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おろしや国酔夢譚 (文春文庫 い 2-31)

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: 井上 靖
定価: 778 円
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    「おろしや国酔夢譚 (文春文庫 い 2-31)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      井上靖の歴史小説には、「天平の甍」「楼蘭」「敦煌」などの主に異文化との関わりの中での人間の運命の非情さ、歴史に対する人間の卑小さを、しかしながら、それを詩情豊かに描いたロマンの香り漂う、数多くの作品があり、じっくりと時間をかけて"悠久の歴史というロマンの世界"に浸りたい時に読んでいます。

      "漂流"という奇禍によって、当人の好むと好まざるとにかかわりなく、異文化と、そして歴史の一断面と関係を持たざるを得なくなった、大黒屋光太夫という人間の波瀾の生涯を描いているこの歴史小説も、そうした井上靖の系譜をひくものの一つだろうと思います。

      想像を絶する旅の果てに、ペテルブルグで女帝エカチェリーナ二世に拝謁を許され、光太夫はようやく帰国を許されますが、この間、まさに十年余の歳月が流れてしまったのです。

      その中で日本に帰るべく懸命の努力を払えば払うほど、結果として自らを異文化そのものとしてしまう光太夫の姿に痛ましさを覚えてしまいます。

      そして、ロシアがシベリアからアリューシャン列島に渡る大版図を形成しつつあることを、是非とも日本に知らせたい----。そう思いつつ、ようやく、無事に江戸に帰ってきた光太夫を待っていたのは、幕府の非情な終身幽閉という措置でした。

      作者の井上靖は、その光太夫の、帰国後の番町の薬草植付場内での日々を、「前半生の烈しさに較べると、死んだようなものであったろう」と書いています。

      自然の猛威と政治の酷薄さの中、信じ難い人生を過ごしてしまったこの男の嘆息には、何が込められていたのだろうかと思いを馳せると、切なさ、むごさという言葉では、到底、言いきれない"人生の不条理"といったものを感じてしまいます。

      18世紀の日露交渉史という歴史的な側面を持ちつつも、この一人の男の嘆息に帰結するこの作品は、稀有の"比較文化論的な体験"を封じ込めることによって成り立つ、当時の日本の状況を浮き彫りにし、一方で、井上靖と言う作家の、"西域もの"の先駆けとなった、第一詩集「北国」の中にある「漆胡樽」のモチーフである、ラクダの背中から落ちた胡漆型の水を入れる器が日本に渡り、二千年の歴史を経て、どう伝わるかという、悠久の時間の中に、"人と歴史"を位置づけようとする、彼の試みをも、想起させてくれるような感慨をもちました。



      >> 続きを読む

      2016/09/04 by

      おろしや国酔夢譚 (文春文庫 い 2-31)」のレビュー

    • 「猟銃」も詩人が作家になった初期の作品だとおもっているのですが、この「おろしや…」の作品や「敦煌」など読むのも重い感じでしたが、今思うとロマンがありますね。
      光太夫という強い人が雪の中を仲間と旅をし、異教の神に帰依するひともいる中、船を作ってやっと帰った時、江戸の閉鎖的な迎え方は読んでいても悲痛な感じがしました。

      この頃、外から日本を見たひとは勇気があったんですね。
      >> 続きを読む

      2016/09/04 by 空耳よ


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