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弥栄の烏 (文春文庫)

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: 阿部 智里
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    • 評価: 4.0

      八咫烏シリーズ第一部完結編。第五巻「玉依姫」の物語が進行しているとき、山内側はどうなっていたのかという舞台裏が描かれる。今回は、奈月彦が「真の金烏」としての記憶を取り戻せるか、そして、大猿との最終決戦のゆくえは、というところがテーマだ。

      シリーズの最初の頃は強気で自信家なイメージだった若宮が、第6巻ではひたすら自分を責め、苦悩する。最初の頃はあまり感情が見えず、好きになれないキャラクターだったのだが、一気に人間味が出てきて(八咫烏なんだけど)、親近感がわいた。そして物語の終盤、そんな若宮に、妻の浜木綿が言葉をかけるシーンがある。その言葉がなんとも力強くて温かい。浜木綿といるときの若宮は、すっかり素に戻って、安心しているように見える。敵ばかりで孤独であっただろう若宮が、愛情深く頼もしい伴侶を得られてよかったと、心から思える良いシーンだった。

      もう一人の主役とも言える雪哉は今回、全軍の参謀役として活躍するのだが、途中、かけがえのない大切なものを失い、同時に心も失くしてしまったように見える。その姿が痛々しい。最後に涙を流す場面では、心を取り戻したようで少し安堵するのだが。雪哉は誰よりも頭が切れてカリスマ性がある分、彼を理解できる者は少なく孤独になりやすい。実家でも、兄弟の中で自分だけ母親が違うという境遇で育っている。どんどん孤独が深まっていくように見える雪哉は、若宮とは対照的だ。雪哉を心から想い、理解してくれる人が、どうかあらわれますようにと願わずにはいられなかった。

      また今回、もう一人主役級の人物を挙げるとするなら、真赭の薄ではないだろうか。自分を美しく着飾ることを大切にしてきた彼女が、きらびやかな衣装を脱ぎ、山烏と同じ黒い羽衣に身をつつんでけが人の手当てなどに走り回る。神域へ行くことを決め、男たちに啖呵を切るシーンはいっそ清々しい。ひと悶着あって後、浜木綿との友情も深まったようだ。気が強いけど情に厚く、一生懸命なところが可愛らしい。第一巻からのお気に入りキャラクターでもある。

      第一部完結ということだが、大団円というわけには全くいかず、山内の危機はまだまだ続きそう。山内の運命とともに、魅力的な登場人物たちの今後も気になる。第二部も楽しみだ。

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      2019/06/23 by

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