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鬼道の女王 卑弥呼〈上〉

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: 黒岩 重吾
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    「鬼道の女王 卑弥呼〈上〉」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0



      作家生活の晩年に、精力的に古代史を舞台にした小説を発表した黒岩重吾の「鬼道の女王 卑弥呼」(上・下巻)を読了しました。

      この作品は、卑弥呼が倭国を統一していく過程に、三国時代の大陸の状況を重ね合わせる構成が、史観と物語性の双方からみて、実に興味深い内容になっていると思う。

      物語は、戦乱を逃れて海を渡ったヒミコの父ミコトが、黄巾の乱が起こったため、帰国するところから始まります。

      作者の黒岩重吾は、ヒミコが使ったという鬼道は、大陸において反乱軍の精神的支柱となった"神仙思想"の流れをくむ"初期の道教"と想定しているんですね。

      つまり、日本に帰ってからヒミコが、邪馬台国を統一していく過程で起こる諸々の抗争は、こうした大陸からの先端思想と国内の旧勢力との文化的な対立を含んでおり、彼女の攻められなければ、他国を攻めないという姿勢は、墨子の"非攻"によるとの解釈をしていて、実に面白い解釈だと思いますね。

      このような作者の史観が示される中、この作品のもう一つの柱は、持てる可能性のために、神格化を余儀なくされたヒミコの人間的な飢餓感、生身の女としての苦悩であるように思う。

      ヒミコが、生涯で唯一、身体を与えた男ミチゴメが、彼女の神聖を汚すまいと宦官になるくだりは、まさに古代史版「春琴抄」ともいえるものだと感じましたね。

      作者は、二人の愛情と政治を巧みに物語に絡ませており、ラストでの狗奴国とヒミコ連合軍との対決に際し、ミチゴメがヒミコに最後の力を振り絞って、神託を得させる場面は、二人の純愛の勝利と終焉を描いていて、万感胸に迫るものがあります。

      特にこの場面には、女王の座が絶対神から象徴神へと変わりゆくことをも併せて、暗示する含みがあるのだと思う。

      公を支える文化と、個を支える愛情の力を、古代史の中に二つながらに活写した渾身の力作だと思う。


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      2018/03/12 by

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