのこと。
       姉は超過保護ママであり、一人娘のよくできた9歳のメイヴのことが気になって仕方がなく、「メイヴがゾンビ映画を見ていたらしい」などの超くっだらない事に気を揉み、四六時中ブリディに電話をかけてきて相談を持ち掛けてきます。

       妹は男運最低で、いつも壊滅的ダメ男に引っかかっては痛い目に遭い続けているのですが全く懲りず、相変わらず出会い系サイトへの登録に情熱を燃やし、「ねぇ、ねぇ、どっちのサイトが良いと思う?」などのこれまた超くっだらない相談のため、こちらも始終ブリディにアクセスし続けます。
       
       最強なのはアイルランド命のウーナ伯母。
       ブリディの一族はアイルランド人なのですが、伯母はアイルランドの伝統と文化を至上のものと信じ込んでおり、ブリディにもその手の会合に顔を出すように強要し、結婚相手はアイルランド人の〇〇しかいない(異論は認めません!)と決めつけてくるような女性なのです。

       こういう濃すぎる親族たちが、ブリディの都合など一切無視して電話をかけまくり、メッセージを機関銃のように送り付け、自宅に無断で侵入し、会社にまで押しかけてくるという「あなたの都合やプライバシーなど一切認めません」状態になっているんです。
       当然ブリディがトレントと付き合っていること、二人がEED手術を受けようと考えていることも知られており、全員から猛反対されているのです。

       でも、ブリディだってせっかくつかんだ玉の輿ですので、親族たちの意向に従う気などさらさらなく、誰がなんと言おうと最愛のトレントと一緒にEEDを受け、結婚すると固く決意しているんですね。

       ブリディにはもう一つ頭が痛い問題がありました。
       社内一の変人と呼ばれているC.B.という社員がいるんですが、彼は技術的な面では天才と評価されているけれど、センス最悪、超キモいという男で、『ノートルダムの鐘撞男』とまで言われているような男性社員なんです。
       彼が何故かブリディがEEDを受けることに猛反対しており、おせっかいにもしつこく手術をやめるようにと介入してくるのです。

       あ゛~うるさい!
       あんたたちには関係ないでしょ!
       ブリディのイライラは頂点に達しそうです。
       そんな時、トレントからうれしいお知らせが。
       セレブ医師の予定が変更になり、二人のEED手術が前倒しになってすぐにでも受けられることになったというのです。
       やった!

       ブリディは女子社員たちの目をかいくぐり、C.B.を振り切り、Let's Go 病院!なのです。
       何とかうまく手術を受けた二人は、手術の効果が現れるのを心待ちにしています。
       個人差もありますが、大体麻酔が切れてから24時間位で、お互いの気持ちを感じられるようになるそうです。
       トレント、早くつながって~(は~と)状態で効果が現れるのを待つブリディなのですが……

       なんであんたとつながるのよ!
       ブリディに聞こえてきたのはトレントではなくとんでもないことにC.B.の声だったのです。
      大体、EED手術で得られるのはお互いの気持ちのつながり感や相互理解度の深まりであって、声が聞こえるなんて聞いてない!
       それなのに、ブリディとC.B.の間にはまるでテレパシーのように脳内会話が確立してしまったようなのです。

      悪夢だ!
       EEDはお互いの相性が良いほど、絆が強いほど効果が強く現れると言われているのに、よりにもよってC.B.とつながってしまったなんて!
       こんなことがトレントに知られてしまったら疑われてしまい、婚約も解消されちゃうかもしれないじゃないの!
       幸か不幸かトレントとはまだつながっていないので、トレントにこの状態を知られていない今のうちに医師にクレームつけて何とかしてもらわなきゃ!

       だけど、C.B.は、そんなことはやめた方が良いなどと脳内に話しかけてくるのです。
       混線してる?(『クロストーク』には混線という意味もあります)
       それとももしかしたら、C.B.は私とトレントの仲を裂こうとして、おかしな機械を病室に取り付けてトレントとつながるのを妨害しているのかもしれない、いやそうに違いない!(妄想全開)。
       ここから出なきゃ!

