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褐色の文豪

4.0 4.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 1,030 円

皇帝ナポレオンのもとで「黒い悪魔」との異名をとったデュマ将軍。褐色の肌を受け継いだその息子、アレクサンドル・デュマ2世は、父親譲りの集中力を武器に、劇作家としての道を歩み始める―。『三銃士』『モンテ・クリスト伯』で、フランス文学界の伝説になった天才作家の天真爛漫で自由闊達な生涯を描く。

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    • 評価: 4.0

      【破格の文豪】
       佐藤賢一さんの本作、主人公は、アレクサンドル・デュマですよ。
       『三銃士』、『モンテクリスト伯』などの傑作を書き上げた世界的文豪ですが、こういうキャラだったとは全く知りませんでした。

       まず、黒人とのクォーターだったんですね(なのでこういうタイトルです)。
       ギョロッとした大きな目に縮れた髪、もちろん浅黒い肌。
       恵まれた身体をしており、中年以降は金に糸目をつけずに美食を続けたため、相当に太ってしまったようですが(『美食大全』という本も書いていますよね)、若い頃は引き締まった身体の偉丈夫だったようです。

       前編を通じて流れるのは、父アレクサンドル・デュマ(同名です)への思慕とコンプレックスでしょうか。
       父親は『黒い悪魔』との異名を取ったフランス軍の名将軍で軍名を轟かせたのだそうです。
       デュマも、そんな父親に憧れ、終生、軍や革命での活躍を望んでいたと描かれています。

       しかし、作家になったのは、シェークスピアのハムレットの翻案劇(翻案したのは大した作家ではなかったようですが)を見て感動し、また、親友であった同郷のルーヴァンが作家志望で、「お前もパリに来い」と誘われたこともあってのことでした。

       もちろん、最初のうちはなかなか芽が出なかったのですが、生まれつきの人なつこい性格から人脈を得たこともあり、いきなりフランセ座での『アンリ三世とその宮廷』のロングラン公演に成功し、一気に名声を手に入れます。

       それからは破竹の勢いで、書く作品、書く作品が大ヒット。
       本作では、デュマと同年代の文豪ヴィクトル・ユゴーも登場するのですが、ユゴーも高い名声を得てはいるものの、人気の点では圧倒的にデュマの方が上で、ユゴーすら歯がみをしたとされています。
       特に、識字率が上がり、庶民が新聞を読むようになった頃に、新聞小説として連載された『三銃士』、『モンテクリスト伯』の人気は絶大で、デュマは押しも押されぬ世界的大作家になったわけですね。

      しかし、その私生活の方は、お世辞にも褒められたものではなかったようです。
       第一、女癖が悪すぎます。
       次から次へと女性と関係を持ち(もちろん、一時期に何人もと)、子供を作り、認知することには抵抗はなかったようですが(子供は好きだったようです……息子の一人には自分と同じ名前をつけましたよね。『椿姫』を書いたデュマ・フィスです)、しかしちゃんとした結婚などなかなかしなかったようです。

       舞台作家として第一人者でしたから、役が欲しい美しい女優は選り取り見取り。
       次から次へと手をつけますし、それこそ一夜のお相手まで入れたら関係した女性の人数は一体何人に上ったことかと書かれています。

       作家としてこれほど大成し、莫大な収入も手にしたのですが、デュマはいつまでたっても父親への憧れとコンプレックスを克服できなかったようです。
       やはり、軍人として、実際の社会で身体を張って活躍したいとの熱望があり、作家など所詮作り話をしているだけで、柔弱であると思われているに違いないとの思いを捨てきれなかったようです。

       ですから、パリ7月革命では先頭に立って革命に加わり、功成り名を遂げたいとの一心から全く無謀な行動に出たりもします(結果的には成功させてしまうのですが、あまり評価はされなかったようです)。
       2月革命の頃には、さすがに肥満した身体で闘うことまでは躊躇されたものの、2度に渡って議員となるべく立候補していずれも落選。
       その後、イタリア統一戦線にまで手を広げるといった具合の戦争、政治好きだったようです。

       また、デュマは、一人であれだけの作品を全部書いたというわけでもなかったようですね。
       共同執筆者又は助手を使い、例えば歴史考証や下書きなどはそういったアシスタントにやらせ、できあがってきた原稿にデュマが手を入れて完成させ、それをデュマの名前で発表していたようです。
       ですから、その点について批判されることもあり、実際作品の8割方の部分はアシスタントの手によるものであったとも書かれています。
      但し、やはりそこは文豪なのでしょう。

       アシスタントが書いた下書き原稿はまったく面白くないのだそうです。
       2割とは言え、デュマが手を入れたことにより断然面白くなったというのですから、やはりそこは天才なのでしょう。
       また、アシスタントも冷遇されていたわけでもなく、デュマはかなりの待遇を提供し、アシスタントらも、相当勝手にデュマの儲けを蕩尽したとも書かれています。
       発表する名前も、デュマは必ずしも自分の単独名での発表にこだわったわけではなく、共作として発表することも持ちかけたらしいのですが、出版社側がやはりネームヴァリューのあるデュマ単独名での発表を望み、アシスタントらもさほどこだわらずこれを了承したのだとも書かれています。

       いずれにしても、やりたいようにやった波瀾万丈の一生だったようで、全く破格の文豪だと言っても良さそうです。
       デュマの作品は読んではいましたが、こういうキャラクターとは全く知らず、大変興味深く楽しむことができた一冊でした。
      >> 続きを読む

      2020/05/13 by

      褐色の文豪」のレビュー


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