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ミザリー (文春文庫)

4.5 4.5 (レビュー2件)
著者: スティーヴン キング
定価: 700 円
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    「ミザリー (文春文庫)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      【凝縮された恐怖】
       本作の主人公、ポール・シェルダンはベストセラー作家です。
       代表作は、『ミザリー』という女性を主人公にしたシリーズ物でした。
       確かに大変売れているシリーズなのですが、ポールにしてみればこの作品はただ売れるだけの作品であり、自分の作家としての力量を十分に示した作品ではないと考えていました。

       そこで、ポールは、遂に作中でミザリーを殺してしまったのです。
       それは、まるでコナン・ドイルがホームズにウンザリした挙げ句、ライヘンバッハの滝にホームズを突き落としたように。
       これが『ミザリー』シリーズの最終作、『ミザリーの子供』でした。
       この作品は、間もなく出版されることになっていました。

       ポールはミザリーをやっかい払いした後、すぐさま次の作品に取りかかっていました。
       これは、ミザリーシリーズとは全く異なる作品で、これこそ自分が書きたかったものだとポールは考えていました。
       そして、今、最新作の最後に『end』の文字を打ち終わったところでした。
       「完璧な作品だ。絶対の自信作だ。」
       ポールは、書き上げたばかりの原稿を持ち、嵐が接近しているというのに車に乗って走り出したのです。
       それは、傑作をものにしたという高揚感だったのかもしれません。
       「ニュー・ヨークなんかに帰るものか。」と。

       ……鈍く、重苦しい眠りから目覚めたポールは、自分が見知らぬ家のベッドに寝かされていることに気づきます。
       両足には激痛が。
       「私はあなたのナンバー・ワンのファンなのよ。」
       アニー・ウィルクスと名乗る、雌牛のようなごつい中年女性が立っていました。

       ポールは、嵐が近づく中車を運転していて事故を起こしてしまったのでした。
       そこに偶然通りかかったアニーがポールを助け出し、町から離れた自分の家に連れ帰ったのでした。
       アニーは、元看護婦でした。
       「誰もがしていることよ。」
       アニーは、自宅に大量の様々な薬をため込んでいたのです。
       その薬を使ってポールを治療していたのでした。

       でも、何故警察や病院に連絡しないのか?
       ポールの両足は、治療をしてあるとは言え、ぐちゃぐちゃに潰れているというのに。
       「だって、私はあなたのナンバー・ワンのファンなんだよ。ミザリーのファンなのさ。全部読んだよ。」

       アニーは、ポールを強力な薬で薬漬けにしていました。
       ポールは、激しい足の痛みから逃れるために、アニーが渡してくれる薬が無くてはいられない状態にさせられてしまっていたのです。

       ある日、アニーは、「あんたの最新作、『ミザリーの子供』を買ってきたよ。」と嬉しそうにポールに言うのでした。
       「それは……」
       そして、アニーは激怒したのでした。
       「何だってミザリーを殺しちまったんだい!」

       その後、アニーは、ポールに対して、「あんたが持っていたあの原稿、読んでも良いかい?」と聞くのでした。
       それは、ポールが書き上げたばかりのあの最高傑作の原稿です。
       ポールは、これまでもそうでしたが、完成した原稿の写しを取らない主義だったのです。
       「それは構わないが……」

       「あれは良くないね。あな物を書いちゃいけないんだ。あんたはミザリーだけを書けば良いんだ。」
       アニーは、ポールが最高傑作と考えている原稿を燃やすように迫るのでした。
       「素直に言うことをきかないなら、薬はあげられないね。」
       完全に薬物中毒にされていたポールは、断腸の思いで原稿に火をつけたのでした。

       その後、ポールは徐々に回復し、車椅子に乗ることができるようになりました。
       アニーは、ポールに対して、「書くんだよ。ミザリーの続きを書くんだ。」と迫ります。
       「そんなこと言っても、ミザリーは死んでしまったんですよ。」
       そんなことで引き下がるアニーではありませんでした。
       nの文字が欠けた中古のタイプライターを買ってきて、ポールに与えたのです。
       「書くんだよ。」

