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おせいさんの落語 (ちくま文庫)

5.0 5.0 (レビュー1件)
著者: 田辺 聖子
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    「おせいさんの落語 (ちくま文庫)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0


      私は読書と映画と同じくらい落語が大好きです。落語の魅力というのは、ひと言で言うなら「愚か者の豊かさ」に尽きると思っています。

      古典落語の中には、この"愚か者"の全てのパターンが、出揃っていると思います。
      好色、けちんぼ、ものぐさ、あわてもの、やきもちやき、見栄っぱり、知ったかぶり、おっちょこちょい-----ありとあらゆる"愚か者"が描き尽くされているんですね。

      この落語の中で語られる、人間の愚かさとか、業とか、性(さが)とかといったものは、立派とか偉大とか崇高といったものと逆の方向のものなんですね。

      「人間なんてろくなもんじゃねえ」というのが基本で、なおかつ、実はここが大事なんですが、それを"愛すべきもの"として描いている。

      ここが、落語の偉いところだと思うんですね。

      田辺聖子の小説やエッセイを読む時、私は落語、時に志ん生、時に文楽によって語られるところの古典落語を聞くのと、ほとんど同質の歓びを感じるんですね。

      「人間なんてろくでもない。でも、かわいい」という気持ちをかきたてられます。
      名もなき人々の中にある、妙味とか滋味を堪能する。
      おまけに、ふと、"人生の真実"にまで触れたような心持ちになる。

      今回、再読した田辺聖子の「おせいさんの落語」には、11篇の創作落語が収められていますが、何と言っても愚か者を見る、いや、人間を見つめる目が大人だなあと感心させられます。
      とにかく、懐が深いんですね。

      この本の中で私が特に好きなのは、「貸しホーム屋」と「舌切婆」なんですが、「舌切婆」のどうしようなく嫌味な主婦、つまり、欲求不満を義憤にすり替えて猛り狂っているような女を、非常に辛辣に描き出しながら、いつの間にかそれを、愛おしく不憫な女に見せてしまうのだから、もう凄すぎるんですね。

      もうひとつ、かなわないなと思うのは、言うまでもなく、田辺聖子の日本語文化に関する教養の深さだ。
      これは文学的教養と言うのと、ちょっと違うような気がして、もっと生き生きとした、生活感のある教養なんですね。

      源氏物語から川柳、ことわざ、ちょっとした言い回し、あいさつ言葉の類まで。
      日本人の、偉い人から何の教育も受けていない人たちまでが、歴史の中で練り上げて来た、面白い"言葉文化"の数々が、自由自在に駆使されていて、しみじみと楽しいんですね。

      さらに、忘れてはならないのが、"必殺の大阪弁"なんですね。
      大阪弁の持つ、味わい深い言葉の響きが大好きなんですが、いやはや、田辺聖子の作品における大阪弁は、本当に素晴らしくて酔わせてくれるんですね。

      「わかってま、わかってま」「おま、おますがな」「さいダ」「ワタイ」「ワテ」「かめへん、かめへん」「行ったん?」-----なあんていう言葉の、なんと音楽的で愛敬たっぷりなことか!!!

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      2018/07/05 by

      おせいさんの落語 (ちくま文庫)」のレビュー


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