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ヨーゼフ・メンゲレの逃亡 (海外文学セレクション)

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: オリヴィエ・ゲーズ
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    「ヨーゼフ・メンゲレの逃亡 (海外文学セレクション)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      【まるで小説のような事実】
       本書は、ナチス親衛隊大尉であり、アウシュヴィッツ強制収容所の医師であったヨーゼフ・メンゲレの、第二次世界大戦後の逃亡を描いたノン・フィクションです。
       メンゲレは、アウシュヴィッツで残酷な非人道的行為を繰り返した戦犯であり、ナチス・ドイツ敗戦後、その行方を追われていたのですが、アルゼンチンに逃れ、その後、アルゼンチンにまで追っ手がかかると、パラグアイ、ブラジルへと逃亡していきます。

       著者は、本作を、カポーティ作の『冷血』のようなノンフィクション小説という形式で書き表したわけですが、事実自体が大変ドラマティックというか、小説的であるので、この手法にも馴染み、ノン・フィクションであるけれども小説的な読み応え十分の作品に仕上がっていると感じました。

       メンゲレに同情する点は皆無なのですが、逃亡生活も決して楽なものではなかったことが分かります。
       アルゼンチンに逃れ、自身の立ち位置を確立したしばらくの間はかなり裕福な生活を送ることができたようですが、アルゼンチンの政権が変わり、従来の親ナチから反ナチになるとさすがにそうそうのうのうと生活してくことはできなくなります。

       特に、同じくアルゼンチンに逃れていたアイヒマンが、その傲慢さ故に尻尾を出し、イスラエルのモサドにより非合法に拉致され、処刑された後は、人目に付く生活ができなくなり、アルゼンチンから逃げ出していくわけです。
       その後も、ドイツの実家(実業家として資産を形成していました)からの金銭的援助や、なおナチスを支持する者たちの支援もあり、それなりに生活はしていけているのですが、神経をすり減らす生活になるのは当然でしょう。
       最後にはスラム街の雨漏りする小屋のような住居で、メイドに身の回りの世話をしてもらいながら細々と生き延びるしかなくなっていきます。

       そうなってしまった原因の一つは、メンゲレが最後まで自分を正当化し続けた点にもあると思われます。
       アウシュヴィッツでの虐殺行為について、最後まで真摯な反省や後悔の念を抱くことはなかったようです。
       また、独善的な性格であり、他人に対して自己の思う通りの行為を要求し続け、謙虚さとは程遠い振舞を続けたため、支援者も離れていってしまいます。

       もう、こうなってくると何らの同情も抱きようがありません。
       作中には、メンゲレの行為は決して許容できないものの、その時代のムーヴメントで、執拗にメンゲレが取り上げられ、批難が繰り返されたことも書かれており、それは不運と言えば不運と言えるかもしれませんが、所詮自業自得との感想しか持ち得ませんでした。

       末期、病も得て、かなりボロボロの状態になっていくわけですが、それでも自ら出頭するなどのことは一切拒否し、隠れに隠れて生き延びようとします。
       その執念たるや……。
       私なんかは、もう、どうにもならないし、先も短いのだから出頭してすべてを話せばいいだろうにと思うのですが、決してそうしようとはしないのですね。

       そして、遂に検挙されることなく、海水浴中に心臓発作を起こして死んでしまったのです。
       逃げ切ったと言えば逃げ切ったわけで、この点は残念としか言いようがありません。
       やはり、逃げ切らせてはいけないのであり、裁きを受けるべきだったと思います。

       このようなメンゲレの逃げに逃げまくる一生を丹念に追いかけた労作が本作です。
       ノン・フィクションにたまに見られる、事実の羅列ばかりで味もそっけもないような読み口にはなっておらず、まさに小説を読むようにページをめくっていける作品になっています。
       

      読了時間メーター
      □□□     普通(1~2日あれば読める)
      >> 続きを読む

      2021/03/15 by

      ヨーゼフ・メンゲレの逃亡 (海外文学セレクション)」のレビュー


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