       何とも恐ろしい話です。
       粗筋はご紹介したとおり、監禁され、薬漬けにされたベストセラー作家の運命を描いたものです。
       極めてシンプルな筋立てで、非常に凝縮された感じを受けます。
       主人公は、まるでキング自身のことを書いているかのようでもあります。
       作品を書き上げる過程や、ファンとのやりとりなど、まさにキングが経験したのではないかと思われる出来事も書かれています。

       事実、キング自身、『あなたのナンバー・ワンのファン』という人たちには随分と苦しめられたそうです。
       ある時、やはり『ナンバー・ワンのファン』と自称する男から強引に「一緒にポラロイド写真に写ってくれ」と頼まれたことがあったそうです。
       キングが渋々応じると、「サインもしてくれ」と言われて、仕方なく言われたままに写真にサインをしてやったことがあったのだそうです。
       その男は……、後に、全く同じ手口でジョン・レノンに近づき、ジョンを射殺したマーク・チップマンだったのだそうです。
      >> 続きを読む

      2019/09/10 by

      ミザリー (文春文庫)」のレビュー

    • 評価: 5.0

      モダン・ホラーの巨匠と言われるスティーヴン・キングの小説の中で、特に好きなのが、サイコ・スリラーの傑作「ミザリー」です。

      この小説はロブ・ライナー監督、キャシー・ベイツ、ジェームズ・カーン主演で映画化され、特に偏執狂的な主人公の女性を、狂気に満ちた迫真の演技を披露したキャシー・ベイツは、アカデミー賞の主演女優賞を受賞しましたが、しかし、原作の小説と映画を比較してみると、やはり人間の内面描写に限界のある映画では、原作の心の底から震撼する怖さ、面白さが半減していたように思います。

      この「ミザリー」は薄倖のヒロイン、ミザリーの物語で、数々のベストセラーをとばす人気作家のポール・シェルダンが、コロラド州の山の中で車の運転を誤り、崖から落下してしまいます。

      目を覚ますと、そこには見知らぬ中年の女性が立っています。彼女はアニーと名乗る元看護婦で、ポールの人気シリーズ・ミザリー物の愛読者だったのです。偶然、事故の現場を通りかかり、彼を助けて連れ帰って来たと言うのです。

      両足を骨折したポールの看病をしてくれますが、どこか狂気の影を宿しているのです。アニーは今、ポールの新作「ミザリーの子供」を読みかけていると言いますが、それを聞いてポールは内心、不安を感じ、慌てるのです。

      実は、このシリーズ物の限界を感じ、また、主人公のミザリーにもうんざりし、この物語の最後で殺して、シリーズの幕を下ろしたのです。すると、案の定、この「ミザリーの子供」を読了したアニーは烈火のごとく激怒し、ベットの上で動けないポールに対し、ミザリー物を復活させるようにと、ありとあらゆる虐待を開始するのでした----。

      この小説は面白い。本当に面白い。作家と偏執狂的な狂気の愛読者の対決という、二人の密室劇を約500ページの長編にして、尚且つ、少しもペースを落とさずに、ハイテンションを保ったまま一気に語り尽くしてしまうとは、このスティーヴン・キングという作家の何たる凄さ、何たる才能だろうと驚嘆してしまいます。

      何より圧倒的な、そのストーリー・テリングのうまさ、そして、過激でユーモアを忘れないシニカルな語り口の凄さには、本当に舌を巻いてしまいます。

      ただ、敢えて言えば、この小説のラストで、ホラー映画の定番の展開を見せる点が少しひっかかりますが、しかし、小説家の内面の葛藤を、極めてリアルに鬼気迫るものとして描いた点は、多少の欠点を補ってあまりある程、本当に読み応えのある素晴らしい小説だと思います。

      ホラーとしても、ちょっと変わった芸術家小説としても、もちろん緊迫感みなぎるサイコ・スリラーの傑作として、スティーヴン・キングは少し苦手だという人も含めて、多くの人にお勧めしたい傑作だと思います。





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      2016/09/29 by

      ミザリー (文春文庫)」のレビュー


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