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月のしずく

3.5 3.5 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 610 円

三十年近くコンビナートの荷役をし、酒を飲むだけが楽しみ。そんな男のもとに、十五夜の晩、偶然、転がり込んだ美しい女―出会うはずのない二人が出会ったとき、今にも壊れそうに軋みながらも、癒しのドラマが始まる。表題作ほか、子供のころ、男と逃げた母親との再会を描く「ピエタ」など全七篇の短篇集。

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    「月のしずく」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      七編の短編集。知人から薦められて読みました。
      それらすべてに大人の関係が書かれていたので……そこそこ成熟されている方向けの小説です。
      事の顛末を詳細にねちっこく書かれていたわけではなく、あくまでもさらっとなのですが、これ十代の方が読むのは似合わないですね。
      不倫関係にある登場人物が多かったのと、時代が一昔前のものばかりだったので。
      薦めてきた方、私より年下なのですが、渋いものを読む。あとで訊いたら、自分自身なぜ読んだのかわからないと言われた。なぜその本を薦めたんだ^^;

      この本のタイトルにもなっている『月のしずく』
      主人公は荷役の43歳独身男、佐藤辰夫。
      辰夫は、十五夜の晩に、家庭を捨てた金持ち男松岡と、その彼と付き合っている銀座の美人ホステスリエとの喧嘩別れの現場を目撃する。
      松岡はリエを殴り、一人ベンツで走り去ってしまう。
      置き去りにされたリエを介抱しようと、辰夫は彼女を背負い、自宅へ向かう。そこから、美女と野獣の共同生活が始まった。
      その内辰夫はリエに想いを寄せる。リエが別れた男の子を身ごもっていても、彼はリエの中絶を止め、彼女も子供もすべてを受け入れて愛そうとする。そんな辰夫にリエは……
      あらすじはこんな感じです。

      『月のしずく』が何を指しているのか。
      これは「人情」や「慈悲」という言葉が挙げられるのではないでしょうか。

      ――お月さまのかけらは、どこへ行ってしまったのだろう。
      もしかしたらそれは、コンビナートの高炉の炎に焼かれて、ひと夜のうちに溶けて流れてしまったのではないかしら。
      リエは壊れた時計を拾い上げ、腕に巻いてみた。これは、月のしずくだ。
      そう信じた途端、松岡から贈られた時計は指の間から滑り落ちた。――

      この文章から『月のしずく』は、慈悲の涙、憐れみの心、人情を指し示しているのかなと。
      「壊れた時計」というのは辰夫からプレゼントされた安物だ。
      ここでリエは、お金や高価な物よりも大事な「人の心」というものに気がつき、出て行ってしまった辰夫の後を追いかける。
      辰夫がくれた時計をつけ、松岡の時計が滑り落ちたのは、最終的に辰夫と共に過ごす時間をリエは選んだのだ。
      その後の展開は読者の想像にお任せするような終わり方だったが、この時計のくだりでリエは辰夫と共に生きるのではないかと連想した。

      「辰夫」
      「安物の時計」
      「喪われたふるさとの海」
      それと、
      「松岡」
      「(松岡からリエに贈られた)高価な時計」
      「札束」
      「埋立地」
      「工場」
      話の中で出てきたこれらの言葉を考えてみると、
      人情・人間味と、豊かさやお金と引き換えに失ってしまった人の心の対比が話の中でさりげなくいくつも含まれている。

      これまで、数々の男に愛されたリエだったが、その愛に応えた事はなかった。しかし、たった一人辰夫にだけは、彼の部屋を掃除するという今までに無い行動を取る。
      リエが初めて男の部屋(辰夫の部屋)を掃除した時、彼女は心の中で「ご恩返し?――いや、ちがう」とはっきり否定している。
      今までリエの事を愛した男達は、金品を与え、彼女を抱く人ばかりだったのではないか。
      お金や物は与えてくれるものの、そこに「人としてもっと大事なもの」は感じられなかった。
      それに対し、辰夫はリエに一切手を出そうとせず、彼女の罪もすべて受け入れ、今までの男達とは違ってお金は無いものの、自分なりに愛そうとする。
      前の男は自分の家庭を捨ててまでリエと一緒にいる事を選んだが、辰夫は誰の人生も捨てようとはしない。自分を大事にしないリエも、リエのお腹の中にいるのが他の男の子供であっても辰夫は受け入れる。
      リエの掃除は「罪滅ぼし」のような意味合いが含まれているのではないか。
      今まで、様々な男達を振り回し、自分も傷ついてきた。
      しかし、今まで会った男達とは違い、辰夫はあたたかな「人としての心」を持っていた。そんな辰夫と触れ合ったリエの心に変化が起き、このような行動に出たのだ。

