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御宿かわせみ (文春文庫 ひ 1-8)

5.0 5.0 (レビュー1件)
著者: 平岩 弓枝
カテゴリー: 小説、物語
定価: 500 円
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    「御宿かわせみ (文春文庫 ひ 1-8)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      作家の平岩弓枝さんが文化勲章を授賞されましたが、平岩さんの「御宿かわせみ」シリーズを長年愛読している一読者として、非常に喜ばしく、本棚の奥から1冊取り出し、再読、というより、私にしてみれば折りにふれて読んでいるので、これで5~6回目くらいなのかも知れませんが、読書の悦びに浸りながら、この日は豊饒な時間を過ごしました。

      時は幕末、大川端の小さな旅籠「かわせみ」の女主人るいは、もと八丁与力の娘。父の死後、役宅を返上し、半年間の町屋暮らしを経て、「かわせみ」の女主人となったのです。

      るいの幼馴染の東吾は、南町奉行所の吟味方与力の神林通之進の弟で、講武所教授方で軍艦操練所に通う、神道無念流の遣い手。

      このるいと東吾は相思相愛の仲ですが、東吾の兄の通之進は、妻の香苗との間に子供がなく、東吾に跡を継がせたいと考えているのです。そうなると、今のるいは東吾にはいわば身分違い----。

      そして、この二人に東吾の親友で堅物の八丁堀定廻り同心の畝源三郎、おしゃべりだが気のいい女中頭のお吉、昔は凄腕で鳴らした元八丁堀の捕方、老番頭の嘉助、深川の蕎麦屋「長寿庵」の主人で岡っ引きの長助といった人々に、温かく見守られながら、切ない二人の思いは募りゆくのです----。

      かつて、「グランド・ホテル」という映画がありましたが、この映画はベルリンのホテルを舞台に、そこに泊まりあわせた5人の宿泊客の1日半の人生模様を描いていて、後に、この"限られた時間と場所に様々な人物を登場させる作劇法、グランド・ホテル形式"の原点ともなりました。

      この平岩弓枝の連作シリーズの「御宿かわせみ」は、時は黒船が人々の安眠を妨げるようになった幕末、場所は大川端の小さな旅籠かわせみ。

      物情騒然となり始めた人と時代の諸相を、"捕物帳的な要素を取り入れたグランド・ホテル形式"で書き始められ、私を含む数多くの読者の圧倒的な支持を得て、長大なシリーズとなったのが「御宿かわせみ」なのです。

      私がこの「御宿かわせみ」シリーズを捕物帳ではなく、捕物帳的な要素を取り入れた小説だと思うのは、このシリーズは一話完結という形で江戸の町に起こる様々な事件を解決していくものの、シリーズ全体の縦糸として、"るいと東吾との忍ぶ恋"を描くという趣向が取られているからなのです。そして、この二人を温かく見守る人々の輪が、彼らの恋をどこまでも盛り立てていくのです。

      このような家族、もしくはそれに類する人々などの地域の共同体の中での"絆や交情"を描く事は、平岩弓枝という作家の最も得意とするところではないかと思います。

      代々木八幡の宮司の娘として生まれ、幼い頃から日本舞踊や三味線などの芸事を習い、更に小説家を志してから、長谷川伸の門下生となった平岩弓枝には、常に自分の成長を見守り続けてくれたグループ、すなわち、"人の輪"が存在したはずなのです。

      家族と、そして家族とは似て非なるものですが、時にはそれ以上の存在となる地域の共同体に対する認識、思い----、そういったものが、このシリーズの中では、かつてあったはずの"江戸の残り香"ばかりでなく、今日、我々の周囲にほとんど朽ち果てながらも残っている"生活の原風景"さえも、生き生きと再現してくれるのが、平岩弓枝作品の素晴らしいところだと強く思います。

      「水郷から来た女」「江戸の怪猫」などの優れた作品がこのシリーズには数多くありますが、作中で東吾の兄、通之進をめぐる秘めたる恋が語られる「白萩屋敷の月」は、傑作中の傑作で、このシリーズ中の白眉ではないかと思っています。

      そして、主人公のるいと東吾は、シリーズ15巻目の「恋文心中」に収められた「祝言」で長い間の忍ぶ恋に終止符を打ち、ようやく結婚する事になりますが、この作品が雑誌に掲載された時には、平岩さんのもとに多くの読者から祝電が送られたという微笑ましいエピソードが残っているそうです。

      こうしたエピソードからも、るいと東吾が作者の手を離れ、あたかも実在の人物であるかのように、我々読者の間を一人歩きしている人物になっているのだと思います。

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      2016/11/04 by

      御宿かわせみ (文春文庫 ひ 1-8)」のレビュー


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