こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)

自生の夢

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: 飛 浩隆
定価: 1,728 円
いいね!

    「自生の夢」 の読書レビュー (最新順)

    最新のレビュー順 | 人気のレビュー順
    すべてのレビューとコメントを開く
    • 評価: 4.0

      【何と鮮烈な作品群でしょう!】
       飛浩隆氏は、『象られた力』、『グラン・バカンス』、『ラギッド・ガール』という飛び切りの作品を書いているSF作家さんで、私は大好きなのですが、残念なことに寡作家で、なかなか作品を書いてくれません。
       本書も2002年以降に発表した作品のうち、『ラギッド・ガール』に収録されていない作品全てを収録したというもので、これまで雑誌等に発表されてきた作品をまとめたものです。
       というわけで、新作ではないのですが、雑誌などに分散掲載されていたものをまとめて読めるようにしてもらえたということだけでもファンとしては大変有り難いものです。
       それでは、収録作品からいくつかご紹介。

      ○ 海の指
       地球が壊滅的打撃を受け、人類のほとんどが死滅した後の世界が描かれます。
       地球のほとんどは、『灰洋』(かいよう)と呼ばれるそば粉を溶いたような、灰色の重さのある流体に覆われており、一部陸地が残されていました。
       物語の舞台となるのも『泡州』と呼ばれている小さな島です。
       『灰洋』は、それに触れた物全てを可逆的に分子に分解して呑み込んでしまうという、いわば死の海なのです。
       そして、『灰洋』は、時々、『海の指』と呼ばれる物を陸地に押し出し、その際、『灰洋』の中に分解されていた世界各地の建造物を再生して陸地に押し上げてくるのでした。
       人々は、そんな『灰洋』と折り合いをつけて生きていかなければなりません。
       物語の主人公は志津子という、泡州の交通会社(島でバスを運行している会社です)に勤務している女性で、今は和志という男性と再婚しています。
       前の夫の昭吾は、『灰洋』に呑み込まれて分解されてしまったということなのですが。
       和志は、泡州にある音響会社に勤務している技師です。
       この音響会社というのは、泡州と『灰洋』を隔てている霧を、音響によって晴らし、『灰洋』に呑み込まれている様々な物資をサルベージするという仕事なのですが、ある日、その仕事の途中に海の指が発生してしまいます。
       そして、あろうことか、灰洋に呑み込まれて分解されたはずの昭吾が灰洋の中から出てきたのです。
       コミック作品の原作として書かれたということですが、非常に鮮烈なイメージを伴った作品で、読了後、打ちのめされてしまいましたよ。

      ○ 銀の匙
      ○ 曠野にて
      ○ 自生の夢
      ○ 野生の詩藻
       連作短編です(『野生の詩藻』は外伝というかスピンオフ作品)。
       背景を書くのが難しいのですが、人類は高度の技術発展により、全ての言語で表現された物、映像で表現された物、その他を集積し、分析し、相互に関連させ、検索し……それを何重にも重ねた『超絶グーグル』のような物(BI)を持つに至りました。
       そして、今、各人には自分の思考をリアルタイムに文字化するCassyという端末を身につけるようになっており、そこで生み出された莫大な言語がBIとリンクすることによって、全人類の思考が検索され、関連づけられ続けるようなとてつもないシステムが生まれたのです。
       そんな世界に生まれたアリスは、Cassyを限界以上に使いこなす能力を持っている子供で、5歳の時には既に世界的な詩人として広く知られるようになっていました。
       アリスは、これまでにはあり得なかったような様々な形態の『詩』を生み出し、それをBI上に流しているのですが、BIには期せずして破壊的な存在も生み出されていました。
       それが、『忌字禍』(いまじか)と呼ばれるものでした。
       『忌字禍』は実体化し、アリスを殺し、アリスの詩とリンクしていた人々を破壊しました。
       もはや誰も『忌字禍』を制御できなくなり、BIは荒廃に瀕していたのですが、それに対抗する存在として、既に死亡していた間宮潤堂という男を再生する企てが始まるのです。
       間宮は作家であり、また、超絶的な感受性を持ち、言葉で人を殺してきた男でした。
       彼の著作、その他の言動はBI上に残されており、それをソースとして間宮の人格を再生しようというのです。
       そして、また、そこには実体を失ったアリスも残されていました。
       『忌字禍』による破壊を止めることはできるのか?

       私の拙い粗筋紹介だけではなかなか上手く伝えることができないように思うのですが、実際に作品を読まれると、その圧倒的なイメージ、リリカルな描写に叩きのめされてしまいます。
       飛氏の作品の魅力の一つは、その生み出す豊穣で瑞々しいイメージにあると感じており、また、圧倒的に押し寄せてくるような物語の世界観も大変素晴らしいものがあります。
       この辺りの魅力は、冒頭に書いたこれまでの著作にも存分に活かされており、ちょっと他には無い魅力であることから、私は大変高く評価している作家さんなのです。
       特に『グラン・バカンス』なんかは本当に好きな作品なので、興味を持たれた方は是非ご一読ください。
       著者には、願わくば、新作を書いて下さるよう、期待して待っています。


      読了時間メーター
      □□□     普通(1~2日あれば読める)
      >> 続きを読む

      2020/02/13 by

      自生の夢」のレビュー


    最近この本を本棚に追加した会員

    この本に関連したオススメの本

    取得中です。しばらくお待ちください。

    自生の夢 | 読書ログ

    会員登録(無料)

    今月の課題図書
    読書ログってこんなサービス
    映画ログはこちら
    読書ログさんの本棚

    レビューのある本

    最近チェックした本