      ――初めての床で、松岡は愛の言葉のかわりに女房自慢をした。それぐらい、ベッド・マナーを何ひとつ知らない男だった。あのとき正体に気付くべきだったのだ。
      あくる日、どうしてもお揃いの時計が欲しいとせがんだ理由を、松岡は知るまい。あのとき、リエの心の中の悪魔が言ったのだ。あなたの人生が欲しい、と――
      ――松岡に求婚された時、二年前に見たその写真が甦った。瞼の裏に貼りつけられたように、ずっと離れない。思い出すたびに心がささくれだって、リエは黴臭い布団の端を噛んで泣いた――
      と、作中にそんなシーンがあったのだが、リエは実は嫉妬していた。
      男性との時間を独り占めしたい思いがあった。幾多の男性と関係をもっていたものの、独占欲は意外と強かったのではないだろうか。

      他の方のレビューで「浅田次郎の作り上げたキャラクターは、王子様というよりキリストだ。わがままで自分勝手な女をも愛し、またその女の腹に宿る子(たとえそれがよその男の種で)さえ慈しむ。なんという慈悲深さ」と書かれていたのを見つけた。
      私も、この小説に出てくる男性陣が「こんな人本当にいるのか?」という位の善人なので、彼らは一体何者なんだろうと疑問だった。
      作中『月のしずく』のリエも辰夫宅の縁側で(――この人はいったい誰なんだろう)と考えていたし、他の男の子供を身ごもっているリエに対し「産んで下さい」と懇願された時、
      ――「あなた、誰なのよ。いったい、誰なのよ」
      人間の男ではない何者かが、月明かりの中でじっと自分を見つめている――
      という一文がある。
      他短編の『ピエタ』に出てくるリーさんといい、本当に彼らは何者なんだろう。キリストの体現なのかなあ。
      >> 続きを読む

      2016/04/03 by

      月のしずく」のレビュー

    • >自分自身なぜ読んだのかわからないと言われた。なぜその本を薦めたんだ^^;

      吹き出してしまいました(笑)
      私は、人に本を薦めるのって結構勇気がいるので。
      >> 続きを読む

      2016/04/04 by アスラン

    • コメントありがとうございます^^

      多分、暇つぶしの為に選んだかもなあ^^;

      自分が「良い」と思った本でも、
      相手がどう感じるかわからないですしね。受け取り方は人それぞれです。
      >> 続きを読む

      2016/04/04 by May

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      徳間書店 (2011/06)

      著者: 浅田次郎

      • 評価: 5.0

        昔読んだ時と感想が変わり、ただの感動物語ではなくてテーマがあることに気づいて読めた。
        表題作と二番目と最後は5回以上読み返してみた。
        また忘れた頃に読みたい。

        2014/11/14 by

        月のしずく」のレビュー

      文藝春秋 (1997/10)

      著者: 浅田次郎

      他のレビューもみる (全2件)

      • 評価: 4.0

        短編7編を収録。

        ・月のしずく
        ・聖夜の肖像
        ・銀色の雨
        ・琉璃想
        ・花や今宵
        ・ふくちゃんのジャック・ナイフ
        ・ピエタ

        全て、男女や母娘など、人間関係がテーマ。
        どれも味わい深く、泣けるものや、切なくなるものなど感情を揺さぶられる作品が揃っている。

        一番印象に残っているのは、終電を降り過ごした男女を描いた「花や今宵」
        有りそうで無さそうなシチュエーションな上、2人の距離の縮まり方がとても素敵に感じた。

        「姫椿」に続き、浅田次郎作品としては2作目だが、やはり安定の満足感。
        次々と読んで行きたい衝動に駆られる。

        ◆姫椿
        http://www.dokusho-log.com/b/4167646048/
        >> 続きを読む

        2014/09/27 by

        月のしずく」のレビュー

      • 短編のタイトルも素敵なものが多いですね〜♪
        浅田次郎作品は壬生義士伝も良かったですよ! >> 続きを読む

        2014/09/27 by chao

      • 月の雫ってお店がありますよね~。
        月って書かれるとなんか弱いんですよ~。

        2014/09/27 by 月うさぎ


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