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山尾悠子作品集成

5.0 5.0 (レビュー1件)
著者: 山尾 悠子
定価: 9,504 円
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    「山尾悠子作品集成」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      【コトバのチカラ】
       堪能させていただきました!大変素晴らしい作品集でした。本作は、山尾悠子さんが20代の頃に発表した作品のほとんどを集めた集成ですが、これまで雑誌に発表されたままで単行本等になっていなかった作品をまとめてくれている、ある意味大変貴重な作品集と言えます。それでも最初の長編単行本「仮面物語」(既に絶版)は紙幅の関係で収録できず、また、著者にも再版の意思が無いそうで、もはや図書館や古書で探すしかなくなっているのですが……。

       山尾悠子さんの作品は、どれも大変幻想的で、美しいものばかりです。作品から連想するイメージを連ねてみると、夢幻、透明感、硬(鉱?)質、絵画的、静謐、虚空……そんな感じでしょうか。
       無理に合理的な結末をつけようなどという意思は全く無く、怪かしく儚いまま消えていく物語はとても魅力的です。
       また、その紡ぎ出す「世界」は圧倒的で、時に目眩を伴うようなイメージをもたらします。「コトバのチカラ」を感じずにはいられません。

       収録作品の中からいくつかご紹介します。

      ○ 夢の棲む街
       すりばち状の都市で繰り広げられる夢の中の物語のようなお話。その都市の外側のことは誰も知りません。「夢喰い虫」という、都市の中の噂話を広めることを生業としている生き物が狂言回しのようにして都市の様々なことどもを綴っていきます。それは断片的なコラージュのようでもあり、時に稲垣足穂に近い感じも受ける作品です。
       脚を見せるためだけに養成されているダンサー達(脚が重要であるため顔などは小さく縮んでしまっています)、娼館とそのマダム(ある時、都市に羽が降り始めてしまったため閉じこめられてしまいます)、地下にいる人魚などなど、非常に幻想的でビジュアルなイメージを描き出しています。

      ○ 遠近法
       私の一番のお気に入りの作品です。物語の舞台となるのは「腸詰宇宙」と呼ばれる円柱状の世界です。円周に沿って回廊状の居住空間があり、その様な層が上下に無限に続いているような世界。ちくわの様に、中心部には穴が開いており、そこを太陽や月が巡っていきます(巡ると言っても、上から下へ降りていくのですが)。その真ん中の吹き抜け空間には、時として雲に乗った神が現れる事があります。この神は長い髭を生やした老人で、涎を垂らしながら何事かを大声で怒鳴りながらいかづちを撃ち続けます。
       この様な世界を紡いでしまう著者の言葉に圧倒されてしまいます。

      ○ 巨人
       タイトルのとおり、巨人のお話です。普段は枷をはめられているため、普通の人間と同じ大きさなのですが、枷をはずすとどんどん巨大化してしまいます。その様な巨人が売りに出されるというお話。巨人は、自分の居場所は海しかないのだろうと考えています。でも、海という言葉は何故か知っているものの、海がどういう物なのかは彼にも分からないのです。
       哀しみをたたえた作品。

      ○ パラス・アテナ
       盗賊の集団に襲われた隊商の中でただ一人幼子が生き残ることがあります。そういう子供は強い力を持つと信じられており、「土地神」として別の隊商に拾われて守り神として扱われます。主人公はそんな「土地神」の一人。
       隊商に連れられて帝都に赴きますが、そこの二位の姫は気が触れたとして離宮に幽閉されています。その都は狼たちがさまよう都。そして、繭を吐きその中で再生する人びと。

      ○ ゴーレム
       この都市では、葬式の際、生前の姿生き写しに作った粘土像を備えることがならわしとされていました。そのため、死期が迫ると、その姿を粘土像に作ってもらうため、彫像師を呼ぶことになります。主人公のGはそんな彫像師。ですが、彼は右利きであるにも関わらず、右手を包帯できつく巻いて他人の目に触れないようにし、また右手は封印しており、左手だけで像を造ります。それは何故? また、彼は、鏡を向けられると意識を失って失神してしまいます。それは何故?Gは、彫像師として十分な収入を得ているはずなのに、新しい粘土を買う金にも困っています。どうやら何か大変な支出をしたらしい。それは何故? それは、彼が「影盗み」だったから。

       その他にも素晴らしい作品が集められています。中には中国というか平安時代のような舞台背景の作品もありますし、極めて日常的な作品もあります。あるいは、もはや詩ではないかと感じられるような作品も。
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      2019/03/24 by

      山尾悠子作品集成」のレビュー


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