       点滴をむしり取り、無理をして病室を抜け出したブリディは、途端に具合が悪くなり、階段室でうずくまって動けなくなってしまいます。
       「今行く。そこから動かないで!」
       ブリディの異変に気付いたC.B.の声が聞こえます。
       あんたなんか来ないでよ!

       というわけで、何故か超キモ男のC.B.とテレパシーが確立してしまったブリディのすったもんだが描かれるラブコメSFなんですね~。
       ここまでレビューをお読みいただいたみなさんは、「でも、変じゃね? C.B.はEED手術を受けていないんでしょ?」って気付かれましたよね。
       そうなんです。
       じゃあ、何でブリディとつながったりしちゃったのでしょう?

       ブリディももちろんこのことに気付いて、C.B.を問いただします。
       C.B.は、「ぼくが他の人の声が聞こえるようになったのは13歳の頃からなんだ」と言うのです。
       何ですって?!
       「テレパシーなんて良いことは何もない。だからEEDなんてやめろって言ったんだ。」

       これは一体どういうことなんでしょう。
       そして、ブリディには恐ろしい事態が待っていました。
       どんどん色んな人の内心の声が勝手に聞こえるようになっていくのです。
       人は、口では当たり障りないことを言っていますが、その内心では相当エグいことを考えていたりします。
       そういう、容赦ない感情が暴力的にブリディを襲い始めたのです。

       「僕にも同じことがあった。すぐ行く。助けるから。」と言うC.B.なのですが、ブリディはやはりC.B.が信じられず、彼が何か妨害をしているに違いないと思えてならないのですが、しかし、大勢の人々のエグい感情の波にさらされてパニックに陥ってしまいます。
       どうなるブリディ?

       これまでにコニー・ウィリスの作品をお読みになったことがある方はよ~くご存知のとおり、彼女の作品の一つの特色は『超イライラ感』にあります。
       主人公が次々とトラブルに見舞われ、しかもまったく思うようにはならず、面倒ごとが山盛り沢山で、読んでいる読者は超イライラした状態に叩きこまれます。
       本作でもその特色はいかんなく発揮されており、私も無茶苦茶イライラさせられました。

       また、もう一つの特徴は軽妙な会話とユーモアなんですが、本作でもそれは同様で、マシンガントークのように濃ゆいユーモラスな会話が途切れなく連打されます。
       こういうところは、コニー・ウィリスを初めて読むと面食らってしまうところでもあるのですが、慣れてくるとこれが快感になっちゃうんですよねぇ(それは慣れたのではなく中毒しているとも言う)。

       コニー・ウィリスの他の作品群と比較してみると、本作は『航路』に近いテイストがあると思うのですが、『航路』はシリアスな話だったのに対し、本作は徹頭徹尾明るくてユーモラスな作品になっています。
       ただ、これから初めてコニー・ウィリスを読むという方に本作が適しているかというとどうでしょうねぇ。
       大体、本作はポケミス版で705ページもあるという分厚い超長編ですし。
       これをコニー・ウィリスの免疫なしにいきなり読むというのは……。

       穏当なところでは『オックスフォード大学史学部シリーズ』から始めるか(シリーズものなのですが、順番で言えば『ドゥームズデイ・ブック』→『犬は勘定に入れません』→『ブラックアウト』→『オールクリア』になります。こちらも結構ヴォリューミーですが)、あるいは『混沌ホテル』、『空襲警報』などの短編集から入ってみる方が良いかもしれません。

       いずれにしても、コニー・ウィリス・ワクチンを接種済の読者であれば心から楽しめる一作でございます。
       私は、夜、寝床で読んでいたのですが、なかなか途中で読むのをやめられず、夜更かししそうになって強制的に中断を繰り返して読み終えました。
       いつものウィリス節が堪能できる楽しい作品になっておりますよ。


      読了時間メーター
      □□□□□   しばらくお待ち下さい(5日以上、上限無し)
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      2021/02/17 by

      クロストーク (新・ハヤカワ・SF・シリーズ)」のレビュー


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