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狼のようなイルマ

3.0 3.0 (レビュー1件)
著者: 結城充考
定価: 1,728 円
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    「狼のようなイルマ」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      都内某所でIT企業経営者の毒殺死体が相次いで発見される。
      警視庁捜査一課殺人犯捜査第二係所属の入間(イルマ)祐希は、関係者の証言からIT企業「シェヴロン・グループ」代表・佐伯亨に目をつける。
      だが、尾行中に何者かが佐伯を襲撃、猛追するイルマと激しいカーチェイスに。
      襲撃犯は中国黒社会の刺客、「低温」だった。
      命拾いした佐伯は、毒殺魔「蜘蛛」に接触する。
      肥大化する暴君・佐伯、殺人機械・低温、正体不明の生ける屍・蜘蛛。
      己の鋭い嗅覚がイルマを導いた先は、心奥の傷を抉る都会の戦場だった。

      登場人物たちの名(苗字)をカタカナ表記し、独特の世界観を創り上げておられる著者の最新長編です。
      月刊誌『小説NON』2014年5月号から、2015年2月号に亘って連載されていたものを纏めたもの。
      装丁といい、タイトルといい、センス抜群です。
      ストーリーの中身は乏しいのですが、研ぎ澄まされた文体、魅力的な登場人物に、まるで映画を見ている様な疾走感を味わえます。
      ただ、駆使する単語、文法、入り乱れる視点など技巧が冴えわたり過ぎ、読者に安易にパッパッとページをめくることを許しません。
      お好きな方にはたまらない雰囲気をもった佳作です。

      主人公は、警視庁捜査一課で“狼”とあだ名されるほどの検挙率の高さを誇る女性刑事・イルマ(入間祐希)です。
      そして物語は、もうひとりのこの物語のキーパーソン「蜘蛛」という毒殺魔の犯行シーンから始まります。
      無機質なマンションの一室、夜です。
      家具も、カーテンもないワンルームには星明りのみ。
      中央のパイプ椅子に蜘蛛。
      突然、開かれる玄関の扉、なだれ込むように侵入してくる3人の屈強な男たち。
      彼らは、蜘蛛に殺害を依頼し続けていた依頼主が、知り過ぎた蜘蛛の口封じの為に送り込まれた刺客でした。
      静かにジュラルミンのケースを開け、ゴーグルを装着する蜘蛛。
      中には腐乱した大きな肉塊が詰め込まれています。
      考えもしなかった展開に戸惑う3人の刺客たち、腐乱した肉塊には無数のハエがたかっています。

      突然、両目の痛みを訴えもがきだす男たち。
      冷ややかな笑いとともに観察を続ける蜘蛛。
      「モンゴルに棲む肉蝿の一種なのですが、家畜や人間の眼球に小さな幼虫を吹き付けるのです。幼虫は柔らかな眼球をエサにして内部に潜り込んでゆく。私ならすぐに水で洗い流しますね。失明したくはありませんから…」
      蜘蛛の暗殺などそっちのけでユニットバスに駆けこむ3人。
      しかし、バスの蛇口からは一滴の水も出ないように、あらかじめ細工してありました。
      呻き続ける3人、悠然と立ち去る蜘蛛。
      蜘蛛は、自らの命を狙ってきた依頼主、IT長者・佐伯亨への復讐を決意します。
      同じ頃、中国の黒社会から派遣された殺し屋「低温」が日本の地を踏みました。
      幼いころから黒社会の掟を叩き込まれ、想像を絶する鍛錬と経験を積み重ねてきたこの男の狙いもまた佐伯亨。
      黒社会を甘く見て、恥をかかせた報いを受けさせるため、強靱な肉体を持つ殺人マシーンは、成田から都内への高速を走ります。
      イルマが手がけているのは不可解な毒殺事件。
      IT技術者が、地下鉄のトイレの個室内で、大量の血を流しながら死んでいるのが発見されます。
      不思議なのは死んでいるにも関わらず血液が凝固せず、流血を続けているということ。
      そして、防犯カメラに映っていた死の直前の謎の行動。
      死んだ男は少しずつ流血しながら、結果的には夥しい血痕を残しながら、地下鉄構内のいたるところに出没していたことがわかります。
      死を覚悟した男の徘徊と、止まらない血液の謎。
      イルマは、捜査を進めるうちに、似たようなIT関連の業界人の死が極端に増加している事実に気づくのでした。


      カーチェイスあり、興味深い毒にまつわる専門的な知識ありで、最後まで飽きさせない手腕は見事のひとことです。
      物語本筋の周囲を彩るそれらが、貧弱で突拍子もない無い内容を補って余りある効果を発揮しています。

      『プラ・バロック』という作品で“クロハ”という女性刑事を登場させ、ミステリ新人賞を受賞されている著者の力量は確かなものです。
      個人的には、「あ、頭のいい人の書く文章だ」というような幼稚な印象を強く持ちました。

      全身に筋肉細胞や、脳などの模様を入れ墨で彫り込んだ蜘蛛の造形は秀逸です。
      “蜘蛛”という何気ないネーミングにもセンスの良さが光ります。
      そして武器として使用する毒に対する執着というか、愛情というか…変態じみたところがたまらなく魅力的なキャラクターです。
      なんでもかんでもシリーズ化期待というのも何か右へならえのようで嫌なのですが、タイトルにもなった狼のようなイルマよりも、毒を自在に操る暗殺者・蜘蛛の物語は、もっと読みたいな、と思いました。
      >> 続きを読む

      2015/12/06 by

      狼のようなイルマ」のレビュー

    • お久し振りです。
      イルマVS蜘蛛。面白そうですね。
      またはじめてみる作家さんですが、メモしました。

      >> 続きを読む

      2015/12/07 by 空耳よ

    • >空耳よさん
      いつもコメント、ありがとうございます。ご無沙汰でした。
      ありんこさんもお見えにならなくなって、どうしたものか、と、少し呆然としていました。
      僕は相変わらず、おバカなハードボイルド・エンタテインメント作品に没頭しておりました。
      >> 続きを読む

      2015/12/07 by 課長代理


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