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いのちなりけり

4.5 4.5 (レビュー2件)
著者:
カテゴリー: 小説、物語
定価: 620 円

あの時桜の下で出会った少年は一体誰だったのか―鍋島と龍造寺の因縁がひと組の夫婦を数奇な運命へと導く。“天地に仕える”と次期藩主に衒いもなく言う好漢・雨宮蔵人と咲弥は、一つの和歌をめぐり、命をかけて再会を期すのだが、幕府・朝廷が絡んだ大きな渦に巻き込まれていってしまう。その結末は...。

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    「いのちなりけり」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      九州佐賀藩の鍋島家と龍造寺家の因縁、島原の乱の際に生き残った黒滝五郎兵衛 の因縁によって、雨宮蔵人と咲弥の夫婦が、数奇な運命へと導びかれていくお話でした。

      雨宮蔵人が天源寺家の入婿した夜、咲弥から自分の心を表す和歌があるかと聞かれ、見つかるまでは寝所を共にしないと宣言されますが、真面目に咲弥に伝える和歌を考えているうち、陰謀に巻き込まれ、16年離れ離れになります。

      蔵人が飛脚に変装して、京都の円光寺から東海道を江戸に向かう場面から涙が…。
      黒滝五郎兵衛 :江戸の死地へ向かって走るとは雨宮蔵人は愚か者だ。いや、江戸まで無事にたどりつけるかも怪しかろう。
      深町右京 :たとえそうであっても蔵人は走りましょう。蔵人殿は恋をしてござるゆえ 

      蔵人が咲弥に伝えた和歌が 
      「春ごとに花のさかりはありなめど、あひ見むことはいのちなりけり」
      (春がおとずれるごとに花の盛りはありますが、その花に会えるのは自分の命しだいです) この意味が、本当に蔵人の心を表していて、心に響きました。
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      2020/03/26 by

      いのちなりけり」のレビュー

    • 評価: 4.0

      備前小城藩ゆかりの咲弥は才色兼備で評判の女性だった。藩内の変事の後、佐々木宗淳(通称介三郎・・助さん)の後見で水戸藩江戸屋敷に預けられていた。光圀の側室との願いも断る。咲弥には待っている人がいた。二番目の夫間宮蔵人である。歌を返さなかった夫のことが次第に分かってきていた。
      最初の夫がなくなり、蔵人が夫に決まったとき、格下の家柄が問題になった。周囲から蔵人の従兄弟の右近なら申し分ないのだがという声に、父親の行部は彼の人柄を見込んでいた。
      だが祝言がすみ、床入りの前になって咲弥が蔵人に尋ねた、「あなたの心を表す好きな歌を一首」
      しかし無骨者で素養のない蔵人は答えられず、それ以後寝所に近づくことがなかった。

      小城藩の本藩佐賀鍋島藩は、キリシタンの動きを禁じる江戸幕府とともに、原城攻めを開始した。だが信綱の命を無視して不意に夜攻めを行い、先駆けをした。
      信綱もそれに続かざるをえなかったが、大きなしこりが残った。
      鍋島藩では後の世に伝わるような内々の紛争が続いて、小城藩でも跡を狙う行部の暗躍があった。

      蔵人に舅の行部を討てと命が下った。彼は引き受け、多少の迷いがあったものの、討たなくてはならない窮地に追い詰められる。行部は死んだ。藩外に出ることが出来ない決まりを無視し、彼は山越えで出奔した。
      そして、彼が求める「心の歌」を探し続ける。
      途中で知り合った牢人に世話になり教えを受ける。

      湊川で咲弥と会うことになったが、原城責めの折から遺恨のある果し合いを挑まれ、同行していた右近は腕を落とされた。蔵人は彼を縁のある伏見の円光寺で看病する。傷が癒えた右近は世を捨てて出家する。
      円光寺は由緒があり格式の高い寺で、京都の内裏と和歌の道で繋がっていた。右近は祐筆を賜る。
      蔵人は、放浪生活で様々な辛酸をなめ、生来の豪放でまっすぐ心をさらに深くしていく、自分の生き方を定め、人にも言い、生きる指針にする。

      「歌はつまるところ、雅とはひとの心を慈しむ心ではあるまいか」
      「わしは桜も好きだが、ひとは山奥の杉のように人目につかずに、ただまっすぐに伸びておるのがよいと思う」
      と右京改め清厳にいう。
      「ひとが生きていくということは何かを捨てていくことではなく、拾い集めていくことではないのか」
      「わしは祝言の夜、すきな和歌を教えてくれといわれて答えられなかった。それで、たったひとつわかったことがある。それは、わしには咲弥殿に伝えたいことがある、ということだ。わしの生きた証は咲弥殿に何かを伝えることだ」

      再び約束の両国橋に向かうと、執拗に遺恨を晴らしたい侍に囲まれる。蔵人は咲弥に向かって命がけで血路を拓いていく。

      解説でも「蝉しぐれ」を引き合いに出している。どことなく雰囲気が似ている。
      佐賀藩は非常に複雑な内情を抱えている。前半まではその藩制やごたごた、水戸江戸屋敷で光圀の「大日本史」編纂の話など長い。だがあの時代の地方と江戸のつながりは、葉室さんの得意の分野かも知れず、面白い

      一方そんな時代に、制度や窮屈な武士の世界を捨て、武芸で生きるおとこがすがすがしく、武術に秀でているために自分を救うがそれで他を傷つけてしまう時代に、人に仕えず天地に仕えるという生き方を通した男と、それを信じた女の純愛物語だった。
      蔵人が咲弥に送った、一行だけの西行の歌。

      春ごとに花のさかりはありなめどあひ見むことはいのちなりけり


      伏見にあった円光寺は今詩仙堂近くに移築されているそうで、家康が送った日本初の活字があるそうだ。見に行きたいと思う。
      >> 続きを読む

      2016/08/19 by

      いのちなりけり」のレビュー

    • 葉室麟さん、優しい雰囲気が作品に出ているのが好きです。
      文章もきれいですよね。
      ふんわりしているけれど芯のある女性を描いてくれるので好感♪
      この作品も純愛物語だそうで、葉室さんらしいなぁと思いました!
      >> 続きを読む

      2016/08/19 by あすか

    • あすかさん

      そうなんです、読んでいて濁りが無いというか気持ちがいいですね。
      女性も強いけれど優しい(^-^)

      時々苦い本の後は、積ん読からひっぱりだしています。
      >> 続きを読む

      2016/08/20 by 空耳よ


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