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飛ぶ孔雀

2.5 2.5 (レビュー1件)
著者: 山尾 悠子
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    「飛ぶ孔雀」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      【移ろい続ける夢のような幻想譚】
       山尾悠子さんは大好きで、これまで手に入る本は漁って読んできたのですが、もう大分長く書かれなくなっていたので、まさか新作が読めるとは思ってもいませんでした。
      本書は、本当に久し振りに山尾さんが書かれた2作を収録した本です。

       『飛ぶ孔雀』は2013年に『文學界』に発表された作品。
       『不燃性について』は、本書のために書き下ろした作品ということです。
       実は、この二つの作品は緩やかに連関しているのです。
       シブレ山の石切り場で事故があって以来、火が燃えにくくなったという共通の背景を持った物語なんです。

       さて、この2作についてご紹介したいのですが、それははなはだ困難なことなのです。
       実際に読んでいただければお分かりになると思うのですが、はっきりとした筋があるという作品ではなく、場面は次から次へと夢のように移ろっていき、手の中からするするすると零れ落ちて行くばかり。
       結局どういう話だったの?と聞かれても、「さあ……」としか答えられそうにもありません。
       どちらの物語も大変に幻想的で、まさに山尾さんらしい作品ではあるのですけれど。

       『飛ぶ孔雀』の方は、場面は様々に移ろっていくのですが、最後は川中島Q公園で開かれる大茶会の場面になります。
       火が燃えにくいのです。
       ですから、6つある茶亭へ火を届けなければなりません。
       ただし、芝生を踏んではいけません。
       トラクター使用禁止。
       話しかけられたら返事をすること。
       火を落としたらそこで終わり。
       関守石に注意。
       大温室は関係ない。

       2人の女子高生は、それぞれ火を持って逆回りに火を届けに行きます。
       しかし、石燈籠の空洞君(そういう名前で呼ばれているのです)は、関守石をどんどん生み出し、一人の子は石に行く手を阻まれてしまいます。
       でも、公園には空を飛んでくる孔雀がいます。
       孔雀は関守石をつまんではどかすのです。

       あぁ、こう書いても何だか分からないでしょ?
       でもね、良いんですよ~。
       この作品の雰囲気は、泉鏡花+宮沢賢治のように感じました。

       2作目の『不燃性について』はさらに混沌としてきます。
       町の三角ビルに巣食う劇団があるのですが、その一番の下っ端の劇団員は初舞台で下手を打ってしまいます。
       それが理由かどうかは今一つはっきりしませんが、山(シブレ山でしょうか?)の上にある『頭骨ラボ』に働きに行かされることになります。

       『頭骨ラボ』というのがまたよく分からない施設なのですが、どうやら動物の頭骨から肉などを削ぎ落して頭骨の標本を作っているように思われます。
       しかも、その劇団員は『頭骨ラボ』に送り込まれる前に、強引に見ず知らずの少女と結婚させられてしまうのです。

       『頭骨ラボ』周辺もよく分からないところで、地下4階もある公共温泉があったり、そもそも『頭骨ラボ』って山頂にいくつかある温泉ホテルと同じなんじゃないか?と思えてきたり。
       山には大蛇が住んでいるとか、窪地に何度も雷が落ちるとか、路面電車の女性運転士が公共温泉の地下で売っている茹で卵を密かに配達しているとか……。
       あぁ、もうどうなっているんでしょう?
       こちらの物語もすこぶる付の幻想譚なのですが、雰囲気的にはつげ義春ですね。

       物語の筋を追っていくというよりは、次々に展開される異様で不思議な光景に身を委ねて行く読書という感じがしました。
       また、使われている言葉に非常に味があり、山尾さんらしいなぁと感じました。

       私は山尾さんが好きなので、いささか贔屓目に読んだかもしれませんし、難解で何が書いてあるのか分からないと言われれば「そうかもしれませんね」としか答えようがないのですが、遂に新作が読めた!といううれしさいっぱいになる読書ではありました。
       山尾さんが好きな方は要チェックですよ~。


      読了時間メーター
      □□□     普通(1~2日あれば読める)
      >> 続きを読む

      2020/09/16 by

      飛ぶ孔雀」のレビュー


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