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翻訳家の蔵書 (キイ・ライブラリー)

3.0 3.0 (レビュー1件)
著者: 大瀧 啓裕
定価: 3,300 円
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    「翻訳家の蔵書 (キイ・ライブラリー)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      【必ずしも蔵書に関する話題だけではないのだけれど】
       タイトルに惹かれて読んでみました。
       著者は、SF作品や、ラヴクラフト、幻想文学といったジャンルの翻訳を多く手がけてきたベテラン翻訳家ですが、その蔵書とは一体どういうものなのだろうかという興味を持ったのです。

       初めは子供の頃の読書体験、どのような本をどう読んできたかから始まり、学生時代に古書を漁ったこと、就職してからさらに古書収集に拍車がかかったことなどが語られていきます。
       大学卒業後、翻訳者になりたいという希望を持ってはいたものの、いきなりプロの翻訳者になることもできず、一般企業に勤めながら少しずつ翻訳の仕事もしていったことなどが語られます。

       就職して以後は、本を買う資金も潤沢になってきたことから、海外の古書店からカタログを取り寄せて洋書を買っていくことになります。
       この辺りはさすがに翻訳者でしょう。
       また、ペーパーバックにも興味を持ち、ウィアードテールズなどをコンプリートしたことなども書かれています。

       翻訳者にとっては、辞書や、作中で引用されている文学作品の原典を探すための資料は必須のようで、どのようなものを揃えていったか、特にデジタル化された辞書や参考文献の使い勝手などについても語られており、翻訳にはどういう資料を使うのかということが分かります。

       読んでいて意外だったのは、契約にもよるのかもしれませんが、翻訳すべき原書を翻訳者自身が揃えなければならない場合があるということでした。
       これは、著者がラヴクラフトの全集を翻訳する際の話として書かれているのですが、正確を期すために初出本を揃える必要に迫られ、大枚はたいて買い揃えたと書かれており、これは大変なことだと思いました。
       翻訳を依頼した出版者の方で訳すべき底本は提供してくれるものとばかり思っていたのですがそうではない場合もあるのですね。
       これに加えて様々な資料も揃えなければならないのですから、翻訳者というのも大変だと思いました。

       本書は、蔵書の話に留まらず、著者が興味を持っているものについても熱く語られています。
       それは翻訳作業にも使うPCのことや、テレビ・ゲーム、プラモデル、海外ドラマのDVDなどについてであり、これが結構な分量書かれていますので、必ずしもタイトル通りの内容でもないのですね。
       この辺りの話題については、私も少なからず興味がありましたので楽しんで読みましたが、この辺りについてあまり関心がない方にとっては「タイトルに偽り有り!」と感じるかも知れません。

       また、著者は翻訳者という仕事柄、英語の原音にかなりのこだわりをもっており、日本で慣用的に使われている英語のカタカナ表記が全く間違っていると熱く語ります。
       本文中でも、外来語のカタカナ表記が出てくる度に括弧書きで、「正しくは○○○」と原音表記を書き添えています。
       これがややうっとおしいのですが、この辺りは翻訳者として譲れないところなんでしょうね。

       また、校正者の実力の低下を嘆いており、昔はそれこそ職人のような校正者がいて随分鍛えられたものだが、最近の校正者は……と訴えています。
       ちょっと意地が悪いのですが、敢えて校正しなければならない文章を紛れ込ませておき、校正者の実力を測り、信頼できないと思った校正者の校正には注意するというようなことも書かれています。
       中には訳者校正でしっかり直していたのに、直した部分を大量に無視されて不完全な本を出版されたこともあるということで、これはさすがにひどいと思いました。

      翻訳作業がどのようにして行われ、どういう点に注意を払い、どういった文献が必要で、翻訳者の一日の生活がどういうものかについてはよく語られており、その辺りに関心がある方には興味深い内容になっていると思います。
       翻訳の骨法や、誤訳の具体例なども書かれており、いかにひどい翻訳がまかり通っているか、新聞などの翻訳本の書評なのに内容ばかりについて書かれていて翻訳の善し悪しには全く触れていないというのは怠慢ではないのかと(誤った翻訳でよく内容の良否が分かるものだと)、著者が日頃考えるところについても述べられています。
       また、著者が所有している稀覯書の写真も添えられており、なかなかのラインナップで、その辺りを楽しむこともできるのではないでしょうか。


      読了時間メーター
      □□□     普通(1~2日あれば読める)
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      2020/05/23 by

      翻訳家の蔵書 (キイ・ライブラリー)」のレビュー


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