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トラや (文春文庫)

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: 南木 佳士
定価: 545 円
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    「トラや (文春文庫)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      愛猫トラとの日々と別れといった物語らしいので、猫好きのわたしとしては読まない訳にはいかない。
      物語というよりも、作者自身のことを綴ったエッセイとでもいうべきだろうか。

      医師として暮らす中、あるときから鬱病で苦しみはじめる。
      そんな折り、野良猫のトラを子供の願いによって飼いはじめる。
      そのトラとの日々と、鬱病が落ち着いていく様が描かれる。

      物語としてはこれだけ。
      病と闘って劇的に回復もしない、猫も普通の猫。
      ただ、こういった普通の日々を穏やかで淡々とした文章で描くことの上手い作家さんだと感じる。
      そういった文章だから、トラをなくした寂しさも余計に伝わってくる。

      この作家さんの書く文章が沁みてくる理由は、わたしにはもうひとつある。
      わたし自身が鬱病だからだ。
      今はもう随分落ち着いて、殆ど日常にも支障はない。飲めば満腹になる程だった薬の量も、随分減った。
      でも、この作家さんのように、そうなるまでには十年以上かかった。
      南木さんにとってのトラは、わたしにとってのジュリーだった。

      今思うと、どうしてあんなに死にたいと思ったのかわからない程に、何かと理由もなく死にたくなった。
      踏切のカンカンという音を聞けば、飛び込んだら楽になれるかなと思ってしまうので踏切には近づかない。
      包丁を見ると、これで首を切ったら楽になれるかなと思ってしまうのでキッチンに入らない。
      それでも自分でもわからないうちにスカーフを捻りながら、どこに吊ろうかと天井を見上げていたりすると、ジュリーが脚に顔をこすりつけてきたりした。

      そんなジュリーは、夫にわたしを託すと安心したように眠りについた。
      そう感じた。
      ジュリーがいなかったら、一体何回死んでいたかわからないくらいに彼はわたしを救ってくれた。
      ジュリーが19年も生きてくれたのは、自分が死んだらどうなってしまうかと思うと、死んでも死にきれなかったからじゃないかと感じる。

      夫がジュリーをなくして沈んでいるわたしに、今の愛犬を買ってくれた。
      猫と迷ったけれど、猫だとジュリーを思い出して余計に辛いかと思ってと。
      我が家の愛犬は、ジュリー同様に不安定なわたしを支えてくれる。
      おかげで少し元気になった頃、野良猫を保護したかたから譲り受けた。
      ジュリーとはまた異なる猫らしい猫。

      南木さんの本を読むと、そんなことが思い出される。
      嵐のようというより、長く雨がつづいたような日々だった。
      雨ばかりで気持ちが塞いで、周りを見ることもできなくて、雨音で何も聞こえない。
      そんなときにジュリーは無理矢理にでも存在に気づかせてくれていた。
      ボクここにいるよ。ひとりじゃないよ。
      そう言っていた気がする。
      今年もジュリーのなくなった日が近づいてきている。
      >> 続きを読む

      2015/09/23 by

      トラや (文春文庫)」のレビュー

    • 空耳よさん
      コメントありがとうございます。

      わたしは二冊しか読んでいないので何とも言えませんが、作風にも影響はするでしょうね。
      人間は、動物には救われてばかりですね。
      >> 続きを読む

      2015/09/24 by jhm

    • 課長代理さん
      コメントありがとうございます。

      眠れなくなりますよね。
      寝なくてもいいや、本がいっぱい読めて寧ろラッキーなんて今は思えるのに、なんとしても寝ないととムキになったりもしますよね。
      わたしはまず痩せたので、癌じゃないかって大騒ぎされました。胃カメラも飲みました。本人に痩せた自覚がないのも不思議です。
      死にたくはなくなりましたが、依然死にたくないとも思わない。こういった気持ちも加齢に伴い変わっていくのかな。死にたくないと思えるようになるといいです。
      課長代理さんも無理せずご自愛くださいね。ぼちぼちいきましょう。
      >> 続きを読む

      2015/09/24 by jhm


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