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戦後史の正体

1945-2012
5.0 5.0 (レビュー1件)
著者:
カテゴリー: 外交、国際問題
定価: 1,575 円

元外務省・国際情報局長が最大のタブー「米国からの圧力」を軸に、戦後70年を読み解く。

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    「戦後史の正体」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      昔、「吉田学校」という映画がありました。「優れた」政治家・吉田茂のもとに集まった政治家志望の若者を描いた映画であると、私は思っていますが(違ったらごめん)、その吉田を主人公にした渡辺謙主演のNHKのTVドラマ「負けて、勝つ」が、実は「負けて、負ける」という題名のほうが相応しいと思わされるのが、この本です。

       「戦後史の正体 1945-2012」は元外交官の孫崎享(まごさき・うける)さんの著作です。ことに、日本の外交とは、9割が対アメリカに精力が割かれるなかに於いて、アメリカが日本に押し付けてくる無理難題について、時の総理大臣がどう関わるかで、その総理の命運が左右されるという視点が斬新です。

       三つの反応があります。また、そのような反応を取った総理大臣を挙げますと(本P366-P368)

      @対米自主派・・・積極的に現状を変えようと米国に働きかけた者
             重光葵(まもる)(この人は外務大臣)、石橋湛山、岸信介、佐藤栄作、田中角栄、細川護熙、鳩山由紀夫など

      @対米追随派・・・米国に従い、その信頼を得ることで国益を最大化しようとした者
             吉田茂、池田勇人、三木武夫、中曽根康弘、小泉純一郎など

      @一部抵抗派・・・特定の問題について米国からの圧力に抵抗した者
             鈴木善幸、竹下登、橋本龍太郎、福田康夫など

      このリストを眺めるに、対米追随派の首相は、長期政権になることが多く、対米自主派の
      首相は、短命政権になることが多いですね。佐藤栄作は、対米自主派でも長期政権でしたが、アメリカの要求・・・繊維問題に対応しなかったために当時のニクソン政権から、円の為替相場を1ドル=360円とする従来の相場を変動相場にされ、その他意地悪を沢山され、退陣となりました。

       吉田茂の場合、アメリカの言うがままに振舞わないと、首が飛ぶということが怖かったのでしょうが、重光葵は、軍備についても、アメリカにリーズナブルな発言をしています。:降伏直後の軍事植民地化政策を阻止。のちに米軍完全撤退案を米国に示す

      これに対して吉田茂:安全保障と経済の両面で、きわめて強い対米従属路線を取ります。1951年のサンフランシスコ講和条約の際、ひっそりとした下士官会館の一室で、安全保障条約(安保)のサインを、日本側からは吉田だけ、アメリカ側からは4人がしています。屈辱的な内容の条文でした。「米軍は、日本で、望むだけの軍隊を、思う期間、思う場所で展開できる」ということです。

      私は吉田の言葉として「軍事はアメリカに任せて、日本は経済に専念すればよい」というのを聞いたことがありますが、これは、負け犬根性のなせる発言だと思いますね。「負けて、負ける」です。

       岸信介(きし・のぶすけ:安倍晋三の祖父)は、安保改定をしたので従属派であると思われがちですが、安保に「ちゃんと米軍が日本を守ること」を明記した点は優れています。(それまでの条文では「・・・することができる」と、日本を守らなくてもよいとなっていたのです。):従属色の強い旧安保条約を改定。さらに米軍基地の治外法権を認めた行政協定(=地位協定)の見直しも行おうと試みる。安保闘争の記述にも多くページが割かれていますがそこはお読みください。(複雑で込み入った話なので、うまく整理できませんでした。)

      ひとつ、日本がやってはならない活動をアメリカは設定していました。それはアメリカを出し抜いて中国と国交を結ぶ行為です。その禁忌を破ったのが田中角栄の訪中でした。一時は権勢を振るった田中でしたが、立花隆の金脈・人脈レポート、またロッキード事件で裁判に掛けられたのは有名ですが、田中が行った中国との国交回復に、キッシンジャー・アメリカ国務長官は激怒したらしく、なんとしても田中を蹴落としたいので、親アメリカの三木武夫に音頭を取らせて、通常の司法措置ではない手法を使って田中をはめたということです。かの岸信介も中国との関係改善を摸索していたらしいです。

       最後に:いわゆる北方領土問題、これをソ連と日本の国際問題にさせたのは、アメリカだという話もこの本には掲載されています。ヤルタ協定で、アメリカ大統領は、ソ連に日本の北方領土を掠め取ることを提案=容認しています。潜在的に自国にとって敵になりそうな国家同士に火種を残すことによってアメリカが安泰だという戦略で、実際、ロシアと日本の和平の障害になっているところを見ると、じつにクレバーです。この策略は、アメリカの先輩のイギリスが良くやった手法だそうです。(たとえばインドVSパキスタン)

      TPPも、いかに日本にとって危険か、ということも最後に触れられています。アメリカ人の本音:「鎖国の壁の中に宝物を隠す権利はない」・・・これがTPPの本心です。

       ええーー、まさか!!といった話がてんこ盛りであるこの本、おススメです。

      ・・・・・・・・・・・・・・・・
      なお、日本サイテーの首相であった森喜朗の逸話に面白いものがあります。アメリカにわたり、クリントン大統領と会った際、英語でつぎのようなやり取りを想定して、予め外務省はレクチャーしたそうです。

      How are you?
      I’m fine. And you?
      Me,too.
      お元気ですか。
      ええ、あなたは?
      私もです。
      このような会話になることを想定していたのですが、森は

      Who are you?
      (あなたは誰ですか?)
      とやってしまい、クリントンはとっさに
      I’m Hillary Clinton‘s husband.
      (私はヒラリー・クリントンの夫です)
      と答えたのですが、森は
      Me,too.
      (私もそうなんです)←!!
      と返したそうです。ヒラリーは重婚しているのか?・・・お粗末な首相で、クリントン夫婦は、日本の首脳とは知的会話ができないと言っていたそうです。(以上のエピソードは、ホントにあったかは不明ですが、外務省ではまことしやかに語られたそうです。)
      ・・・・・・・・・・・・・・
      >> 続きを読む

      2012/11/30 by

      戦後史の正体」のレビュー

    • >tsukiusagiさん
        >結果的に自分が判断の軸であることは変わらないので、自分の軸をどこに据えるかという判断
      日々の研鑽が必要になるということですよね。

      ・・・その通りですが、日本に住んでいると、情報が米英ピラミッドというシステムにすっぽり覆われ、別のニュース・ソースが大事になります。そこで私はロシア・ピラミッドからの情報を鋭く伝える「ロシア政治経済ジャーナル」(北野幸伯)というメルマガを取っています。その立場からすると、同じ事象でも見え方が変わるのも不思議なことです。
      >> 続きを読む

      2012/11/30 by iirei

    • > 別のニュース・ソースが大事になります。
      (Tsukiusagiさんへのレスからの引用です。わかり辛くてスイマセン...)

      iireiさんサスガ!

      物事は多角的に見ないと...と常々思っていますが、具体的な別経路のニュースソースを確保されている点がスゴイと思いました。
      >> 続きを読む

      2012/12/01 by ice


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