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桜桃とキリスト もう一つの太宰治伝

5.0 5.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 2,300 円
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    「桜桃とキリスト もう一つの太宰治伝」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0


      太宰治。本名、津島修治は、津軽の富豪の家に生まれ、四十歳に至らずこの世を去った。

      修治が作家とならずにいれば、東大を出た、ただの放蕩者であったかもしれない。
      太宰治は、まさに血で血を洗うような悪戦苦闘を重ねる天才小説家であった。

      少なくとも、この「桜桃とキリスト もう一つの太宰治伝」の著者・長部日出雄は、そのように確信しているようだ。

      長部日出雄は、既に幼年時代から青年時代に至る太宰治を「辻音楽師の唄 もう一つの太宰治伝」に書いていた。
      この作品は、その継続として書かれている本だ。

      太宰治の全体像を描くこと、著者は自身の小説家としての使命をそこに見出していると思う。

      後に太宰の妻となる石原美知子は、太宰作品を読んでひそかにこの作家を敬愛していた。
      太宰治は、井伏鱒二を師と仰ぎ、自身の結婚を恩師に委ね、めぐる縁から彼は石原美知子と結婚することになった。

      誰の目から見ても無頼な新進作家と良家の子女との結婚に見えた。
      著者は、太宰治が何人もの女性と関わりがあり、山崎富栄との心中をもって生涯を終えることを念頭においているから、太宰と美知子の結婚への道までを美しく描いているのだと思う。

      桜桃の季節に亡くなった太宰治は、折々自分をキリストに重ねることがあった。
      著者は、イエスの「己を愛するがごとく、汝の隣人を愛せ」という言葉を、理想の極に見立てていた太宰を重く考えている。

      その言葉どおりにいかない自身を見つめながら、七転八倒する太宰治を、一般のクリスチャンとは異なるキリストに帰依する一人の人間と考えているのだ。

      その人間は、どうしても小説家ではなくてはならなかった。
      キリストの教えを全うしようとすればするほど、周囲の人々を犠牲の縁に追いやり、放蕩無頼を尽くし、自身を自殺に追い込まざるを得なかったのだと思う。

      晩年には、天のように仰いだ師の井伏鱒二をすらあしざまにののしったりしたのだった。

      誠実に自らを苦しめ、なおかつ家族を苦しめ、誠実に放蕩しつくし、誠実に死んでいった太宰治の姿が、長部日出雄の筆をとおして、生き生きと描かれている。

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      2018/08/09 by

      桜桃とキリスト もう一つの太宰治伝」のレビュー


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