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ヘタな人生論より徒然草

5.0 5.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 評論、エッセイ、随筆
定価: 1,575 円

大好評の『ヘタな人生論よりイソップ物語』の第2弾。『徒然草』から“兼好流・生きるヒント”のエッセンスを抜粋し、現代語訳とともに、人生を歩むうえでのモノの見方、考え方を、著者ならではの軽妙洒脱な語り口で解説する。

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    「ヘタな人生論より徒然草」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      以前、芥川龍之介はその著「侏儒の言葉:しゅじゅのことば」のなかで、徒然草(つれづれぐさ:吉田兼好の随筆)について以下のように書いていました。


      つれづれ草
       わたしは度たびこう言われている。――「つれづれ草などは定めしお好きでしょう?」しかし不幸にも「つれづれ草」などはいまだかつて愛読したことはない。正直な所を白状すれば「つれづれ草」の名高いのもわたしにはほとんど不可解である。中学程度の教科書に便利であることは認めるにもしろ。

       この一節、中・高生のころ、「侏儒の言葉」と「徒然草」を両方読んでいた私には、とても意外に思いました。まあ、似たテイストの作品であると思われるのに、芥川龍之介の、この冷たい態度。

       これについては、他の人にも同じ思いをした方がいるようで、ブログ上で逆に「侏儒の言葉」を貶める(悪く言う)評価をしています。

      でも、実際のところ、どうなのでしょうか。私にはどちらも面白く深い作品だと思えるのですが。

      そこで、図書館から荻野文子(おぎの・あやこ)さんの著「ヘタな人生論より徒然草」(河出書房新社)を借りてきて、彼女が誘う徒然草の世界に入っていきました。なお、荻野さんは、東進ハイスクールの古文の教師として「マドンナ」の称号を得たカリスマ講師です。

      まず、作者の吉田兼好の視点の素晴らしさが語られます。一つに、僧侶としての存在にとらわれない自由な視点、無常観べったりでもない合理的で論理的な思考。また一つに、ものごとを多面的にとらえる複眼的思考。これらが相俟って、徒然草を魅力的な随筆にしているのですね。2つ現代語訳を引用します。訳者はもちろん荻野さん、本とは「ヘタな人生論より徒然草」。
      ・・・・・・・・・・・・・・
      ひとつの専門の道に従事している人が、専門以外の場に出席して、「ああ、自分の専門の道であったなら、こんな風に傍観していることはないだろうに」といい、また心にも思っていることは、世間によくあることだけれども、まったくよくないことだと思われるのである。知らない道が羨ましく思われるのなら、「ああ羨ましい、どうして習わなかったのだろうか」といっておくのがきっとよいだろうに。
      自分の智恵を持ち出して人と争うのは、角ある動物が角を傾け、牙のある動物が牙を剥き出して噛みつくのと同類である。(第167段   本36P)
      ・・・・・・・・・・・・・・・
      だいたいにおいて、なんでも珍しくめったにないものは、教養のない人のもてはやすものである。そのようなものは、きっとないほうがよいだろう。
              (第139段   本112P)
      ・・・・・・・・・・・・・
      なんだか、老成して世の中の酸いも甘いもかみ分ける境地に入った印象があります。ここで挙げた2文は、もちろん仏教の無常観に根ざした部分もあるでしょうが、私には老子の哲学にも近しいように感じられます。「老子」64章に「・・・是を以て聖人は、欲せざることを欲す。得難きの貨を貴ばず。学ばざることを学ぶ。・・・」とありますが、「得難きの貨」とは手に入れにくい品物のことです。

       そして重要な点は、先ほど徒然草を弁護した人も、荻野さんも、「徒然草」は年を取って経験を積むほど解るようになると主張していることです。

      その意味では、いかにも怜悧な作家であった芥川龍之介でも35歳で亡くなっていますので、兼好の達した境地には至らなかったのかと思います。それに、以下は案外皮肉な現象ですが、芥川作品は中学校の国語の教材になり、徒然草は高校の国語の教材になることが多く、どちらも初等教育には恰好の題材であり、もしかしたら、芥川は兼好を「近親憎悪」の目で見ていたのかも知れません。

      最後に:私は案外芥川龍之介を批判的な視点でみることが多いですが、それは、私の精神的成長過程において、彼の文学が大きな影響を与えてくれ、またその境地を超えるために奮闘した私史があるからです。その意味で、芥川は、私の初めての文学上の師なのです。

      なお、徒然草の現代語訳として
      「現代語訳徒然草」(佐藤春夫・訳:河出文庫:本体680円)もおススメです。
      >> 続きを読む

      2013/01/07 by

      ヘタな人生論より徒然草」のレビュー

    • >emiさん
       古典文学の現代語訳については、優れたものしか残ってないでしょうから、古文を読む代わりに現代語訳版を読むのは有益だと思います。ただ、私は今、樋口一葉に難渋しています。明治期に書かれた本なのに、うまく読解できず、それならばと現代語訳版を入手したのですが、一葉の文章はセンテンスが長く、こちらでも良く意味が取れないのです。一葉の作品の場合はよほどの超訳が必要かと。 >> 続きを読む

      2013/01/07 by iirei

    • >makotoさん
       「侏儒:しゅじゅ」とは、「こびと」という意味の言葉で、この言葉を使って作品を書いたのは、おそらく芥川龍之介のほかにはほとんどいないでしょうから、芥川フリーク以外には目にしない言葉かと思います。 >> 続きを読む

      2013/01/07 by iirei


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