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伝馬町から今晩は

4.0 4.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 591 円
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    「伝馬町から今晩は」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0


      幕末の群像の中で、ずば抜けたドラマ性をはらんでいるのが、蘭学者の高野長英ではないかと思っています。

      幕政批判の書「夢物語」が幕府の逆鱗に触れ、1839年の「蛮社の獄」で逮捕、そして伝馬町の牢へ。1844年、その牢獄が炎上し、三日を限りに放たれたが帰らず、薬品で面相を変えて地下に潜った長英。1948年、幕府の追っ手に襲われ、隠し持った短刀で自死。

      確かに劇的な生涯なのです。その運命の数奇さを、すでに明治期から歌舞伎役者が舞台に乗せ、小説家が書き、講談師がうなったものです。

      もちろん、希代のストーリー・テラーの作家・山田風太郎がほうっておくはずもなく、そしてもちろん、山田風太郎がかつての作家たちと同じことを書くはずもありません。

      「山田風太郎コレクション」の5編からなる連作集の幕末編と銘打ったこの作品の表題作の「伝馬町から今晩は」は、この異才を放つ蘭学者をめぐって、作家・山田風太郎の空想力を縦横無尽に駆使した、奇想天外な作品だ。

      史実の扱いは、いつもの山田風太郎と違って、意想外にデリケートだ。この作品でも「高野長英伝」(高野長運著)などの文献には目配りを怠らない。

      その上で、思いがけないところに奇想が湧いている。牢を放たれた長英が、三日の期限内に、誰の家を「今晩は」と訪ねるか。同志の学者たちの家の戸をたたくのは「高野長英伝」に従っているんですね。

      ところが、山田風太郎はいわば「空白の一日」をそこに作り、獄を出た高野長英に、悪魔的な獣欲のカーニバルを演じさせるのだ。たった一日、フィクショナルな日付を作ることで、この天才蘭学者の"怪物性"が、ひと際、際立っていると思う。

      歴史に「空白の一日」を探し、想像の楔を打ち込む。その裂け目から、山田風太郎流の「稗史」の面白さが噴出しているのだ。


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      2018/03/13 by

      伝馬町から今晩は」のレビュー


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